そろそろ3時になろうとする時間、ゆったり長閑な空気が体を包み、
ん？、今日は大奥様、いらっしゃらないみたいでちょっと残念。
でも、いつもの番台から、かわいい花番さんの笑顔がお出迎え 。

「お好きなところにどうぞ～」のお声に、奥のテーブルに腰を下ろし、
出されたお茶と一緒に、すぐにお願いした熱燗一合。



充てには、…と、品書きに手を伸ばし、見れば、
あっ、ここに春が訪れている「芹のお浸し」の文字を見つけ、
こちらのお浸しの美味しさはお墨付き、すかさずそれも併せて注文。



新潟「鶴の友」本醸造の熱燗は、口当たり柔らかく、とても美味しい。
口に運ぶと、ふっと体が温められ、
白木に囲まれた、ゆるりとした空気に身を委ねていると、
目の前が大通りである事を、ふと忘れてしまいそう 。



「芹のお浸し」は、ふわっと香る上質の削り節が天盛りされ、



口にすれば、途端に抜けるように広がる、芹独特の風味が実に新鮮。
しゃきしゃきの歯ごたえを残した、茹で加減も絶妙、
しめじに、油揚げが一緒に和えられ、散らされた胡麻が香ばしい。

些細なようで、出汁の割合といい、きちんとひと手間かけられたお浸し。
こういうきちんとしたお浸しが頂けるのは、本当にうれしいな 。

と、じっくりゆっくりと楽しんでいると、
続いて入ってきたお客さんは、座ると同時にビールを頼み、
やはり「芹のお浸し」に「炒り銀杏」。

知らぬ者同志だけれど、同じく昼下がりの一献を楽しむという、
何となく感じる、不思議な親近感を感じながら、
私もしばし、のんびりとさせて頂いて…。



今日のお蕎麦は何にしよう～、と改めて品書きを手にしながら、
ここで、まだ頼んだ事のない「種物」が食べたいな。
「かしわ南蛮」にちょっと心惹かれ、それにしようと思ったが…



横の壁に貼られていた「季節のおすすめ」メニューを目にしたら、
毎年眺めるだけだった「雑煮そば」が、妙に気になる。

そう言えば、今年は慌しくて、例年ほどお餅を食べていなかった。
…と言う事で、これは絶対今だけメニュー、今日はこれを食べてみよう 。



と、程なく出された丼には、焼き餅かとばかり思っていたら、
意表をついた「揚げ餅」が、ほこっと二つ盛られてる。



薄い衣の「揚げ餅」は、表面がからりっとして美味しそう。
そこに、蒲鉾に出汁巻き、どんこ煮、人参などが盛られた「おかめ風」。



まずは、蓮華を手にし、汁を一口。

ああ…、やっぱり、ここの甘汁は何て美味しい 。
上品で柔らかく、すっきりまろやかな極上の出汁が染みわたり、
その中に、揚げ餅の天コクが、ふうわりと混ざった、しみじみとした旨さ。

熱燗を飲んだ後の体にこの汁が、たまらなく…



具をよけ、まずはお蕎麦をば。
と手繰り上げれば、端正に切り揃った細切りの蕎麦。

熱々の汁に浸っても尚、しゃきっとした歯ごたえを残し、
プツンっと切れ滑らかに喉を落ちて行く。

久しぶりのここでの温蕎麦、これは又なんて美味しいんだろう 。
と、しばし蕎麦を何度か手繰り、



主役のように盛られたお餅に箸を入れれば、
とろ～んと伸び柔らかく、お米の美味しさ十分の美味しいお餅。
しかも、揚げられた事で香ばしさがさらに増して、これは旨いっ。

ほんのり甘めの出汁巻きと一緒に食べるお餅が又絶妙で、
どんこ椎茸は、含め煮された椎茸の旨みがじゅわっと広がる。
蒲鉾の質の良さは流石のもの…

と、一つひとつが美味しい上に、どれもが蕎麦にお餅に実によく合い、
これは正月ならではの贅沢な一杯だ 。

と、お餅二個も食べたので、すっかりお腹もいっぱい大満足。
大女将さんに会えなかったのは残念だけど…

ご馳走様でした～

老舗蕎麦屋の良さをしみじみと感じた今日のひと時。
ここでも、種物制覇、目指したいな…

関連記事

• 築地　「うち田」　へぎ蕎麦ランチ (2012/06/19)
• 月島　「玄粋庵」 (2012/06/14)
• 銀座　「矢部」　ちいずからめそば (2012/05/28)
• 人形町　「仁行」 (2012/05/23)
• 築地　「さらしなの里」　玉子とじそば (2012/05/22)
• 銀座　「東風庵」 (2012/05/07)
• 八丁堀　「如月」　海鮮丼セット (2012/03/27)
• 築地　「さらしなの里」　雑煮そば (2012/01/17)
• 日本橋　「やぶ久」　カレー南蛮そば (2011/10/11)
• 築地　「さらしなの里」　水茄子の冷やかけ (2011/07/12)
• 築地　「さらしなの里」　蛤そば (2011/03/18)
• 今できる事を… (2011/03/15)
• 人形町　「仁行」 (2010/12/03)
• 日本橋　「元禄」 (2010/11/05)
• 築地　「成富」 (2010/10/20)

スポンサーサイト