時が経てば悲しみも薄れていくのかと思っていたのに、
日々過ぎれば過ぎるだけ、あれこれと思い出し、
日に日に寂しさに悲しさが、じわじわと募ってくる…。
これまでに親兄弟子供を亡くされた人は皆、
こんな痛みを感じていたんだなあ、と改めて知り、
一つ大人になったんだ、と思うが、ついつい溜息が洩れてしまう。
そんな私を見かねてか、
「気分転換かねて、丹三郎リベンジ、奥多摩にドライブしに行こう」
と突然彼が提案し、気分切り替え車に乗り込み、早速出発 。
ぎらぎら太陽が照りつける、まだまだ夏の勢い強い中、
昼ちょっと前、「今日は入れますように」と到着すると…
むむむむっ、又しても様子が変、「本日休業」の看板が出ているよぅっ
定休日は1の日だし、HPも確認したのに、なぜなぜっ
と、車から飛び降り入口へと駆け込むと…
まっ、又してもっ、ううううう、無念なり丹三郎~っ
14日まで臨時休業とは・・・・
一体いつになれば入れるや、なんと苦難の道なりや。。
三度目の正直ならず、仕方なく諦め、…さて、どうしよう、
とふと頭を横切った、お店が一つ。
確か軍畑駅の近くと書いてあったはず、
以前、某機関誌で見たお店へ行ってみよう 。
電話もないお店、ドキドキしながら向かったお店は、
軍畑大橋から多摩川辺に下りていった、細い細い山道の中。
道案内も看板も何もなく、ゆっくりと走らせて行った先に…
民家の間に、静かに佇む、趣あるお店に辿り着く。
お盆時期だから、と不安だったお店には、きちんと暖簾が下ろされ、
中からの、ほのかな灯りが微かに見える。
青梅 「そば処 いけだ」
扉を開くと、まだ新しそうな木々の温もり溢れた小さな空間。
囲炉裏の切られた小さな小上がり席が角に作られ、
手前には、木目美しい白木のテーブルが三卓並んで置かれてる。
丁度入れ違いに帰られたご夫婦に、奥には常連らしい年配の男性お一人。
空いていた真ん中のテーブルに腰を下ろすと、
「いらっしゃい」とにっこり、暖かな笑顔の女将さんが迎えて下さる。
すぐに出された蕎麦茶を口にして…
品書きは、横の壁に貼られたシンプルな品書き。
うんうん、いいなあ、お蕎麦はすべて「挽きぐるみ」。
「とろろ」に「天つき」の組み合わせのみで、
他は、ビール、日本酒、焼酎、ウーロン茶
シンプルな品書きなら、迷う事もなく、
中から、二人で「天付き」の「挽きぐるみせいろ」を早速注文。
注文終えれば、後は待つだけ。
開け放たれた窓から眺めれば、木々の間に多摩川のせせらぎが垣間見え、
すぅ~っと入ってくる、川面を撫でてくる心地のいい涼風。
ああ、気持ち、いいなあ…
とぼんやりと眺めていると、ふっと現実から離れていくよう。
…と、ん?これは??
窓辺にそっと置かれていた、「蕎麦うんちく」との巻きもの。
解き開いてみれば、蕎麦屋の屋号に始まり、
蕎麦の種類などなどの、蘊蓄がびっしり書かれた書がしたためられ、
ふむふむと丁寧に、見ていると…
「お待たせしました」と、「天付き挽きぐるみ蕎麦」が目の前に到着 。
蒸篭にこんもりと盛られた蕎麦は、グレー色帯びた挽きぐるみ。
ざっくりとした角は、穀物感みなぎり、
ぼつぽつと浮く蕎麦の欠片に、躍動感が溢れてる。
手繰り上げれば、すぅ~っと広がる、溌剌とした穀物の香り。
口にすれば、心地のいいはらりとした歯ごたえに、
飲み込む瞬間に、ほのかにかさっと掠めゆく、欠片のざらつき。
細切りされた蕎麦は、喉越しもするりと心地よく、
口には、ふわ~っと蕎麦の香気と甘みを残していく。
あ、この蕎麦、、美味しい…
「お塩でも食べて見て下さい」との塩は、拘りある藻塩。
そっと箸先に付け、蕎麦を手繰って口にすれば、
さらに蕎麦そのもの味の輪郭が感じられ…
そっともり汁に浸してみれば、この汁が…、美味しい 。
ふっと広がる鰹を始めとした出汁の香り。
その後で、まろやかに染みた旨みが残り、
蕎麦の風味を、ぐんっと引き立てる。
薬味の山葵は、さすが奥多摩、ツーンとした鮮烈さ。
彼と二人で、蕎麦も汁も美味しい、とささやきながら、
思いがけず出合ったの蕎麦の美味しさがとてもうれしく…
天麩羅は、紫蘇に南瓜、オクラにしめじ、モロヘイヤ。
家庭的な天麩羅だけど、さっくり揚げられこれも好感。
さらに、添えられた小鉢の「山牛蒡の梅漬け」が、はっとするほど美味しく…
何時の間にか食べ終えてしまった蕎麦の後で、
さらさらとした蕎麦湯を頂きながら、
ぽりぽりと齧る、山牛蒡に、しみじみとほっとさせられて…
美味しかったね、と席を立つと、
「甘い物嫌いじゃなかったら、どうぞ」
と女将さんが置いてくれたチョコレート。
さらに、席を立てば、「そこの飴持ってってね、遠慮しないでいっぱいね」
と、にっこりおっしゃって下さるご主人。
ささやかな事だけど、なんだかほっと心に暖かいものを頂いて、
ああ、又来たいなあ、としみじみと。
ご馳走様でした~
山の中での小さな出会いに、又ひとつ心癒されて…
やっぱり、蕎麦は、広大無辺。
感謝します…。
「そば処 いけだ」
青梅市柚木町2-546-21
tel なし
水・木曜日定休
P二台くらい
一日限定20食
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暖かなコメントに、思わず涙が出そうになってしまいました。
ありがとうございます。。
私も、今月始めの数日は空白で…
はい、ゆっくり、心の赴くままに、いこうかと思っています。。
お父様のこと、心からお悔やみ申し上げます。
私も20年前に父を亡くし、それまで経験した悲しいこととは比較にならない、痛みと悲しみでした。
葬儀から45日までの記憶がほとんどありません。
正気にかえっていたのは仕事している間だけでした。
yukaさんはすばらしいお仕事をされています。
悲しみが癒えるのは長くかかると思いますが、優しいご主人もいらっしゃいます。
なによりです。
むりに元気になろうとしなくてもいいですよ。
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