西八王子の駅を降り、甲州街道を渡り、
この道のりを歩くのは、今日が最後、
そう思ったらもう、目の前が滲んで仕方ない。
この景色をしっかりと胸に刻んで…。
悲しくて、悲しくて、
今日をもって暖簾を下ろす、最後のお蕎麦。
西八王子 自家製石臼碾き 「蕎酔庵 いっこう」
何度となくご一緒させて頂いた常連の方々に、
西は京都に大阪から駆け付けた方々と席を並べ、
まずは、ビールで乾杯 。
その折々出された女将さんの小鉢はいつも楽しみで、
今日の小鉢は「蓮根のきんぴら」 。
頼んでいた糠漬けも今日は大皿に盛って頂き、
ビールからお酒に変えて…
ご主人のお得意「蓮根の蕎麦味噌挟み揚げ」に、
揚げた蕎麦の実がポン菓子のようにぷちっぷちっと、
軽やかな触感が楽しい「焼き味噌」で、
「澤姫」、「喜久酔」、「〆張鶴」。
こうして話してると、これが最後なんて思えなくなりながら…、
そろそろ、最後のお蕎麦をば 。
まずは、二種盛り。
長野県黒姫山産、手刈り天日干し、
「墨衣」こと、十割そば。
繋がりは短くとも、漂う香り豊か。
溢れるような穀物感に、
一紘さんの気持ちがぐっと胸に伝わってくる…。
産地違えの「墨衣」十割、福井県大野在来種
これも香りが実に豊か、
黒姫より洗練された香りに味わい 。
あっという間に二つの山はなくなり、
二枚目からは一種づつ。
北海道音威子府産、新そば、
「蕎薫こと、玄挽き・丸抜き合わせのニ八蕎麦。
顔を寄せれば、ピーナッツに似た香り、
ニ八らしいきりっとした腰に、ふっくら香ばしい 。
三枚目、福井県福井在来種、手挽きそば。
ぷりっとして心地よく掠める粒感に、
手繰った瞬間に広がる、シルキーな甘みが口に満ち、
ん〜、旨いっ 。
四枚目 長崎県諫早市 高来在来種
玄挽き十割
透けるような繊細さながら、もちもちとした心地のいい粘りがあり、
すっきりとした中から、ぐっと広がる野性味。
これも美味しいなあ
五枚目 佐賀県七山 玄新そば里味のかおり 十割
(5年掛けた宮崎産の在来種)
これがびっくりする程香り豊か。
野趣あふれながら品良く繊細な、
手繰る先から、香ばしさと甘みが交差する 。
最後は、ご主人が蕎麦を覚えた恩人の畑産、
福島県会津雄国山麓 会津の香り 新そば。
ああ…、なんていい香り。
大地の、お日様の、自然の恵みが心に響く、
馥郁とした、まこと豊穣そのものの味 。
感動さめやらず、さらに初めて頂く「そばがき」も。
蕎麦湯に浸された蕎麦がきは、
箸で落ち上げられない程、ほわほわとろ〜り。
ふわっと口に溶け、香ばしさに甘みがじわ〜。
今まで食べてなかったのが悔やまれる〜
最後の最後は、「かけそば」を。
きらきらと輝く琥珀の汁の美味しいこと 、
中から手繰り上げた蕎麦の神々しき美しさ。
汁に身をゆだね、ほろりとして口に蕩ける。
ああ…、感無量〜
すくいすくい、皆で汁まで飲み干して…、
余力を残しての閉店は、寂しすぎるけれど、
これもご主人の英断と…。
愛していた空間、愛していたお蕎麦、
いつまでも忘れずに胸に刻んで…
一紘さん、てるよさん、十余年ご苦労様でした。
そして、今までありがとうございました 。

手打蕎麦処 蕎酔庵
「一紘 -いっこう-」
八王子市日吉町8-16
042-622-0792
11:30~14:30 (夜予約のみ)
火水木 定休
P2台 禁煙
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今も思い出しては、寂しくなります…😢
年齢など考えて、
限界になる前に、余力を残しての英断。
私ももっともっと、伺っておきたかったと、
悔やまれてなりません…(´ρ`)
今年も宜しくお願いします。
いっこうは、地元でしかも車で10分とかからない
ところなので、時々覗いていたのですが、いつも
おやすみか、車が置けなかったりで最近は入れる
ことがなかったのでとても残念です。
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