行きたいなあ、と思いつつも、日程が合わずにすっかりご無沙汰。
今日は、所用もそそと終わった月曜日。
久しぶりにご主人に会いたいなあ、と、早速乗りこんだ京王新線 。
幡ヶ谷駅前の甲州街道から、賑やかな6号商店街を潜り抜け、
さらに進んだ通りから路地をしばし歩いて行くと…
変わらず泰然として佇む、日本とは思えないこの風情。
お店を前にすると、いつも思い浮かぶユトリロの描いたパリの下町。
幡ヶ谷 「蕎麦處 ふじ多」
さりげなくかかった純白の暖簾を潜り引き戸を開けば、
すぐ目の前には、ふと胎内を思わせる柔らかい空気に満ちた小さな空間。
午後1時。
真ん中にどしりと鎮座する、りっぱな一枚板の大テーブルには、
初々しいカップルが一組、梅酒のグラスを前に楽しそう。
お邪魔にならないよう、向かい側の椅子をそっと引いて腰を下ろし…
久しぶりのふじ多さん、まずは、蕎麦前を頂かなくちゃ。
ホワイトボードに書かれたお酒の品書きに目を通し…
お願いしたのは、久しぶりに頂く「七田」純米。
添えられたお酒の充ては、さっと漬けられた、柚子片の散った千枚大根。
しゃきっとしてさっぱりの大根は、お酒の充てに程良く、
お料理も何か…、とゆっくりと再びホワイトボードに目を這わせる。
お向かいのカップルは、二人で分け合い「子持ち鮎の有馬煮」を食べている。
これが、とても美味しそ~う、…だけど、一人だとちょっと多いかな。
と、あれこれ悩んでいると、そっと顔を出されたご主人が、
「このししゃもは雄雌になる前の稚魚で、脂が乗ってなかなかいいよ(^^)」
とお勧めされ、早速それを頂く事に。
程なく、温もりある陶器の器に盛られたししゃもは、たっぷり七尾。
小さくでも、旨みが濃厚。
ぱりぱりふっくら、ハタハタに似た旨みがありとても美味しい 。
しかも、このししゃもに頼んでいた七田がよく合う事。
じっくり、いや、くいくいとお酒がすすんでしまい、
ついつい、七田、半合お代りお願いしまーす。
と、お願いしたら、「煮くずれたのだけど、食べてみる?」
と出して下さった、「鮎の有馬煮」(の切れはし)。
こ、これが…、又、たまらなく美味し~いっっ
箸を入れた途端、想像を超えた柔らかさで、ほろりと零れ、
中には、玉子がぎっしり、魚卵好きには猫にマタタビ。
しっかりと上品な味が染み、ほろほろこぼれる身がたまらない。
5日間、ことこと、ことこと炊かれたそうで、これまでに食べた中で最高峰~。
さらに、一緒に炊いた山椒の実も出して下さり、
しばし久しぶりにご主人と、猫談義(笑)
お酒も楽しみ、久しぶりのふじ多さんと話せた満喫したひと時に…、
そうは言ってもお腹がすいた、そろそろお蕎麦を食べたいな。
と、ここではお決まりになる、大好きな「おろしそば」だけど…
この寒さ、温かいつけ汁のお蕎麦が食べたい気分。
と言うことで…、ご主人にお願いし、「つけ鴨せいろ」の鴨ヌキ、
葱多めの、特注(?)「つけ鴨つくねせいろ」を頂く事に 。
(注:「つけ鴨せいろ」には、鴨肉と鴨つくねが入ってる)
じゅうじゅう焼く音が裏から聞こえ、程なく出された「つけ鴨つくね」。
「よかったら、今日の蕎麦と、昨日の蕎麦の両方食べてみてよ」
との事で、まずは今日打ちたてのお蕎麦から。
ざっくりと断たれた切り口、ほのかに見え隠れする丸抜きの蕎麦の粒。
ふじ多さんの蕎麦は、大らかなご主人のお人柄とは裏腹、
なんて繊細で、洗練されたはかなげな美しさ溢れた蕎麦なんだろう…。
手繰り口に含めば、ふっと広がる清々しい草原のような香りが通り抜け、
しなやかでさっくりと歯を返す、心地のいい口当たり。
噛みしめれば、ふわっと広がる、爽やかな干し草を思わせる穀物の味わい。
ああ、美味しい…
と、追って出された、一日置いた昨日の蕎麦。
並べてみると面白い。昨日の蕎麦はやや色見が濃く、
立つ香りに、深みが加わっているよう 。
食感はほぼ同じだが、広がる味わいに深みが増しているような…
