もう、派手なことはなんにもないけど、やっぱりちょっと特別の日 。
と、「好きなとこに連れてったげるよ」という彼の言葉を素直に受け、ずっと以前から行ってみたいと思いつつ、行けずにいたお店をリクエスト。
八王子の住宅街。
その中にひっそりと佇む、まさしく隠れ家のお蕎麦屋さん。
西八王子の住宅街。カーナビを頼りに進むが、迷いに迷い・・
ふっと入った細い路地沿いに、やっと見つけた小さな看板。
かわいらしく、小さな敷石を並べられたアプローチ。
枝垂桜が庭を覆う、ほっと心を和ませるてくれるような一軒家屋のお店。
八王子 「手打蕎麦処 一紘 -いっこう- 」
両側の木々や草花を見つめつつ、このアプローチを歩いているとのどかな気持ちになってくる。
と、ふと上を見上げると、何やら掛札が。
「此を入りて 蕎麦に ひたれ」
ん~、いいなぁ 。
そして、足元を見やると・・
木々の間に、手書きで書かれた又別の看板も。
「十割手打ち蕎麦 自家製石臼碾き
蕎酔庵いっこう」
これもゆっくりと眺め・・・、
入り口までの間に、すっかり期待に胸を膨らませ、すっと降ろされた暖簾の前にたどり着く。
木の引き戸を引き入った店内は、すっと灯りの落とされた小じんまりとした空間。
入ってすぐのまん前には、一枚板で作られた手作り感あふれた6人がけの大テーブルが鎮座し、その脇に、二人がけのテーブル席が二つのみ。
すっきりとして清潔感溢れたこの小さな空間は、すっと肌に馴染むような心地のよさ。
入るとすぐ、笑顔で女将さんが迎えて下さり、空いていた真ん中の大テーブルに腰を下ろす。
座り心地のいい椅子に腰を掛けると、すぐに緑茶とお絞りが出される。ほっとして頂きながら、置かれている品書きを広げていると、さらに小鉢が目の前に置かれる。
太く大振りの切干大根の煮付け。しっとりと煮込まれた煮物はしみじみとして美味しい。
これだけで、お酒が飲めてしまうな~・・・などと思いながら、改めて品書きを吟味。
お蕎麦は、「(丸抜き粗挽き)せいろ」に「(玄・丸ぬき粗挽き)十割蕎麦」、「(丸抜き 粗挽き)手挽き」の三種。「手挽き」の文字に咄嗟に反応してしまうが、よく見ると、十割と手挽きには、限定5食の文字。
奥様に「まだありますか・・?」とお聞きすると、あるとのこと。
だったら是非、と私は「手挽き」を、彼は「せいろ」の大盛に決め、さらにお料理の中の(海老・ホタテ・玉ねぎ・人参・三つ葉)と書かれている「掻き揚げ天ぷら」をお願いすることに。
待ちながら、改めて品書きを捲っていると・・・、
これがびっくり♪
「蕎麦粉粒度分布分析グラフ」やら、食べ物の「血統上昇指数」、さらには、「天ぷらとは」、「蕎麦粉の栄養」などの詳しいデーターが入ったページが何ページにも渡って綴られている。
これが面白く、二人して興味津々で読みふけってしまう。
まるで、研究データーが書かれているかのようで、こちらのご主人にも又、密かに興味を持ってしまう・・・。
と、思わず夢中になっていると、程なくして「掻き揚げ」が目の前に出される。
二人分の天つゆを配慮して出してくださり、見るとこれが立派な掻き揚げ
球型に近い、大よそ10センチ近く高さがあろうかと思われる掻き揚げ。見るからにカラリとした三つ葉や玉ねぎの間には、ごろごとと海老や帆立が見え隠れする。
崩してしまうのが惜しいように思いながら箸を入れると、さらに海老帆立がごろごろと・・。
見た目だけでも楽しいくらいの掻き揚げを、ではっと口にすると、カラリとした甘い玉ねぎに、三つ葉、人参の香ばしさ。その上さらに、ぶつ切りにされた車えびがぷりっぷり 。帆立も豪快に、二つ割りにされた貝柱がこれもふんだんに盛り込まれ、なんとも豪華な食べ応えのある掻き揚げ。
すっかり、これだけで満足してしまいそう~
と非常に満足な思いで食べ終えた頃合あたりに、お蕎麦が目の前に置かれる。
まずは、彼の「せいろそば」(大盛)から。
自家製粉した丸ぬきを九一で打った粗挽きの蕎麦。
かなり細めの瑞々しく輝く蕎麦には、うっすらと粗挽きされた粒が見え隠れする。ちょっともらって食べてみると、細いながらももちもちとした歯ごたえがあり、ふわりと漂う風味のある美味しい蕎麦。
大盛とは言え、かなりたっぷりと盛られた蕎麦を目の前に、「旨いっ」と、彼もかなり満足な様子。
続けて私の目の前にも、「手挽き蕎麦」が置かれる。
福井の蕎麦、それを手挽きし24メッシュで振るった粗挽きの蕎麦に、微粉とつなぎ1割ほど混ぜて打たれた蕎麦。
目の前に置かれた瞬間に、この蕎麦の粒に満たされた蕎麦の姿に息を飲む
せいろよりやや太めに切られ、その表面はざっくりとして鮮やか。そして、その蕎麦にはびっしりと透明なものや赤茶色の蕎麦の粒が覆っている。
うっとり見つめそうになりながら手繰りよせると、ふわりと漂う蕎麦の香り。
口に含むと、やさしく掠めていくざらつき感。かみ締めるとしなやさを伴った心地のいい腰加減。それを楽しみ、飲み込むと、その後からぐわ~と、内側から鼻に抜けていく、濃く香ばしい蕎麦の風味があがって来る。
お、美味しい・・・。
食べ進めながら、思わず唸ってしまいそうになる蕎麦の風味を、慈しむように楽しむ至極のひと時・・・。
