開店してそろそろ半年、又行きたいな、と思っていたところ、
うれしい、華麗麺麭さんからの素敵なお誘い。
蕎麦人さんもいらっしゃるそうで、わくわく降り立った東十条。
夕時暮れ始めた、煉瓦敷きのほのぼのとした商店街の中程に、
柔らかな灯りが洩れこぼれる、品位あるお店が佇んでいる。
そっと置かれた、切り絵のような鉄製行灯、素敵だなあ…。
東十条 「一東庵(いっとうあん)」
暖簾を潜り扉を開き入れば…、
これはすごい、まだ6時というのに店内ほぼ満席。
さすがだなあ、早くもご主人の蕎麦の美味しさが知れ渡り、
すっかり人気のお店になっている 。
…と、急ぎ、既に到着していたお二人の待つテーブルに腰を下ろし、
まずは、生ビールをもらって、早速乾杯 。
目を落とせば、下駄細工の箸置きがかわい~い。
壁に美味しそうな品書きを眺めつつ…、
今日頂くのは、新しく始めたという、蕎麦コース 。
ビールでほおっと一息ついたところで、コースのお料理が出され始める。
まずは、「前菜」、「大豆三点盛り合わせ」。
成程、これは素敵な演出、
豆乳から、まず取られる湯葉、…の「湯葉刺し」に、
その後にできる「お豆腐」は、何もつけなくても、大豆の甘み豊かな、
顔がほころんでしまう、美味しいお豆腐。
そして…、その豆腐を味噌に漬けこんで作られる「豆腐の味噌漬け」、
チーズに似た、まったり濃厚なこの風味に…、早速お酒 。
お酒のリストを眺め、中からお願いした、「獺祭」純米吟醸酒。
品ある香りにすっきりとしたお酒が、この味噌漬けがたまらな~い。
豆腐好きとしては、前菜に豆腐三点はうれしい限り。
まったりゆっくりと、お酒と共に味わいながら…、
すぐに話弾み楽しんでいると、続いて出されたのは、
蕎麦粉入り「じゃが芋の冷製スープ」。
…と言う事は、ヴィシソワーズ ?
と、添えられたスプーンで掬い口にすれば…
こっ、これは、美味っし~いっ。
蕎麦粉が入った故だろうか、まろやかなコクが加わり、
とろ~んとしたとろみのあるスープの、この美味しさ。
中にはぷるぷるの蕎麦の実も混ざり、その食感がとても楽しく、
上に散らされた揚げ蕎麦の香ばしさが又絶妙。
思わず、これ、お替り♪、って言いたくなってしまう程。
と、舐めるように飲み干せば、
続いて出された「そばがき」に、思わず目を見張ってしまう。
な、何と言う粗挽き…
ぶつぶつと、まるで飛び出さんが如くに盛り込まれた蕎麦の粒。
掻き立て、まだ暖かい蕎麦がきからは、
ほわほわ~っと湯気と共に、蕎麦の芳しき香りが漂い、
口にすれば、ぷちんっぷちんっと、たまらない粒の弾ける感触。
粗塩をそっとつけ口にすれば、ふっくら香ばしい豊穣なる味わい。
栃木益子のこの蕎麦がき、ぞわぞわする程、美味し~い…。
と、すっかり満足しきっていると、粋な器に盛り付けられた、お料理が。
蕎麦屋の定番、しっかり味の染みた「鰊煮」に、
ほろろっと柔らかく炊かれた「鰯の甘露煮」、
まったりと和え衣に絡んだ「ツルムラサキと無花果の白和え」に、
「板わさ」は、上質なすり身の旨みが味わい深い。
「鴨ロース」は、しっとりとしてギトギト感なく、これっ、美味しい
鴨苦手な私なのに、この鴨はとても好み、
ちょんと添えられたマスタードがキリっとした風味を加え、斬新新鮮。
これらのお料理に、さらにお酒はくいくいと進み、
早速お替り、〆張鶴に、麓井の熱燗で盃を重ね…
待っていました、前回頂いて感動した、「豚肉大根プラム煮」