と、ほかほか湯気を立てた知るに、まずは浸し頂く「今日のそば」。
続いて、昨日打たれた蕎麦を浸し頂くと…
鴨の旨みがじわりと染み、且つ上品な味わいの知るがたまらなく美味しい。
この汁に浸った蕎麦は、さらに香ばしさに甘みをぐわりと増す。
こ、これは美味しい~
…と、どちらも美味しいのだが、不思議に昨日の蕎麦がこの汁にぴたり。
うーん、蕎麦はやはり奥深い…。
と、とろりとした葱の下の、どっしり大きな鴨つくね。
これが、又、美味し~いっっ。
口にすれば、ふわっと柔らかく、瞬間にじゅわりと染み出る鴨の旨み。
鴨肉以上に旨さがある(と私は思える)このつくね、これは極上~。
そばと共に口に含めば、鴨の旨みが蕎麦にからんでがんじがらめ。
もう、後は夢中で二つの蕎麦を手繰りあっという間。
さらさら熱々の蕎麦湯で、ゆっくりと余韻に浸り…。
やっぱりふじ多さんの蕎麦は、いいなあ、としみじみと。
ご馳走様でした~
なかなか来れないけれど…、
次はまだ未食の、「とろろ」を食べてみたいな 。
「蕎麦家 ふじ多」
渋谷区本町6-28-9
03-3320-4863
12;00~14:30 / 17:30~20:30
金・土・日・月曜営業
禁煙
2011年 1月17日 「ミモレットとからすみ」「かけそば」
2010年 4月 5日 「焼き味噌」で蕎麦前 「おろしそば」
2009年 8月 3日 「鮎の塩焼き」を堪能、「おろしそば」
2009年 2月 2日 「にしん煮」に「おろし蕎麦」
2008年10月18日 夜の宴 鴨南蛮、鴨せいろ
2008年10月12日 おろしそば
2007年 8月14日 夜の宴(コース) おろしそば
2007年 5月10日 おろしそば
2007年 2月28日 初めての訪問 せいろそば
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このどこかくすんだ感じののっぺりとした塗り壁なんて…。
つくね、確かにお店によって様々。
鴨は苦手でも、鴨の出汁に、鴨つくねは大好き。
こちらのつくね、とても美味しいです。
ぜひ、行かれてみて下さい。
(私も北海道に行きたい…)
けど、それは、丸抜きを保管しての熟成と言う事で…
こちらのは、打った蕎麦を一日寝かした、という意味での「熟成」です(^^;;。
素敵なお店ですので、こちらもぜひ。
つくねも店の個性が出るので楽しいですよね。
ユトリロの描いた街並み。。そんな佇まいですね。
ユトリロといえば西山美術館に久しぶりに訪れてみたくなりました。
よくはわかりませんが、先般伺いましたお店で、7年経ってなお美味しい…♪という稀有なお蕎麦のお話を、耳にしました。
ご店主も、まだまだ実験中のようでしたが、一度頂いてみたいと思いました。
熟成蕎麦いついては、賛否両論かと思いますが、私は多いにあり得ると思っています。
いくつかのお店で頂いた熟成蕎麦の美味しさ。
ただ、なんでも熟成すればいいというのではない、というのも大事なところ。
(と、話だせばきりがないのですが…9
奥が深いです(u_u*)~。
大好きです。しかも、冬のけんちんはたまらないですよね。
けんちんもお店によって、味わいが異なるのが楽しいところ。
是非言ってみたいです。
私も訪れれば必ず蕎麦談議に花が咲いて長居をしてしまいますが、営業日が限られているので、なかなか都合があわなくて最近はちょっとご無沙汰です。
蕎麦は打ち立てに限ると思われがちですが、一日置いた蕎麦が熟成されて美味くなることがあることを、こちらのご主人から聞いたことを思い出しました。
この前ぼくは、埼玉県杉戸の手打ちそば
ふるさとに行き、けんちん蕎麦を食べに行ってきました!
寒い時は、すごくいいですよ!
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