急の上野での仕事を終わらせたら、既に2時を過ぎている…。
こんな時には中休みのないお店。
一度行ってみたいなあ、と思っていたお店へ行ってみよう~
上野駅にまたがる大陸橋を目の前にした大通り。
がやがやとした中に、ここだけふっと時間が滞ったような、
間口小さくさりげなく佇む、懐かしい木造二階建て。
「神田まつや」や、思い出の中になった「並木藪」に通じる、
昭和の面影を残したこの風情、ああ、いいなぁ…。
上野 「生そば 翁庵」
がらがらがら…と、格子扉を開き入れば、その想いはさらに増す。
高い天井に、黒光りした柱、年月培った壁に囲まれ、
しとりと落ち着いた昔懐かしの風情たっぷり。
すぐに、気さくに迎えて下さる、白割烹の花番さんのあったかな応対もうれしく、
一人である私に、囲炉裏の席を薦めて下さる。
ほおっと寛ぐ、何とも言えない、この感覚。
どこか、故郷に帰って来たような不思議な寛ぎを感じながら、
そっと後ろを見れば、何枚もの色紙が飾られ…
置かれている品書きに目を落とし、
まずはこの空間で、しばしゆっくり寛ぎたい。
と、早速お願いしたのは、
枝豆のお通しの添えられた、熱燗(500円)に、お新香(200円)。
中国曲技団のような、思わず微笑んでしまう絵柄の、
白磁のすらりとした徳利で頂く熱燗が又たまらなく…
「漬け物」のどれもが、自家製だろうか、きちんと美味しい 。
沢庵に、ラッキョウ、極めて美味しい野沢菜に、糠漬けの大根、胡瓜。
ゆるゆるとこれで猪口を口に運びつつ、
ふと見れば、お隣に座っていたご夫婦は、品のある老紳士に、上品なご婦人。
すっと帰るお客さんに、タイミングよく、又入ってくるお客さん。
この、ゆるやかな流れが又、何とも言えず心地よく…
聞くともなく聞いていれば、ほぼ半分のお客さんが口にするのは、
私もお目当ての「葱せいろ」。
横に掲げられた、板版品書きの順序は、人気の順なのかしらん~
などと思いつつ、私もそろそろお蕎麦を頼もう。
と、お願いしたのは、ここに来たらこれ、と決めていた「ねぎせいろ」。
残りの熱燗を飲んでいると…、程なく熱々の汁を添えたせいろが置かれる。
使いこんだ長方形の蒸篭には、やや緑がかった繊細な細切り。
口に含めば、きりっと冷水に閉められ、しゃきっとした気持ちよい、
潔いまでのしっかりとした歯ごたえのある腰加減。
思わす背筋が伸びるような、江戸の粋を感じるこの蕎麦。
噛みしめれば、するるんっと落ちる、爽やかな喉越しに…
これぞ、江戸の粋な蕎麦だっ
と、思わずうれしくなってしまう程。
その横で、ほかほか湯気を立てた小丼にはたっぷり注がれた熱々の汁。
とろりとした葱に、薄くからりと揚げられた烏賊の掻き揚げ。
かりっとした衣が、次第にしっとり汁にふやけて行くのが又旨く、
この汁に浸し頂く蕎麦は、甘みがじわ~。
あー、これは確かに病みつきになっていまう、旨みたっぷり。
浸してはするるっ、
崩し一緒に手繰っては、ん~っ、旨いっ
と、後はあっという間に食べてしまう。
頃合い見てそっと置かれた湯桶も又、年月感じる趣たっぷり。
この時間になれば、ほんのりと白濁したナチュラルな蕎麦湯も美味しく…
葱汁に注ぎ入れ、たっぷりと頂き、
ほおっと、最後の余韻に浸るひと時 。
いい、ひと時だった、としみじみと。
上野に来たら、一度はなんてもってのほか、又、是非これを食べに来たい。
うれしいなぁ、ここにも、昔よき風情趣を残したお店がある。
と、番頭さんにお勘定をして…
心から…、ご馳走様でした~
「上野 翁庵」
台東区東上野3-39-8
03-3831-2660
11:00~20:00
日曜・祝日定休
- 関連記事
-
