まだ、食べたことのない「田舎」を是非とも食べてみたい、そう思いながら炎天下の中お店を目指す。
マンションのそそり立つ広い通り沿い。そこに、静かにほのぼのと佇むお店。入り口の扉には、「石臼手挽き」の紙がしっかりと貼られている。
西国分寺 十割手打ちそば 「山 さんせん 泉」
扉を開けて入ったお店は、かれこれ立ってしまった2年前と、ほぼ変わらず。取り立てた飾り気もない、さっぱりとした店内には、テーブル席がふたつに、小上がりの席が、ふたつに分けて作られている。
平日の昼ちょっと過ぎ。一人と告げると、やはりテーブル席に通され腰を下ろす。
ん~… 女将さんの固い表情もそのままだなぁ…。
笑顔が欲しいところだが、出された冷たい蕎麦茶が、歩いてきた喉すこぶる美味しい。品書きを広げ、すぐに「田舎…、ありますか?」と尋ねると、
「今日はもう終わってしまいました」とのこと。
ああああ… 又しても・・。お聞きすると、私の一人前が最後だったそうで、一歩、一歩遅かったっっ~、とちょっとうなだれてしまう。
さて、では何にしようか、と再び品書きに目を落としていると、「揚げなすそば」や、「きのこそば」がちょっと気になる。お聞きするとぶっかけのスタイルとのこと。久しぶりのここの蕎麦、ぶっかけでなくて食べたいし、どうしよう…と、悩んでいると、目の前のホワイトボードに「とりわさ」の文字。
ここ最近は、六本木本むら庵でも、鳥わさが品書きから消えていて、寂しかったところ。これはちょっと食べておきたい…。
本当だったら、お酒を頂き、としたいところだけれど、これから人に会わなくてはならないので、ぐっとがまんし、「とりわさ」と「せいろ」をお願いすることに。
お茶のお変わりを頂きながらお願いすると、まずは「とりわさ」が目の前に出される。
摩り下ろしたばかりの山葵が添えられ、天飾りに三つ葉と海苔がかけられたとりわさは、色艶のいいもの。さっと表面を湯がいたささみ肉は、ふわりと柔らかく、山葵の質の良さも手伝ってとても満足な一品。
ん~、次回はこれでゆっくりやりたいなぁ
一呼吸置いたところで、水を切る機微とした音が奥から聞こえ、せいろが出される。
使い込まれたような四角の蒸篭に盛られた蕎麦の美しさ。顔を寄せると、ふわりと立つ爽やかな蕎麦の香り。薬味の葱も丁寧に切られ、山葵がたっぷりと出されるのもうれしい。
このびっしりと蕎麦の粒が覆う、エッジの鋭く切られた蕎麦にうっとりしながら手繰り口に含む。しっとりとした穀物感の凝縮したような腰加減。舌の上をかすかに掠めていくざらつき感がたまらなく、ゆっくりとかみ締める。
さすがにこの時期、以前頂いた新そばの深い風味まではいかないが、とは言え、しっかりと懐かしいような蕎麦の風味が広がってくる。何よりも、この粗挽きの感覚が楽しく、やはりこの蕎麦は旨い。
ああ…、こうなると是が非でも田舎も食べてみたいと、改めて思ってしまう。
汁は、ちょっと濃い目でやや角が立った感じもしないでもないが、蕎麦の美味しさに、すっかり夢中で食べてしまってる。
やや白濁した蕎麦湯を注ぎいれ、ほっとしながら前を見やると、ガラス張りの打ち場では、ご主人が丁寧に、丁寧に石臼を回してる…。
ああ、この蕎麦のもつ、暖かみ、奥の深さ、そして美しく散りばめられた蕎麦の粒ひとつひとつは、こうして出来ているんだなぁ~、となんだかじわっと心が熱くなる思い。
素敵でシックな空間というのでもなく、それでもやっぱりこの店は好きだと実感しながら、席を立つ。一生懸命笑顔を作ろうとしているような、ぎこちない表情の奥様にお勘定をすると、手を休めてご主人までが出てきて下さり、「ありがとうございました」と、にこやかにおっしゃって下さったのが、とてもうれしい。
ほおっとするような暖かさを感じられるご主人に見送られ、「是非、田舎をも食べに来ます 」と告げ、お店を後に…。
ごちそう様でした~
久しぶりの「山泉」の蕎麦に、満足し、炎天下なんて何のその。
又、また来よう…。
(で、でも暑~いっっ )
*お品書き
せいろ 700円、田舎そば 800円、揚げなすそば 1,050円、きのこそば 950円
辛味おろしそば 950円、鴨せいろ 1,250円、天せいろ 1,350円、
エビス小瓶 350円、中瓶 500円、酒450円~(今月の酒あり)
ゴーやのおひたし 300円、鴨やき 750円、とりわさ 550円、焼なす 500円~
「山泉(さんせん)」
東京都国分寺市西元町2-17-16
042-327-7400
11:30~15:00くらい(そば仕舞)
木・第2水休
禁煙 P2台
過去の訪問
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でも、嫌いじゃないですよ、意図的なものではないので、仕方無いと思います(^^;
ふつうの「せいろ」もいいんですよ!
