地下鉄を乗り継いで向かった「綾瀬駅」。西口の改札を出て、商店街とは反対の小道を番地を頼りに向かうと、ささやかな商店街があり、その先には遊歩道のような、所々にベンチの置かれた和やかな小道が続く。この通りに目星をつけて歩いていくと、二人ずれのお客さんがひとつのお店と入っていくのが目に留まる。
あ、あそこでは・・・。
急る気持ちを抑えながら向かってみると、木の壁にさりげなく下ろされた緑の暖簾。小さな間取りのかわいらしいお店が目の前に。
綾瀬 「手打そば 重吉」
懲りすぎず、それでいて和の柔らかい雰囲気に、期待も高まるよう~。
入り口に置かれていた品書きに目を落とすと、「お昼のセット」などもあるようで、しかも2時までの営業のよう。
となると・・、
あまりゆっくりはできないかなぁ、とちょっと不安に思いながらも扉を開く。
・・・と、す、すごいっ。中は既に満席状態。
しばし入り口で待っていると、奥様が顔を出してくださり、一人だと告げると、
「あ、あらあらっ、お一人だったら大丈夫ですよ、どうぞどうぞ~」
と、おっしゃって下さり、中へ。
テーブル席が6つ程置かれた店内の奥には、打ち場に面して3つ程のカウンター席があり、その端に通されて腰を下ろす。
よ、よかった・・・・。
何よりも、この奥様の対応がにこやかで、とても暖かいことに、初めてのお店での不安もふっと和らぐ思い。
出された冷たい蕎麦茶を頂きながら、置かれていた品書きを広げ、咄嗟に「田舎、ありますか?」と尋ねると、「ありますよ」と答えて頂き、取りあえず安心したところで・・・、
お料理や、飲み物の品書きに目を移すと、これがとっても良心的なお値段。いいなぁ~、こんなお店、近くにあるといいかもなあ、(と、これは食べる前に思ったこと)と、思ってしまう。
この和やかな雰囲気が居心地もよく、じゃあ蕎麦前も頂いちゃおう、と、一ノ蔵と、お新香をお願いすると、これも優しい笑顔で受けて下さる。
程なくして出されたお酒は、織部焼き(かな?)のような素敵な徳利。お通しに、これも素敵な器に盛られた蕎麦味噌が添えられる。
ちびちびと、蕎麦味噌で頂いていると、しばししてお新香も目の前に。
これも美しく盛られたお新香に、見目にもうれしい。しかも、好物の瓜の浅漬けが添えられているのがうれしく、それぞれ頂くお新香はどれもがとても旨い。これはいいな~
せかされることもなく、お新香にお酒をゆっくり頂きながら、周りを見渡すと皆ご近所の方らしく、年配のお客さんが意外に多い。それぞれに、「お昼のセット」や、天せいろなどで和やかに寛いでいる様子や、奥さんとの会話などから、地元で愛されているお店なんだな~という事を、ひしひしと感じさせられる。
すっかり堪能し、では・・・、楽しみにしていた念願の「田舎蕎麦」を
底下げの蒸篭にこんもりと盛られた蕎麦に、息を呑む・・・
雑誌の写真を見て知ってはいたが、目の前のこの蕎麦の粗挽きの豪華さに一瞬目をみはってしまう。
手繰り寄せると、その途端、強烈な香りがぶわっと立つ。その甘いようなどこまでも香ばしい、これこそナッツを思わせるような香りに、くらくらしてしまう~
口に含むと、当然この粗挽きの粒がざらりと掠める。こんなにも野趣さにあふれた蕎麦は、久しぶり。もっちりとした腰をかみ締めると、香り同様、いやそれ以上の濃く深い穀物の風味が口いっぱいに広がる。お、お、美味しい~・・・
これは、つゆなどまったく必要のない蕎麦で、塩ででも頂いてみたくなってしまう。
手繰りながらしみじみと眺めると、挽きぐるみではありながら、どこか透明感があり、その中に散った蕎麦の粒は、普遍性のない美しさ。夜空に浮かぶ星々の景色さえ思わせる。
繋ぎはほんのわずかなんですよ、との事で、やや短めではあるが、そんな事はどうでもよくなってしまう。ただ万人受けするかどうかは難しいが、粗挽き好きとしてはこれはたまらない。
一方の「せいろ」も気になりお聞きすると、「せいろ」は二八で喉越しよく、これよりもやや細めに作っているとのこと。
