ずっと前から、行ってみたいと思いつつも、この電話一本がなぜか勇気がでなくて、今までいたというのに、勢いってやっぱり必要なんだなぁ、と予約をしてふと思う。

「恋ヶ窪」という駅を降りるのも初めて。
駅前の通りから横道に入り、
ちょっとごちゃっとした飲食店の中に、
埋もれるように、看板が見えてくる。

ずっと、来て見たかったお店・・・。
「そば処 きぬたや」
注意して見てなければ、通り過ぎてしまうだろう。
蕎麦屋とは思えない・・・というより、営業してるかどうかさえ定かではない感じの・・。
外には、「ご来店の際は、電話で必ず確認してください」 との札・・・。
ふぅっ。。

扉を開けると、中にいらっしゃったご主人が、すぐに出てきてくださり、どうぞ、こちらへ・・・と、やわらかい表情で迎えてくれて、やっとほっと・・・。
大きな8人がけのテーブルだけがあり、テーブルの上には、お箸のセットがふたつ用意してある。
今日の予約は、私ともう一人なのだろうか・・・。
そのうちのひとつを指差され、腰をおろすと、
「ちょっとお待ち下さい」と。
ん?山葵を摺る音が・・・。
なんだか、これまでのお蕎麦屋さんとは、勝手がちょっと違うような感じで、ちょっと戸惑いながらも、周りを見ると、ほんっとに何もないシンプルな店内に、なんとも味のある絵が飾られてる。
ほのぼのと、暖かい・・・、見てるとちょっとほっとするような絵が、両方の壁に適度な幅をもってさりげなく、いや存在感をもって、在る。
と、思っていると、ご主人が出ていらして、お水と、蕎麦猪口、薬味を出してくださりながら、口一番に、「どちらかでお聞きになっていらしたんですか?」と。
それから、「どこのお蕎麦が好きですか?」(噂通りだ・・・ )と聞かれ、いくつかのお店を出しながら、話が膨らんでいく。
が、「まあ、とりあえず食べてみてください。」と、今日打ったそばを1枚ずつ出して頂く。
まずは、これからくるお客さん(なんと、18年も通い続けているという!)の好みであるという、
「福井在来種」の外一で打たれた蕎麦。
目の前に出された瞬間、「なんて美しいっっ 」と思ってしまったほどきれいな蕎麦。透明感が強く、透き通るかのような蕎麦には、星よりも細かい粒をきれいにまとっている。見るからになめらかで、ガラス細工のように上品な蕎麦。。
しずしずと、まずは一口・・・。
ん~・・、しっかりとした腰。ここも又、凝縮したような弾力のあるしっくりとしたもの。
それでいて、喉越しがとても滑らかで、蕎麦の風味がふんわりと広がっていく。
さすがに美味しい・・
そして、食べ終わるのを見計らって、出された二枚目。
やはり、福井の在来種でこちらは生粉打ちの蕎麦。 ややっ・・・、これはっ。。
もう、食べずとも分かってしまいそう。先に出されたものよりも、蕎麦の粒子が大きめに、きれいに粒として蕎麦に散りばめられ、その切り口の鮮やかな鋭さ・・・。緑がかった細切りのそれは、なんというか、芸術のような佇まい。。
笑みが出そうになりながら、口に含む。
んんー、これこれっ。舌の上で軽やかに転げていく蕎麦のざらつき。
たおやかさもありながら、しっかりとした腰の中に、もちもちとした穀物の凝縮感。
楽しみながら、大事にかみ締めるとじわ~っと蕎麦の旨味が広がっていく。
そう♪、これこれ、こういう蕎麦、大好きだ・・と素直に思い、ご主人に告げてしまう。
「本当に、お蕎麦が好きなんですね・・・」と言われ、蕎麦についてしばしお話を。
こちらの方が、粗挽きで挽いたそうで(まさしくっ!)、でも、すべてのお客さんがそれを好きというわけでもない・・、それが難しい、などとおっしゃっる。
蕎麦の声を聴き、こう挽いてもらいたい・・というように挽くことや、
できるだけお客さんの好みの蕎麦を作りたい・・と、淡々と語るご主人は、とてもピュアで真面目な方。一つ一つの語り口がとても優しくて・・、話を聴いているとだんだん、わたしも澄んだ心になっていくような気持ちさえも。まるで、少年の純粋な心のままいるような、そんなご主人。
お酒も飲まれるようでしたら・・・、
と、サービスで出してくださったお酒。
銘柄を聞くと「まずは飲んでみて下さい」と。
好みを言ってから、選んでくれた
松司(純米吟醸あらばしり)
九郎治(純米吟醸)
どちらも美味しく、話はお酒へ・・・。
・・・と、もう一人のお客さんが、いきなり入ってきて、話は中断したが、ご主人は、結構お話好きのよう。。 なんだか・・、すっかり緊張も溶けていて、楽しい気分になってるのに気づく。
