朝から今日も生憎の雨。
なんでも、昼夜共、結構混んでいるとの話なので、こういう日こそ・・・、と。
サザエさんの町、「桜新町」。まだ美しく咲いている八重桜を眺めながら、用賀方面に向かい、途中の砧通りへ折れてしばらく進むと・・・
さらに入った路地沿いに、知らなければすっと通り過ぎてしまいそうな程、すっきりとシンプルなお店にすぐに出くわす。
蕎麦の文字はどこにもなく、まるでカフェか、ギャラリーかのような佇まい。
唯ひとつの目印は・・・、通りに面して大きく窓の取られた打ち場あること。
用賀 「しんとみ -shintomi- 」
サロンのような雰囲気をも感じつつ、やや緊張して扉を開く。
入った店内は、表から想像したよりずっと広々とした空間。
奥行きのある店内には、厨房に面してすう~と長くカウンター席が伸び、後ろに4人がけのテーブル席がひとつ。
奥にはインテリアのひとつのような階段もあり、声がするあたり、二階も客席のよう。
カウンターの中では、やや強面っぽいご主人に、若い板前さんのような男一人。その前のカウンター席には先客のおじ様が一人、静かにお蕎麦を食べている。
蕎麦屋の雰囲気とはちょっと違う雰囲気に、勝手がよくわからず緊張したままカウンターの端に腰を下ろす。
程なく、ご主人のお母様だろうか、温かみのある優しそうなおば様が、お茶とお絞りを出して下さり、ほっとして、お茶を頂くと・・、
同時くらいに、常連らしいサラリーマンの方も入ってきて、二、三ご主人と言葉を交わしながら慣れた様子でカウンターの椅子を引く。
この人は何を頼むのかしら?などと思いながら、前に置かれている品書きを見ていると、
「ビールもらえる?」の声。
なんだか、それにつられるように、私もささっとお蕎麦だけ頂いて帰るのも、ちょっと寂しいような気がし、おばさんに(ビールはやや寒いので)「熱燗、もらえますか?」とお願いしてしまう。
「はい 」
と、暖かい笑顔で受けて下さったのがとてもうれしい。
待っているとしばししてお盆に「お通し」を載せて、熱燗が置かれる。
きちんとまきすで形作られた出し巻き卵に、豚肉の西京漬け焼き。
出汁の味わいのしっかりとした卵が美味しい。さらに添えられた豚肉は、柔らかく味噌の味付けがしっかりとされていて、これも旨い。
何かお料理・・・と、思ったが、品書きには蕎麦のメニューしか書かれていないので、「天もり」を天ぷらを先で、お願いする、とビールのサラリーマンの方も、続けて「鴨汁」と・・・。
と、お願いしたら、ご主人がすっと出してくださった小鉢。
天ぷらができるまでの、やはり「お通し」なのだろうか・・・?