すっかり感動しながら、やっと汁を思い出し、汁に漬けて頂くと、この汁も又いい。すべての素材が突出することなく、やや甘めのまろやかな汁。
頃合を見て出された優しく白濁した蕎麦湯を注ぎいれ頂くと、すっとのびる汁が体にすうっと入っていく。ああ・・・、美味しかった、心から思い、力が抜けていくような心地よいひと時 。
しばし、余韻に浸りながら、込み上げるような思いが静まらぬ心地で、お勘定を。「美味しかった・・」と告げると、これも優しい笑顔で、「ありがとうございます」と答えてくれる奥様に、ご主人。
蕎麦に感動した上に、この対応の気持ちよさは、本当にうれしい。
外に出てからも、まだ余韻が残ったように、ぼんやりと駅へと向かいながら、しみじみと思う。
ああ、こんなお店、近くに絶対欲しいなぁ~・・
今日は、来てみて本当によかった。又、ぜひぜひ、頂きに来よう、と心から思う・・
本当に・・・、ご馳走さまでした~
*お品書き
せいろ 680円、田舎 840円、おろし 790円、とろろ 840円、ぶっかけ 890円、鴨せいろ 1,260円、天せいろ 1,370円、かけ 680円、かき玉 790円、山かけ 840円、山菜きのこ 890円、
玉子丼 420円、親子丼 530円、鴨とじ丼 580円、天丼 680円
焼き味噌 260円、わさび芋、なめこおろし 320円、お新香 370円、板わさ、蕎麦屋のサラダ 420円、玉子焼き 530円、そばがき 680円、鴨焼き 950円、天ぷら盛り合わせ 小680円、大1,260円など
辛丹波、一ノ蔵、銀盤、浦霞、天狗舞、久保田 570円~
「手打そば 重吉」
足立区綾瀬1-33-16
03-5680-9077
11:00~14:00 / 17:00~20:30
火曜定休
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まだ、それ、ありますでしょうか、
いや、あって欲しいです~っっ
あの材料まだるかな・・
私もお店を出てから、あまりに感動して余韻でぼーーーっとしてしいました。
ああ・・・、又食べたくなってきちゃったじゃないですか~・・
いつもは黙ってお会計をして帰ってきてしまうのですが、思わず「おいしかった」と伝えてしまいました。
わざわざ行ってよかった。
ここの田舎、いいですよね~。。
私は、食べ終わったあと、あまりに感無量になってしまって、涙ぐんでしまったんです。
ああ、また、食べたい・・・。
鴨焼き、焼き味噌、それも試してみたいです(^^)
昨日伺いました。
すばらしかったです!堪能。
焼き味噌と鴨焼きも美味しかったです♪
これまた、地元とは・・・。
う、羨ましい。。
私は、そのカウンターの左端でした♪
一番左は、新聞がいたので、3番目っていいうところかしら?
小さなカウンターですが、とても落ち着けますね(^^)。
せいろも・・、せいろもやはり頂いてみたいです。あと、天ぷらも・・。
それから、再び情報ありがとうございます。
綾瀬に行ったら、こちらに寄りたくなってしまいそうですが、はぎの、島屋さんにも足をのばしてみます。
ありがとうございました(^^)
確かに・・・、暑かったですよね~、<今年は(^^;;
それはそうと、自転車で10分未満!
う、う、う、羨ましいですっっ。
こういうお店、ほんっとに近くに欲しい・・。
でも、又伺いに行きます(^^)
ここはまさに自分の地元。
徒歩で行ける距離なので…。
3連席のカウンターの右端が自分の定位置です。
ここは田舎もせいろもそば湯も美味い。
そして飽きない。
とても感じのいいそば屋のひとつです。
ああ、綾瀬にはあと島屋、はぎのという美味いそば屋さんがあるよ。
はぎのは夜しか営業してないけど。
次回訪問時にはぜひそちらにもお立寄りください。
ではまた。
涼しくなったし・・・今日当たり行こうかな♪が、自転車ゆえにお酒控えちゃいます(いちお飲酒運転になるそうで)。クヤシー!
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