ちょっと思う事があって、M氏も同行して下さり、再び柴又へ…。
休日の、お盆休みも加わって、今日は人々で賑わう帝釈天。
参道のお店を覗き、帝釈天さんを逸れた静かな通りに抜け、路地に入ると…
スペインの住宅をイメージして作られたという、
さっと、地中海の景色が頭に浮かぶ、塗り漆喰の壁が目に優しい。
この風情は、やっぱりいいな~
柴又 「そば切り 日曜庵」
はらりと下ろされた暖簾を潜り入ると、流石にお店も満席。
しばし心地のいいウェイティングで待っていると、
トントントン…と、追い打ちをしている軽やかな包丁の音。
…と、ふいにご主人が顔を出され、
「よかったら、見てもいいよ」
と、おっしゃって下さり、うれしく拝見する事が
リズミカルに切り落とされる、一糸乱れない端正な蕎麦。
緊張しつつ、集中して拝見させて頂き、ふるいや、石臼、
さらに、丸抜きの蕎麦の色別機械など説明して頂いて…
すっかり、ご主人の話にのめり込んでしまってる。
と、そんな間にようやく席も空き出し、奥のテーブルに腰を下ろすと…
鋭角に切りぬかれた、高い天井から差し込む柔らかい陽光。
壁に作られた、幻想的なステンドグラスが印象的な柔らかい空間。
すべてに拘り作られたこの空間へのご主人の思い入れが、
隅々まで行き渡った店内は、本当に座っているだけで心地いいなぁ…
お茶に品書きを持ってきて下さったご主人に、まずは蕎麦前。
今日、お勧めして下さったのは、滋賀の「松司」。
信楽のどっしりとした片口に、織部焼の味わい深いお猪口が出され、
この空間で頂くお酒が、又格別…。
充てには、粗塩と、前回もうれしかった、陶器の小箱に入った「じゃこ山椒」。
落ち着いた所でまずお願いしたのは、M氏が夢にまで見た…という、
私はまだ頂いていない、「そばがき」を注文
程なく出された「そばがき」は、お湯に張られ、丸く形つくられほっかほか。
これに、独特の「えごまオイル」と特製「醤油」が添えられて。
ほわ~り湯気の立つ、その蕎麦の香りにうっとりとしている私に、
「まずは、オイルと醤油を小鉢に入れて…」
とご主人自ら、垂らして下さり、竹のスプーンで掬い取り分け頂くと…
こ、これっ、これは美味しっ~い
とろ~りと柔らかく、口に含み溶けながら、蕎麦の粒々が心地よく掠めてく。
ふわっとして何とも言えない、この羽毛のような快感。
それが、染みわたる間に、香ばしさに濃厚な甘みを残していく。
そして、えごまオイルと醤油の浸ったところを頂くと、
これが、又、なんとも濃厚っ
蕎麦の香ばしさに甘みが、エゴマオイルと醤油によって、
別世界の甘み風味に変化するよう。
こ、これは…、毎日でも食べていたい、と咄嗟に思う絶品蕎麦がき。
うっとりしている私達の前で、にこにこと優しいご主人の笑顔が又うれしい。
味わい堪能しながら、お酒を楽しみ…、再び改めて見るお品書き。
前回も惚れ込んだ、限定約10食の「粗挽き蕎麦」。
「一食分なら残っているよ(^^)」
と、おっしゃる言葉に歓喜しつつ、蕎麦についてのお話しまでも。
お蕎麦は、農家から買い付けた後すぐ使わず、自宅の貯蔵室に寝かせ、
刈り取ったばかりの蕎麦を、5℃を保って貯蔵しているそう。
「新蕎麦とか、刈り取ったばかりよりもね…」
こうして貯蔵する事で、蕎麦の実をゆっくりと熟成させる。
その醍醐味を味わってもらいたい、そしてそれを丁寧に色分けし、
14メッシュで篩っても、落ちないまるで砂利のような蕎麦まで、
混ぜ打たれている、「粗挽き蕎麦」。
さらに、ものすごく気になった「涼みそば」。
これは…?と、お聞きする私に、ちょっと楽しそうに笑いながら、
「夏だけ作ってるんだけど…、これは、人によって好き好きがあってねぇ」
との蕎麦は、更科に挽いた粉に青柚子を混ぜた「青柚子切り」。
それに、煎茶で入れたお茶に、昆布と鰹出汁を混ぜただけ、
醤油もかえしも一切使わない、「冷かけ」にしているそう。
煎茶の風味を生かしながら、昆布の旨みを出す、その割合が難しいんだ、
とおっしゃるご主人の目はキラキラ輝き、