お勘定をし、席を立つと、丁寧に「ありがとうございました」との声。
不思議なお店・・・、
でも又来て見たい。「毎回同じ蕎麦っていうのではないんです、明日は又違う蕎麦になっているかもしれない。そして、お客様が喜んでもらえるかも分からなくて・・・」と話していたご主人。んー、次はどんな蕎麦なんだろう。そんな興味と期待が、すでに沸いてきている・・。
店を出て、初めて、どうして暖簾が店の内側にかかっていたのか、分かったような気がした・・・。
こんな、お店もあるんだなぁ。。
*お品書き そば(二枚で一人前)1,000円
手打そば 石臼手挽き
きぬたや
国分寺市西恋ヶ窪4-30-24
042-326-3221(要予約)
11:30~15:30(売り切れじまい)
月・金曜休
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そ・そんな・・。
もっと、早く知っていれば・・・。
悔やまれてなりません。お知らせくださって、ありがとうございました。
まだ、片足の生活です・・・。
本格的なリハビリは、その後になるかと。
相変わらず、やり切れない思いのある日々で、辛抱してます。。
いいですよね・・、ここ。
すぐにでも訪れたいな、って思っていたのですが。1時間半・・、いろいろなお話、お聞きできたんだろうなあ、と思います。わたしも、よくなったら、又おじゃましたいです。
先日、久しぶりに行ってきました。
常陸秋そばと丸岡在来を細かめ、粗めに挽いたものーの3種でした。
一人だったので1時間半の滞在、いろいろ教えていただき勉強になりました。
わたしも、なるほど・・・、と思った次第。次行くときは、私も4種頂こうとおもってます。
>志村○んを思い浮かべるのは私だけでしょうか?
(^^;・・・・、実はわたしもすごーくそう思ったんです~・・。誰かに・・・と。やっぱり・・・(笑)
前回伺ったときは、同じ品種の蕎麦を4種類の粉に挽き分けていて、4枚全て頂いてきました。
ご主人の前職は幼稚園か保育園の先生と伺ったことがあります。人当たりの優しさはむべなるかな。
志村○んを思い浮かべるのは私だけでしょうか?
本当になんというか、澄んだ心の、優しい語り口のご主人と、あのきれいな蕎麦。
不思議な時間をすごすことができました。
もっと早く行けば・・、いや、今だからこそよかったのかもしらないな、と思っております!
山中さんは蕎麦の仙人です、それをすっかり丸ごと召し上がったようですね(笑)・・・・・ユカさんが見えたことが嬉しかったのでしょう、仙人の優しい顔が目に浮かびます
私にとっては何処のお店よりもここが一番です。
すごいっ、参考になるブログですね~・・・。
神楽坂の隠れ家・・・気になってしまいました。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
今回、TBさせていただきました。
いつもご参考にさせていただいております。
ほぼ毎日蕎麦、
ラーメンではそう言う人はいるようですが、
蕎麦では少ないですよね?
今後も記事を楽しみにしています!
そうなんですかっっ??知らなかった。。
あと一枚は食べられたから・・・、んー、次回は3枚頂いちゃおうっと。
ただ、予約の時に言ってなかったから、追加だめかな?っておもっちゃったんです。
でも、又、絶対行って見ます!
ガンチャンさん
お詳しいんですねえ。。
さすがっ。。
はい!こちらは、丸岡のものでした♪
美山、丸岡は確か小粒種で、香りがいいのが特徴です。また、蕎麦は播種後75日といいますが、ちょっと早めに刈って青味かかった蕎麦の実を出荷しています。
東京だと丸岡かな?
今まで行ってなかったんです。
(結構、その時ぷらり~・・・が多いので)
是非是非、行かれてみて下さい!
電話一本くらい、しちゃおうっ!って気になる・・、いえ、それ以上のものを頂いた、今日でした・・・
有名になったんですね!
さて、ゆかさんには、電話予約をされて伺われたことと思いますが、
昔はそうではなくて、極ふつうに行っていましたね。
でも、今はそうではなく、結構凄い蕎麦を出されているようで、
今度行ってみたいです。
電話予約というのがメンドウクサイだけなんですが。
本当にめんどうくさいのが嫌いなんです。
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