蕎蘆庵を後にした我々は、再び車に乗り込み…、
次の目的地は、立川「無庵」で修業されたご主人の店 。
以前、無庵のご主人からこちらの話を聞き、
ずっとずっと行ってみたいと思っていて…
わくわくしながら進んでいくと、通り沿いにそっと置かれた木の看板。
その横を曲がり入っていくと…、
草木生い茂る中に、ひっそりと立つ一軒屋に辿り着く。
ああ、このお店もなんて素敵・・・。
古き良きレトロな赴き溢れた古民家。
草の葉抜けて吹く風に、はらりと暖簾が靡く佇まいに、
思わず立ち止まり、しげしげと見入ってしまう・・・。
ゆっくりと石畳の上を歩き入口へと近づくと、横に打ち場が眺められ、
あ・・・、奥に手挽きの石臼が置かれてる 。
御殿場 「そば料理 艸季庵」
暖簾を潜り、ガラス窓枠の扉を開き入れば、
すぐ目の前に広がる、懐かしき昭和の家屋の風景。
靴を抜ぎ、艶々に磨かれた床の間に上がれば、
年月培った古民家ならではの、心地のいい静けさが身を包む。
左手は二間続けての、窓から草木生い茂る庭が見渡せる畳の間。
「こちらがゆっくりとしていますのでどうぞ・・・」
と、かわいいお嬢さん(かしら?)が通して下さったのは、
右側に個室仕立てに作られた、掘りこみのテーブルの一室。
座布団の上に腰を下ろせば、途端にほっと憩ってしまう・・・。
冬は蕎麦湯だそうだけど、暑い夏には冷たい蕎麦茶、
そっと口にし、早速手にする品書きは、うんうん、無庵の面影感じる
シックでセンスよく書かれたお品書き。
まずは…、この素敵な空間で頂く蕎麦前を 。
御殿場の米と湧水で作ったという地元のお酒「若水」を選びお願いすると、
南部鉄瓶の素敵な酒器で供される。
お通しの揚げ蕎麦には、塩昆布がまぶされ、これがとても美味しく・・・
程なく出されたのは、たっぷり盛られた「お漬物」(400円)
白瓜にメロン、茄子に蕪、胡瓜と茗荷の浅漬けの盛り合わせは、
どれも漬け具合ぴたり瑞々しく、とても美味しい…。
友人のお勧めは、イラストも素敵な「揚げそばがき」。
こっ、これはなんて美しい、まるで工芸品のよう 。
揚げられた表面は、網目のように繊細な絵を描く。
もり汁に浸されたその上に、大根おろしがこんもりと盛られ、
周りにはらりと散らされた、ちぎり海苔。
見ているだけでもうれしい、美しい盛り付けに、
崩してしまうのが惜しまれながら、取り分け頂くと…
さっくりカリっとした周りの軽快な食感はぞくぞくする程心地よく、
中はとろり、その中にびっしりと蕎麦の粒が混じり…、
これは美味し~い 。
これまで食べてきた「揚げ蕎麦がき」とは、全く違う食感の楽しさ。
口の中で転がせば、くうっと香ばしさが広がり…
この蕎麦がき、これはまさに絶品…!。
と感動しているところに、これが見事!
大皿にたっぷり盛られた、種類豊富な「天麩羅の盛り合わせ」(3~4人前)
衣は薄くからり、アスパラガスの甘さにうっとり。
さらに、ほこほこ南瓜に、インゲン、ピーマン
中はとろりと瑞々しい茄子に、ズッキーニ、
しゃきっとした茗荷、カラリと揚がった玉ねぎが甘~い 。
海老は衣さっくり中はぷりっとして旨み凝縮、
すかさず「喜久酔」をお替りして、お酒でじっくりと舌鼓み 。
ボリュームも満点、たっぷりの天ぷらに満足し…
ああ、このままこうしてずっと飲んで、いたいなあ、
などと思いながら、ゆるゆると蕎麦前を楽しんで…
そろそろお蕎麦を頂こう 。
と、改めて品書きを眺め…
3人いるので三種選んで早速注文。
まずは基本の「せいろ」そば。
笊にこんもり盛られた蕎麦は、ざっくりとした穀物感たっぷりの切り口に、
丸抜きの繊細な蕎麦粒が、ぷつぷつとデリケイトに混ざる繊細美。
手繰り上げれば、ふわりと広がる、円やかな蕎麦の香ばしい香り。
口に含めば、しなやかでしっくりとした腰に、
噛みしめた途端に、ほろっと喉を過ぎ、
後に、しっかり残していく、ふっくらとした香ばしさ。
優しくたおやか、穏やかなる落ち着き感があり、これも美味しい。
と3人で手繰るのも又楽しく、
気になり頼んだ「しぼりせいろ」は、
大根のおろし汁に信州味噌に葱が添えられ、
「お好みで」味噌をこれに溶いて、葱を浮かべ、
これに蕎麦を浸してみると…、
おっ、これは美味しい
ほのかな辛味にほっこりとした味噌が溶け込み、
これが、しみじみとした美味しさで、蕎麦に不思議によく合う。
好みはあるかもしれないけれど、これ、私はかなり好きっ。
そして、やっぱり食べたい「かけそば」も 。
まずは汁を口に含めば、途端に鰹の香りがふわっと広がり、
出汁の奥行き深く、すっきりとしながらも旨み溢れた、美味しいかけ汁。