- 上野 「上野藪そば」 みぞれ酒に焼明太子 老舗の実力「なめこ蕎麦」 (2014/04/14)
- 浅草橋 「御清水庵 宮川」 利き蕎麦会 (2013/05/29)
- 浅草 「並木藪蕎麦」 改装しても常住不滅「並木藪」 (2013/05/13)
- 入谷 「談」 ほっこりとした時間… (2012/06/18)
- 浅草 「長浦」 妙興寺そば (2012/05/04)
- 浅草橋 「あさだ」 (2012/02/28)
- (閉店) 浅草橋 「茶の間美登里」 (2012/02/10)
- 上野 「翁庵」 ねぎせいろ (2011/10/31)
- 浅草橋 「御清水庵 宮川」 (2011/05/26)
- 浅草 「並木藪」 留めて置きたくて… (2011/02/22)
- 浅草 「丹想庵 健次郎」 (2010/05/31)
- 御徒町 「沙羅の花」 残念ながら閉店 (2009/10/22)
- 浅草橋 「更里」 送別会 (2009/09/29)
- 浅草橋 「あさだ」 (2009/08/17)
- 御徒町 「萬盛庵」 (2009/07/22)
ブログにあっぷされるの、楽しみにしています♪
上野で行ってきました、おきな庵さんへ。
店構えが良いですね。
近々ブログに書きたいです。
ほっとするというか、郷愁かきたてられるというか、あの風情。
残っていて欲しい、としみじみと思いました。
>いろいろ食べてみたいのですが、
うふふ、お隣の老紳士は、カレー丼に小ライスでした。それもとっても美味しそう。
ねぎせいろ小ライスという方も多かったです。
種物も食べてみたいですね。
いや、こういうお店、やっぱり、好き、です(u_u*)~
でも、そこが良い。(笑)
いろいろ食べてみたいのですが、大看板「ねぎせいろ」が美味すぎて、なかなか他まで行かれません。
お昼時のサラリーマンさんなんかは、丼を美味そうに食べていらっしゃいますよ。
やっぱり、残して欲しかったなぁの、本心しかり。
ここっ、いいでしょっ、いいでしょっ、この面持ち。
入りたくなっちゃいますよねーっ。
よしのさんの言う通り、このねぎ汁で一杯やれそうでした。
お新香も、ね、沢庵もきちんと美味しいの。さらにさらにっ、野沢菜がしゃきしゃきっとしてほんとにほんとうに美味しくて
ああ、いい店だなーって。
花番のおばさんも、気さくであったかく、
番頭さんっていうのも、いいですよね(^^)。
上野駅すぐ目の前です。
ゼシっっ
彼女は、引いちゃうかしら…。
でも、このねぎせいろは、一食の価値あり!です(^^)
ただ、前に人形町「翁」で食べて、なんとなくわかっていたのですが、又食べたくて頼みました~。
せいろ二枚!
しかも、はしごまでっっ。
さすがっ、出挙さんです♪。
今度は、八丁堀も行ってみます(^^)
当店、なかなか『いい味』を出してますね、面貌(つらがまえ)から。
思わず雰囲気で入りたくなる。
葱せいろの汁で熱燗1本行けそうだ。天ぬきではないんだと思うけど。
そうそう、小さん師匠の達筆を拝見するとは眼福でございました。
重ねてご馳走様!
なのでお蕎麦屋の探訪があまりできてない
特にこの大通り越えちゃうと
コリアンタウンのイメージで
お蕎麦屋さんって印象がなかったっす
いいですな~
ねぎせいろう
うまい暖かなつゆに浸けて
お蕎麦をするする~っとやりたい季節ですな
出てくるんだろうと思っちゃいますよね
大ぐらいの私はせいろ二枚で
二軒目行っちゃう(笑)
八丁堀の翁庵の方がお蕎麦の緑色が強いですね
→ yuka (04/08)
→ yuka (04/08)
→ sherbetsST (04/02)
→ gun (03/27)
→ yuka (03/19)