お肉はほろろっと崩れる程柔らかく、しっとり。
プラムの爽やかで柔らかな甘みに、豚肉の旨みが引き立ち、
大根はとろ~り、ん~、改めて、これは絶品 。
お料理最後は、「芝海老の掻き揚げ」。
さっくさくで軽やかな衣に、ぷりっぷりの海老が包まれ、
さすが小松庵で長い間働いてきたご主人、天麩羅も一流だ 。
一つ一つのお料理、どれも申し分のない美味しさ
まさに誇るべき江戸職人の、粋できちんとした技が光るお料理に、
すっかり、お酒と共に心から満喫し…
いよいよお蕎麦、これも二種のお蕎麦があるそうで、
まず出された一枚は、茨城古河三和町の、十割蕎麦。
うっすら緑がかった端正な細切りの蕎麦は、凛とし、
きりっとした表面に、浮かび見える丸抜きの蕎麦の粒。
手繰り上げれば、芳しき香りがふわりと広がり、
口にすれば、心地のいい歯ごたえに、ほのかに感じる粒の感触。
噛みしめれば、ふっくらとした香ばしい郁郁たる 穀物の味わい。
こ、これは美味しい…
しっかりとして円やかな、出汁の奥行き深い汁も美味しく、
はらりと浸せば、蕎麦の甘みが引き立ち、さらに美味しい 。
と、あっという間に手繰り終えれば、続けて二枚目、
茨城水府の「水府在来」、玄挽きした十割蕎麦。
一枚目に比べ、わずかに太めに断たれた蕎麦は、
艶やかなグレー色帯び、角は鋭利にピシっと立つ。
その中に、ぷつぷつと欠片が埋まる、品ある粗挽き。
ふっくら甘みのある小豆を思わせる香りがあり、
もちもちっとした歯ごたえが、とても楽しい。
噛みしめれば、これも円やかで深みある香ばしさに、暖かみのある甘み。
ああ、これも美味しい…
と、じっくりと味わっていたのに、ペロリ。
…これは、二八蕎麦も食べ比べてみたい 。
と、追加でお願いした、「二八そば」。
微粉で打たれた蕎麦は、艶やかですらり。
ノーブルな品格を感じれば、蕎麦がき同様、すぅ~っと広がる香り豊か。
しなやかな心地のいい腰に、喉越し清らかに落ちる滑らかさがあり、
繋ぎ感を全く感じさせない、蕎麦の旨み。
しかも、飲み込んだ後に、くっと込み上げてる香ばしさが実に濃厚。
ん~、これも美味しいなあ…
と、三種打ち分けた蕎麦が感慨深く、感想など語り合い、
出された蕎麦湯は、程良く白濁した、円やかな蕎麦湯。
これでもり汁の旨さを、改めてじっくりと味わってると…
わあい、これもうれしい、最後の甘味、「杏のミルクプリン」。
とろりん~っとして、欲していた甘みを満たしてくれる、
爽やかで、美味しいデザートを頂いて…
すっかり、お腹もいっぱい、大満足な蕎麦コース 。
ほおっとしている我々に、そっと顔を見せて下さったご主人は、
前回お会いした時よりも、頼もしさ増し、芯の強さを感じられ、
かわいい奥様とお二人の、本当になんて素敵なお店だなあ、
と、しみじみと感じながら…
お二人に笑顔で見送られ、外に出て見れば、
灯りが灯った行燈が、なんて素敵…。
切子細工に通じる、粋で風流な風情に、ほっとさせられ…
ご馳走様でした~
しっかりとした腕に粋ある、実力店。
素敵なお店ができた事が何よりうれしく、又訪れたいな…

「一東庵」
北区東十条2-16-10
03-6903-3833
11:30~15:00 / 17:00~21:00
11:30~15:00(日曜)
月曜定休
禁煙
2012年 2月 3日 お料理いろいろ、「二八そば」に「かけそば」
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