傘を閉じ、雨をはらい、ゆっくりと引き戸を開くと、
ああ、変わらない、女将さんの優しい笑顔。

「寒かったでしょう～」と通された、
今は少なりつつある、古き良き昭和の座敷の間。
座布団に腰を降ろした途端、、ほっと寛ぎ…、



京都の友人と落ち合っての今日は、



前もって頼んでいた、「コース料理」（3,000円） 。



まずは、お酒を。
新潟　「かたふね」　本生しぼりたて。

添えられた、野沢菜をつまんでいると…、
次々に蕎麦前のお料理が。
　


とろりと柔らかく滑らかな「胡麻豆腐」は、
黒胡麻の風味が豊か、とっても美味しい 。



「板わさ」は、これも味のいい「焼きはも」。
焼海苔が添えられ、山葵もフレッシュ。



狐色の焼き目が心をそそる、「出汁巻き玉子」は、
ほんのり甘めの、私の好きな関東の味 。



そして、これが美味しいっ　
珍しい「鴨ウィンナー」。



「かたふね」　特別純米　熱燗を頂いて…、



「焼き味噌」は、上品で柔らかな味わい。
混ぜ込まれた揚げた蕎麦の実が、
まるで挽肉のようで、味わい深くお酒がススム。



「温かいうちにどうぞ」と出された、
蓋のされたお椀は、



飲んでいる合間にうれしい、「鴨つくね汁」 。
すっきりとした吸い物仕立ての汁に、
鴨の旨みが上品に染み、



そこに沈んだ鴨つくねは、
野性味残しつつ、ふっくらと柔らか肉汁じわっ 。



このつくねに、再び冷で、
「かたふね」　純米吟醸



そして…、
天ぷらと共に、十割「せいろ」。



頭を添えた、才巻海老を先頭に、
とろろ磯辺、しめじに、茄子、葱のかき揚げ。
衣薄くさくっと軽やかで、天ぷらも見事



そして…、
笊に盛られた蕎麦の、奥ゆかしき美しさ 。



手繰ればすっと伸び、鼻を横切る香りの良さ、
きりっと〆ったしなやかな腰に喉越し、
手繰るにつれ口に広がる、香ばしさに甘み

押しつけがましさのない、
静かに泰然と心に響く清冽な蕎麦　。

そこに、鰹出汁利き、角なくすっきりと汁が、
混然一体となり、蕎麦の旨さをさらに引き立て…、
美味しいっ、もうあっという間 。



あんまり美味しくて、
壁にかかった短冊は、今まさにの「桜切り」。



早速、追加で頼んだ「桜切り」は、
二つに分けて盛って下さり…、



うっとりと見とれる程、透ける可憐なピンクに、
緑の桜葉が散る、艶やかな姿 。



手繰るまでもなく、置かれた途端に広がる桜香に、
ぷるるっと心地良く唇に響き、
汁など何もいらいない、風雅な味わい 。



さらさらとした蕎麦湯で、じっくりと余韻に浸り、



蕎麦茶と共に出された蕎麦ぼうろを頂いて・・・、

ご馳走さまでした～

間合いよくにこやかに話して下さる女将さん、
裏からそっともてなして下さるご主人。
変わらない、安らぐこの空間…

充分すぎる程に満喫した午後のひと時。
ずっと食べてみたくていた、
「ひきぐるみ」も頂きに、又伺おう 。

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