ぜひぜひっ、頂いてみてください。
私はこちらのご主人に出会うと、なんだかとっても暖かな気持ちになってしまいます。
でしたね。明らかにキャラですが、接客と
しては好ましくありません。しかーし!それ
は日本の常識に過ぎません。海外では
ああいう接客は普通です。(たった4回の
海外旅行経験ですが^^;)
肝心の田舎そば。美味しかったです。
ここの蕎麦つゆは、「たまり醤油」かと
思ってしまうような濃くて、少ないタイプ
ですね。薬味の大根おろしは鬼おろし
でおろしたような洗い感じ。ネギは気の
せいかとても甘く感じました。蕎麦湯は
沈殿してしまっていて必死にゆすったの
ですが透明の上澄みしか出てこなくて
残念。
やはりガラスの向こうでは、仕事じゃな
く趣味なんじゃないかと思うくらい、ゆっく
りと、やさしくやさしく石臼をまわしている
ご主人の姿を拝見できました。
次回は、ふつうの蕎麦も食べたい。
リンク、とてもうれしいです(^^)。
Mさんのブログもとても美しいですね♪
蕎麦以外の情報も豊富で、私も参考にさせていただこうと思います。
山泉さんは、私も大好きなお店です。
どのお蕎麦も、ご主人が丁寧に石臼で手挽きして出して下さっているお蕎麦。
心がこもった、本当にいい蕎麦だと私も思います。
又伺いたくなってしまいました(^^)。
潮さんは、ぜひ、お料理を一緒に楽しんでほしいです。近くにありながら、対極的なお店で、おもしろいですよね。
石心さん、羨ましいです…。前回那須行った時、定休日で行けなかったんです・・(涙)
過去記事へのコメントで失礼します。
西国分寺の山泉さん、行ってきました。
yukaさんの情報をたよりにおじゃましたのですが、とてもいいお蕎麦をいただけました。
潮さんもいきたかったのですが、すでにタイムオーバーで。。。
yukaさんのそば情報、かなり活用させていただいています。
ありがとうございます。
#私の訪問記事中に、こちらの記事へのリンクをはらせていただきました。何か差し支えありましたらすぐに修正しますので、おっしゃってください。
yukaさんのそば情報、楽しみにしております。
そうそう、立派な額に入って、山口瞳の書が小上がり席の上に掛けられています。
その後ろの打ち場で、ご主人が、ご~りご~り、石臼をまわしているんです。
いい眺めでした・・。
こちらの蕎麦、私は大好きです。
ソバツユさんも、もう一度ぜひ。。
(接客に負けずに・・・笑)
確か山口瞳の書が、大きな横額入り掛かっていた様に覚えています。
お蕎麦も水準以上だったように記憶しています。
接客はイマイチ、そっけなさを感じました、でも今回は良かったですね、難しいご主人かも・・・・と思っていましたが。
yukaさんのお人柄が伝わったのでしょうね♪
そうなんですよね~、テキパキっと、すっとお品書き下げられちゃうから、結構勇気入るかも・・。
ご主人は、ほんっとに優しい笑顔がうれしくて。。
しっかし、あの広い道路は暑さを倍増させます~・・・(汗汗)
山泉さんといえば、当方にとってはやはり
アノ蕎麦掻・・・
オバサンの(そうなんです、ジなんです)
妙にテキパキに負けずに?蕎麦掻!!
って注文したいなあ・・・(そ、そのうち)
おじさんの方が愛想イインデスヨ、ほんと。
こればっかりは、年月をかけて初めて作られるもの。
味わい深いものです。。
はい!
私もさすらいます・・・・・・
それも、よかです。
使い込まれた道具が雰囲気出すんですよね~
田舎って何処も打つ量が少なくて
拙者もなかなかありつけません
田舎を求めてさすらうのもいいか
→ yuka (04/08)
→ yuka (04/08)
→ sherbetsST (04/02)
→ gun (03/27)
→ yuka (03/19)