そして、きちんと我々の食べる頃合を見計らって、奥様が出して下った蕎麦湯が、これまた絶品。
真っ白の蕎麦湯には、細かな蕎麦の粉が混ざった、滑らかでクリーミィーな熱々の蕎麦湯。
拘りを持って作られたもり汁に注ぎいれ頂くと、ほ~っとした心地になってしまう美味しい蕎麦ポタージュ。
うっとりしながら、この蕎麦湯を頂き、蕎麦の余韻に浸っていると、
「この器、ぜーんぶ手作りなんですよ 」と、お茶を注いで下さりながら、奥様が話して下さる。
改めて手にとって眺める器は、ひとつひとつが違う、どれもがセンスのよい素敵な器。
自宅を改装してのお店に、温もり感あふれた手作りの器で供されるお料理にお蕎麦。
いいお店だなぁ~。
しみじみと思いながら、横のテーブル席の常連らしいお客さんが、奥様やご主人と親しくお話されているのを、うらやましく思ってしまう。
小じんまりとした居心地のいい空間に、
にこやかで親しげな奥様のもてなし。
それに、この蕎麦に、掻き揚げ。
こ、このお店がご近所だったら、うれしいなぁ・・・。
と、心から思いながら、ゆっくりとお茶を頂き、席を立つ。
「ありがとうございました~」、やさしいご主人の声が又うれしく、
又、ぜひぜひ訪れたい、と思ってしまう。
ごちそう様でした~
誕生日にふさわしい心から満喫した美味しい蕎麦。
今度は、「玄・まる抜き」の「十割蕎麦」を食べてみたいな
*お品書き
せいろ 750円、10割せいろ 850円、手碾きせいろ 950円(大盛250円)、ぶっかけ 1,000円、掻き揚げ天せいろ、鴨せいろ 1,200円、かけ 750円、にしんそば、掻き揚げ天そば 1,200円、鴨南蛮そば 1,400円、
焼き味噌 500円、鴨陶板焼き 700円、にしん昔煮 500円、野菜掻き揚げ天ぷら 250円、掻き揚げ天ぷら 500円、出し巻き玉子 600円、そばがき 600円
東北泉、穀良都、澤姫、竹鶴 600円~
手打蕎麦処 蕎酔庵
「一紘 -いっこう-」
八王子市日吉町8-16
042-622-0792
11:30~14:30
(夜要予約)17:30~20:30
火曜水曜定休
P2台 禁煙
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私も、ここ、一発で恋しちゃったお蕎麦です♪
ご主人と奥様がそんな事を・・
なんて、うれしい・・・(涙)。
又、ぜひぜひ、伺いたいです!
そうそう、「男の隠れ家」にも、たっぷりと掲載されているの、早速拝見させてもらいました。
あ~、私も又食べたくなってきましたぁ(^^)。
いつも大盛りを食べてしまうほど、
ここの蕎麦が好きです。
ご主人と奥様が、
「この店がネットに載ってるの」と嬉そうに
「つれづれ蕎麦」のコピーを見せて
くれましたよ。
今月の「男の隠れ家」にも粒度分布に
ついて少し掲載されているそうです。
あ~、また食べたくなってきましたぁ。
まだまだ、もっと、こちらのお蕎麦は食べてみたい、そう思っています。
ご主人のお話もお聞きしたい・・
そう思ってしまいました。
西八王子に来たら、迷ってしまいそうです・・。
さて、情報ありがとうございました。
「麦角」さん、行ってみたいと思っていたお店のひとつです。
なるほど・・
そこまでおっしゃられたとなっては、早々にでも伺いたくなってしまいました。
ありがとうございます♪
ちょっと遠いけど、まだ遠出をして行って見ます(^^)
はじめまして、おはようございます。
いつも楽しく拝見させて頂いております。
僕(石神井公園在住)もお蕎麦が大好きで仕事の合間に美味しいお蕎麦を求めて良く訪れます。
昨日は西八王子の「坐忘」さんに行き、「昼の天もり」を頂きました!
噂通りの美味とお店の雰囲気を堪能することができ、素晴らしい時間を過ごすことができました。
「いっこう」さんと「坐忘」さんは凄く近いんですね。
また今度八王子に行った時は是非行ってみたいと思いました。
ところでyukaさんは「麦角」というお店をご存知ですか?
・店名 : 麦角(ばっかく)
・住所 : 東京都八王子市館町446
・TEL : 042-662-8838
・営業時間 : 11:30~19:30
・定休日 : 月曜日
高尾駅1つ隣の「狭間」が最寄り駅なんですが、ここのお蕎麦は僕が今まで食べてきた中でも確実に上位に入るほど美味しいお店です!
お時間がございましたら是非とも行ってみて下さ~い!
そうなんです・・・。いろいろ、と、全く・・・です。
もちろん♪
食べたら、それにも増す・・・(^^)。
蕎麦解析、すごいですよね!
思わず、じっくりと読みふけってしまいました。
情報ありがとうございます。
こちらは、又、ぜひぜひ訪れたいと思っています。
今度は、電車で伺って、蕎麦前からゆっくりと頂きに訪れたいと思います。
なんだか生唾がでてきてしまいます。
しかし蕎麦懐石ならぬ蕎麦解析・・・
ぜひお目にかかりたいですぅ。
宗旨変えなさったんですかね・・・。
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