なんだかうれしく頂くと、何と竹の子
お聞きすると、「筍の軸の部分を揃えて切り落とした、キンピラ」とのこと。
やっと、ご主人が微笑んでくれたのもうれしい上に、しゃきっとした歯ごたえがありながらも、軸の硬さはなく、しかも、上品な味付けの筍がとても美味しい。
と、ゆっくりお酒に竹の子を味わっていると、前の厨房からではなく、横で揚げていたらしい天ぷらが、若い板前さんのような男の人から渡される。
粗塩が添えられて出された天ぷらは、上品に美しく盛り付けられて。
春らしい蕗のとうに、タラの芽、それに海老二本にかぼちゃにナス。薄い衣で揚げられた、さくっとした美味しい天ぷら。
と、静かに天ぷらを頂いていると、ばたばた・・と、続けて二人、お客さんが入っては、見知ったようにカウンターに腰を下ろす。皆さん、馴染みのようで、とても親しそう。
羨ましいなぁ~、と思いながら、私もそろそろお蕎麦をも。
まずは、汁のはいったどっぷりとした器に、薬味の葱と山葵が置かれ、続いて笊に盛られた蕎麦がご主人から出される。
江戸前よりは気持ち太めに切られた蕎麦は、力強さを感じる男っぽい蕎麦。このきりっと角の立った蕎麦を手繰り、顔を寄せると、ふわりと蕎麦の香りが立つ。
口に含むと、むちっとした感覚のしっかりとした腰の蕎麦。噛み締めると、蕎麦の甘みが強い。この腰のある蕎麦を噛み締めるのが心地よく、お聞きすると、「北海道の蕎麦をほぼ十割で」打っているとのこと。繋がりもよく、何か不思議な魅力のある蕎麦。
汁は出汁がしっかりと取られた、すっきりとした辛口。このしっかりとした蕎麦にも負けず、合わさるとさらに蕎麦の風味が増すかのよう。
底下げの笊に盛られ、かなりしっかりとした量があったにも関わらず、美味しく頂いてしまう。
私の食べるのをさりげなく見ながら、タイミングぴったりに作って出して下さった蕎麦湯はややとろみのある、白濁したもの。
あらかじめ器にもり汁が入ってはいるが、大きめの器なので、これにたっぷりと注ぎ頂くと、汁の美味しさをしみじみと感じてしまう。
と、満足しつつ蕎麦湯を頂いていると、又何やらすっと目の前に出してくださり・・・
なんと、これが「鯛めし」 。
驚いて回りを見ると、皆さんに出しているよう。なるほど・・・、お蕎麦には、このご飯が付くのか・・・。
と、納得して頂くと、ふわっと鯛の出汁が染み込んだ、もちもちとしたご飯も、添えられた山椒風味の煮昆布も、どちらも、非常に美味しい
すっかり頂いてしまうと、お腹もいっぱ~いの大満足。
ゆっくりお茶を頂きながら、ほっとしていると、始終この若い板前さんも、ご主人も何かの下ごしらえを丁寧に丁寧に作ってる。
その手さばきがとても美しく、何を作るのだろう・・・と、興味でいっぱいになり、品書きの最後に書かれている「おまかせコース」というのが気になってしまう。
あの、お通しだけでも、こちらのお料理のレベルが分かるもの。
一度、ここのお料理をも頂いてみたい・・・と強く思いつつ席を立つ。
ご馳走さまでした~
何だかちょっとドキドキしてしまう不思議なお店。
又、ぜひ訪れて、今度はもう少し、ご主人ともお話しをしてみたいな・・・
*お品書き
もり 750円、おろし 850円、天ぷら 1,300円、鴨汁 1,400円、かけ 750円、九条ねぎと京揚げ 1,000円、鴨南 1,400円、天ぷら 1,300円、かれー 1,000円、天丼 1,200円、穴子丼 1,200円
瓶ビール 600円、地酒 1,000円~、ワイン
「しんとみ」
世田谷区用賀3-5-11
03-3700-8282
12:00~14:00 / 18:00~22:00
火曜定休
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納得です、あのカウンター。
あれは、ぜひ、夜にもう少し、ゆったりと杯を傾けて寛ぎたい・・と思ってしまいました。
ありがとうございます。
感謝・感謝・・・。
お酒を飲むのには落ち着けるお店ですよね♪
yukaさんお好みのカウンターが・・・・・
お寿司屋さんからお蕎麦屋に・・・手打ちに変身・・・・・
だから雰囲気がお蕎麦屋さんとチョイと違っていて・・・
宵にお酒を・・・・気の効いたアテでなんて、いいですね♪
丁度砧公園に向かう道で・・。
こちら、お昼の営業時間が短いみたいです。
でも、不思議に素敵なお店。
私は、次回はぜったい夜に伺いたいと思ってます。
何度か店の前を通ったことがあって気になって
いたんだけど、いつも中休み時間で、、、
今度あらためて行ってみよっと♪
→ yuka (03/19)
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→ sherbetsST (03/18)
→ 森のたぬき (03/01)
→ yuka (02/24)