今のうちにどうしても食べておきたい、
御年81歳になる、ご主人の珠玉の蕎麦を。
昨日までのぽかぽか陽気から一転、
真冬の寒さの中、車を走らせ向かった三島郊外。
車行きかう通りに面して、ふっと佇む、
「蕎麦商」の看板に、藍染めの暖簾、
庭木の緑に覆われた、しっぽりとした古民家。
島田 「藪蕎麦 宮本」
平日の13時ちょっと過ぎ、この天気に待ち人もなく、
暖かく、すんなりと通された座敷のテーブル。
すぐに出された「お水」がはっとする程美味しく 、
お目当ては、迷う事なく「手挽きそば」。
それと、冬の時期限定のお蕎麦、
私は「おかめそば」、
彼は「鴨南蛮そば」を添え注文 。
頼めばすぐ、まずは「手挽きそば」。
笊にふわりと盛られた小山は、
透けるグレーの細切りにホシが輝く、
私にとっては宝石、神々しいまでの美しさ 。
すうっと鼻孔に香りを過らせ、
きりっとして淑やか、あっという間に喉に消える、
儚いまでの心地良さ、
ぞくぞくする程、美味しい 。
ずっと手繰っていたくなるのに、
切ないことにあっという間。
蕎麦湯はさらさらとした素の釜湯、
注いだもり汁の旨さに染み入り、
ゆっくりと余韻に浸っていると…、
湯気立てる二つのお盆が続いて到着。
なんて艶やかな「おかめそば」。
丼の横にそっと置かれた、
「お多福おかめ」の箸置の遊び心に、
すすったかけ汁は、すっきりとして柔らかく、
すぅ〜っと体に染み入る、
思わず目を閉じ、はぁ~。
この汁に浸る「せいろ」も繊細な細切り。
きりっとしつつほろりとほどけ、
実に軽やかに汁と供に喉に流れる 。
二つ盛られた蒲鉾は、すり身の旨み豊かな極上もの、
歯ごたえのある湯葉は京都産。
こっくりと炊かれた椎茸の甘みに、
ほんのりと甘く焼かれた出汁巻きは、
汁に放たれて、思わず顔がほころぶ 。
一方、彼の「鴨南蛮」は、
美しいロゼ色の鴨肉が5枚、
丼をいっぱいに覆う、圧巻の佇まい 。
注がれた汁は「おかめそば」とは又異なる、
鴨の出汁が染み、しかも上品、
すすった瞬間、思わずため息が漏れる旨さ。
後はもう、夢中で無言であっという間、
一滴残らずの二つの丼。
「遠路ありがとね、気を付けてね」
女将さんの優しい言葉が嬉しくて…
ご馳走さまでした〜
ああ、感動の一枚に至福の一杯。
暖簾を後にし、心に思う。
ずっとずっとこの蕎麦が食べられますように…

「藪蕎麦 宮本」
静岡県島田市船木253-7
0547-38-2533
11:30~14:00
月曜定休 Pあり
禁煙
2016年 9月18日 「手挽きそば」「カレー南蛮」「天ぷらそば」
2008年 9月13日 「ざるそば」に「手挽きそば」
- 関連記事
-
- 修善寺 「浅草じゅうろく 修善寺はなれ」 平日限定日替わり膳 (2023/09/19)
- 島田 「藪蕎麦 宮本」 息を飲む「手挽きそば」に「山かけそば」 (2023/09/18)
- 島田 「藪蕎麦 宮本」 「手挽きそば」に「おかめ」に「鴨南蛮」 (2022/03/18)
- ’19夏旅行Ⅲ 沼津 「おもだか」 微粉に粗挽きに「小天丼」 (2019/09/26)
- 夏旅行Ⅰ 島田 「宮本 藪」 神々しき珠玉の手挽きそば (2016/09/18)
- 静岡 「たがた」 静岡在来種のディスカバラー (2014/10/31)
- 藤枝 「ながいけ」 豊穣そのもの「静岡在来」三昧 (2014/10/31)
- 浜松 「おおもり」 喰う極の蕎麦 (2012/09/27)
- 富士市 「こばやし」 手挽き三昧 (2012/09/27)
- 御殿場 「草季庵」 (2012/06/29)
- 御殿場 「蕎廬庵」 5年ぶりに会った粗挽き (2012/06/29)
- 藤枝 「ながいけ」 粗挽四兄弟・静岡在来種 (2012/04/25)
- 静岡 「たがた」 愛おしき蕎麦・静岡在来 (2012/03/08)
- 静岡 富士市 「こばやし」 (2010/04/19)
- 藤枝 「ながいけ」 (2009/09/25)
→ yuka (11/25)
→ yuka (11/25)
→ yuka (11/25)
→ トマさん (11/20)
→ chameleon-arms (11/19)