飲んだ後の体に、じわ~っと染み入り、ん~たまらない 。
中の蕎麦を手繰れば、汁に浸ってほろりと零れ、
熱を帯び、汁をまとった蕎麦は、さらに香気が立つ。
揚げ玉が別に添えられているのもうれしく、
小鉢に取り分け、揚げ玉を乗せて頂くと、
さくっさくの揚げ玉の食感にコクが広がり、これはいいなあ 。
程良く白濁した蕎麦湯で、しぼり汁に、かけ汁、もり汁と、
三人でそれぞれたっぷり頂き、心から大満足 。
…と、これも気になるデザート「そばあんみつ」
香ばしい蕎麦アイスに、求肥のようなもちもちそばがき、
さらに、もちもちっとした蕎麦メレンゲがとても美味しく
中の寒天も「そば寒天」、丹波の大納言あんこ絶品っ、
こっ、これは…、この「そばあんみつ」、クセになってしまいそ~う 。
美味しかったねー…と、三人でぼおっと余韻にふけっていると、
すすっと、物腰柔らかく顔を出して下さったご主人は、
穏やかで優しそ~うな、ロマンスグレーの素敵な方 。
静かに語ってくれる言葉が胸に染み…
又、是非とも伺いたい、としっかりと思いながら、
笑顔で見送られ、お店を後に。
ご馳走様でした~
此ノ地ニ富士ノ 雪溶ケ百年ノ 湧水在リ。
玄蕎麦ヲ石臼デ碾キ 此ノ水デ 打ッタ蕎麦ハ格別ノ味ガスル。
旨酒ガヨク合ウ。
美味しく楽しく、素晴らしい御殿場での蕎麦巡り。
Uさん、tatenonさん、ありがとうございました~
「そば料理 艸季庵」
静岡県御殿場市杉名沢306-1
11:30~15:30 / 18:00~20:30
0550-88-0808
月曜定休
禁煙 P多し
お店のHP
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そして、読んで思わず、声を出してしまいました!!!。
えーーーーー、そんな。。
この秋、又訪れようと思っていたのに。
まだそんなお歳ではなかったのに、
なぜなぜと、惜しまれてなりません。
私も、すっと入ってきて、
そっと座り、暖かな笑顔のご主人を思い出します。
もっと早く、再訪していればよかった。
本当に悲しいです。残念です。
お知らせくださりありがとうございました。
私もこの場をもって、
慎んでご冥福をお祈りいたします…。
先日湯治の為伊豆の温泉へ。途中昼食をと大好きなお店を目指しておりました。盆休み後に連休を取ることが多いから事前に電話確認をと思い電話するも・・・「この電話は使われて・・」
今年の2月 艸季庵店主 横山誠さんが永眠されました。
懇意にしてくれていて、私が伺うと他のお客さまをほったらかして馬鹿話を楽しみました。
初めて伺った時は開店前の時間で初対面だというのに打ち場やら臼やらと見せてくれて、その時に撮った写真の中で横山さんが笑っています。
もうお会いできないと思うと・・・
この場をお借りし、慎んでご冥福をお祈りいたします。
私にとっての名店が一つ灯火を消してしまいました。
淋しいな
私は、最後の「そばあんみつ」にも感激しちゃいました。
ここ、本当に好きになっちゃいました。
又、遠足しましょう~(^^)
ご主人、はい、気づいていらっしゃったそうで、開口一番、蕎麦喰い師さんのお名前をおっしゃっていました。(どうして私の事を知っているか、びっくりしちゃったですっっ)。
了解です、こちらは又訪れて、その窓の横でぼんやりとふけってみます♪
ご主人、ほんっと~にお優しくて…
もっと早く訪れていればよかった、と思った程、とても好きになってしまいました(u_u*)~
街なみもすっきりとしていいところだなあ、と思いました。
ここは、いいですよ!ぜひ機会があったら…
いつか、きっと、、中清でお会いできると思っています。
どれも美味かったけど、特に揚げそばがきは驚きでした。しぼりも面白かったし、再訪してみたいですね。
以前ご主人にyukaさんの事は話しておきましたが、気付いていたかな・・ご主人。
雨がシトシト降る時、一番奥のL字の渡り廊下の角の席、今じゃ作られていない平面で無いガラス越しに見る表の草木は抜群の風情ですよ。これは是非ともと思います。
優しいご主人でしょ・・
この行程いから推測すると・・私が不得手な「竹・・」 もしくは「彦」 もしくは豆腐の「暁・・」あるいは「艸・・」あたりかな 次は
仕事の環境が少し変わり、忙しくて蕎麦屋さんの記事あげられません
武蔵関の「にはち」さんや、いつもの中清にはお邪魔してますが
御殿場、美味いものの宝庫ですね
イタリアン、蕎麦、和食....結局お客様がいいので育つのでしょう
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