私にとって、とてもびっくりした事実だったけど、知り合いの方から、今ならまだ頼めば食べさせてもらえるかも、とのこと。
咄嗟に、昨日、「明日しかない!」とばかりに電話する。
電話に出てくださったご主人は、私のことは覚えていなかった様子だけど、快く快諾してくださり・・
そして、今日。
定期検診で「骨つなっがてるよ」との診断を受け、その足で、小雨降る恋ヶ窪へ向かう。

恋ヶ窪の名店 「きぬたや」。
ここがなくなってしまうなんて・・と、しみじみと眺めつつ、戸を引く。
戸を開けると、丁度食べ終えた一人のお客さんが、帰ろうとするところ。
よかった、わたしの他にもいたんだ。
それでもちゃんと用意されていた席に座り、ふと戸を見る。
そう・・
この、内側に面して翔られた暖簾。
これが、とても印象に残っていて、
なんだか感慨深い思い出店内を見渡してしまう。
年季の入った、酒ケース。前回訪れた時同様に、いっぱいに詰まった魅力的なお酒が並んでいる。もっと訪れる時間があったら、この中のお酒のいくつかでも、頂いてみたかったな・・。
ちょんと置かれた石臼も、かわいらしいロゴの入った暖簾も、なんだか愛おしく思えてくる。
前回同様に、席に着くとすぐにお蕎麦を用意して下さるようだったので、咄嗟に暖簾の奥に入ったご主人に声をかけ、
「ちょっとだけ、お酒を頂いてもいいですか?」
とお願いする。
微笑んで出してくださったのが、
「東一 大吟醸」。
華やかで軽やかな香りでうっとりしながらも、米の旨さを味わえる美味しいお酒・・。
そして、菜の花を巻き込んだ鉄砲漬けをアテに。
頂きながら、「どうして・・」と尋ねると、
「この建物をはじめ、石臼も何もかもボロボロになってきちゃったんで、新しくしようと思ってねぇ」
と、話してくださる。来週早々には取り壊しになるそうで、おおっ、すれすれのセーフだったんだ、と改めてほっと。
新しく場所を探して見つかり次第、鈍らないうちにでも再開はしようと思ってるとの話を聴けてちょっとほっとする。
なにや、かにや、お蕎麦やそれにまつわるお話などをさせて頂いて、しばし話し込み・・、
じゃ、そろそろお蕎麦を、と、
目の前に改めて
そば猪口ととっくり、薬味が出される。
この器ひとつひとつをも、
なんだか感慨深くて、何度も握ってしまったり・・
まずは、北海道「牡丹」を40メッシュの手挽きで挽いた、二八のお蕎麦。
前に来ていたお客さん(ナント18年も通い続けてきていたそうな)のお好きなお蕎麦とのこと。
透き通るような、透明感の高い美しい蕎麦。
よく見るとその中に、蕎麦の欠片が所々練りこまれたそれは、ガラス細工のような繊細さ。
ぷりぷりとした腰のもので、かみ締めると上品な蕎麦の風味と優しい甘さが感じられる。
そして、二枚目は、やはり「牡丹」を50メッシュで、甘皮を引き込んで挽いた二八の蕎麦。
やや、黒味を帯びた蕎麦だが、やはり美しく透明感のあるもの。
ぷりぷり感は相変わらずだが、かみ締めた後に、やや香ばしさが加わる。
こののど越しと風味。
やはり、素晴らしい蕎麦。
そして、最後の一枚は私の為に打ってくださったという、「牡丹」の生粉打ち。
見るからに鮮やかなこの切り口。そして、微妙に散った蕎麦の星。
前に出された時から、ふわりと香る蕎麦の香りにうっとりしながら、口に含む。
しっとりとした、もちもち感のある腰。そして、かみ締めるとじわじわとゆっくりと、広がる滋味なる蕎麦の風味。
ただただ、うれしくなってしまい夢中で食べ進めてしまう。
まるで、芸術品のような蕎麦だ・・。
ほぉっと、満足の一連の蕎麦を頂き、
蕎麦湯が出される。
この器も、珍しくも手にすっぽりと馴染む湯桶。
器の言われなども、お聞きしつつ、お変わりも。
さらに、ご主人としばし話し込んでしまっての、おおよそ2時間もの滞在。
なんだか、すべてが心温かくなる話ばかりで、やっぱりこのお店はあってほしい、と心から思う。
今日は、よかった・・。
ぎりぎりの滑り込みで、しばしのお休みに入ってしまう前に、この建物がなくなってしまう前に伺うことができて・・。
たくさんのお話も、お蕎麦も、本当に、ご馳走さまでした。
そして、ご主人、長い間ご苦労さまでした。
新しく再開の日を、心から楽しみに思っています。
この蕎麦は、まだまだ、なくなって欲しくない・・。
ああ、今日は、本当によかった。。。
手打そば 石臼手挽き
「きぬたや」
国分寺市西恋ヶ窪4-30-24
042-326-3221
一時閉店
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そうなんです・・、今は。。
でも、ご主人、「あんまり時間を置かないようにしようと思ってる」とおっしゃっていたので、私も再開を楽しみにしています。
多分、場所は移動するのだろうと思われますが・・・。
新しいお店を楽しみにしているところです。
最後に間に合って本当にうらやましいです。また、Up有難うございました。
きぬたやさんの再開を切に祈ります。
私も予約しなくてはならない・・という、とっても簡単な事で、行くのがちょっと遅くなってしまってたの。
でも、再び伺っててみて、しみじみと・・。
ここは、やっぱり無くなっては惜しいお店だと痛感してます。
再開した折には、ぜひ♪
ご一緒しません??なーんて(^^)
珍しくも貴重なお店です。
新しくなったお店を、とても楽しみにしています。
実は・・、密かに私も松井君と、(勝手に)励ましあっていたんです。
彼が骨折したときは、わが身のように感じ入り、いやいや、私よりもずっとずっとつらいであろう彼の事を思うと、すごく励みになったものでした。
それはそうと・・。
私も再開の日を楽しみにしている次第です。
どうか、移動しても西側で・・と、何度もお願いしてしまいました(^^;
なんか予約制になったっていうことから、
自分のいい加減さがあって足遠に・・・
だから、ここ10何年か訪れておりません。
場所も少し分かりづらかったかも・・・
しかし、
蕎麦っ喰いは場所を選ばず通う者。
そして飽かずに探す者。
たとい閉店したとても、復の開店祈る者。
松井の復活とほぼ一緒になりましたね。
きぬたやさん、伺えて良かったですね。
私はどうしても時間が取れませんでした。
再開を楽しみに待つこととしましょう。
私も、突然でびっくりしちゃったのですが、ぎりぎりで、頂けたことを幸せに思っています。
再開を、とても楽しみに思っている次第です。。
再開まで何と待ちどうしいことでしょう、この店の思い出もっとたくさん積み込んでおきたかった・・・・此処の雰囲気が好きだったのに・・・・・
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