今月いっぱいくらいかな、とおっしゃりながらも、これも一食だけあるそうで、
これは是非とも食べてみたい、と二人で、分けて頂こうとお願いする事に 。
そして、程なく、まず出されたのが「涼みそば」。
薬味には、千切りの茗荷に白髪ねぎ、それにつぶし南高梅。
涼しげなガラスの器に盛られ、優しい薄緑色の冷かけ汁に、
これもうれしい、じゅん菜がトッピング。
中に透け見える、繊細な蕎麦が何とも爽やか。
取り分けて、まずは汁を口に含むと、
んんん~っ、これは美味しい~
ふわ~っと広がる、煎茶独特の渋みある高貴な味わいに、
その後ですぐ追いかけてくる、昆布に鰹の上品な風味。
どこか懐かしいような、それでいて気品のある味わいにうっとり。
そして、中の蕎麦を手繰り上げると、なんて美しい「青柚子切り」。
はかないまでの繊細な蕎麦に、ぽつぽつと混ざった、青柚子。
手繰ると、心地のいい腰にふわりと広がる爽快な青柚子。
そして、茗荷に葱、南高梅を加え頂くと、
こ、これは素晴らしい!、この上ない絶妙な組み合わせ。
これは、たまらな~いっ
お茶に出汁、それに梅の柔らかい酸味に塩見。
そう、これは、至極上品で崇高なお茶漬け…、蕎麦
二人、言葉もなく夢中で食べてしまい…
続いて出される、これは私も夢に見た「粗挽き蕎麦」。
初めてだというM氏に、今回は水そばはお譲りし…
その間にそっと木箱の蓋を開けると、見目麗しい粗挽きの蕎麦 。
手繰り上げると、途端に広がる、トウモロコシのような小豆のような…
柔らかい甘み感じる、香ばしい穀物の香り。
香りだけで、うっとりしつつ口に含むと、もちもちとした腰に、
ぷつぷつと掠める蕎麦粒の感触が、心地いい。
その後で、瞬時に広がる香ばしさ、後には濃厚な甘みが残り、
飲み込んだ後に、再びふっと鼻孔に昇る香ばしさ。
ん~っ、やっぱりこれは美味しい~
そのままでしばし堪能し、濃厚かつまろやかな汁をちょっと浸し…
うっとり夢見心地で、魅了されつつ手繰ってしまう。
そして、これも楽しみな最後の濃厚蕎麦湯。
かき交ぜ棒でゆっくりかき混ぜ、ほお~っと甘美な思いに浸ってしまう…。
美味しかった…、と心から。
ご主人、西村さんのお話しをお聞きし、お人柄に触れてさらに、
蕎麦の味わいを心から楽しめたひと時に。
飄々として、愛らしく、おおらかな素敵なご主人。
ひと時のこの時間を貴重に思いながら、又是非訪れたいとしかと思う。
ご馳走様でした~
蕎麦は広く深く、複雑で、そして繊細。
そして、人との繋がりをも紡いでくれる…、素敵な一日だったなぁ
そば切り 日曜庵
東京都葛飾区柴又7-13-2
03-5668-0084
11:30~18:00(売り切れ仕舞い)
金・土・日営業
禁煙
2010年 7月30日 「なごり雪」に、限定「粗挽き蕎麦」
2005年 9月 2日 「田舎そば」
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営業日にちが少ないので、なかなか訪れられないのですが、ここはいいですよね(u_u*)~。
でも、と言う事は、今日、頂くんですね♪
羨ましいです。
あの、「涼みそば」、いいですよー。
私も、又食べたい・・・
と、今月中に行けるかどうか、悩んでいるところです。
ぴさんのその駆り立てられる気持ち、
(「どうしても、どうしても、食べたいの…」という)
ものすごく分かります(^^)。
でも挫けず明日の予約をとって来ました♪
この駆り立てられる想い私はどうなったのでしょう?
後は、別所にて~。
>是非訪れたいとしかと思う。
これは、食べて頂きたいです。
でも、10食くらいしか作らないそうなので、お早めに…(^^)。
ちょっと怖い印象があったのですが、
おもしろい方なんですね♪
とても楽しいひと時でした。
夏限定のお蕎麦があるのですね!
今週末はこちらに決まりです
先日の西村さんって・・
私の名前出した?
強面のおかしな人ですよ(本人には内緒・・)
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