よりにもよって、町田まで行かねばならない日に、東京は雪 。
ぽたぽたと大きな綿雪が舞い散る中、のろのろと走る小田急線で向かい、
所用を済ませたら、すっかり13時を回ってる。
まだまだ雪は降り続き、キンと冷えてはいるけど、実はうきうき 。
町田に所用があったらいいのに、とずっと切に思っていた、
行ってみたいと思っていたお店へ、心急ぎ足を運ぶ。
駅前のがやがやとした通りから離れ、人もまばらになった路地沿い。
凍えそうになりながら歩いていくと、程なく見えてくる「そば」の文字。
雪舞う中に、辿り着いた事に、感動さえ感じながら…
簡素なビルの一階に、すっと下ろされた、楚々とした暖簾。
町田 「そば切り 萬両」
がらがらと扉を開き入った店内は、すぐに感じる、きりっとした空気。
ほんのりと照明が落とされ、心地のいい緊張感が漂う中には、
厨房に面して作られた、すっと伸びたカウンタ6席程に、
きちんと並べられた、テーブル席が3卓。
無駄な飾り付けのない清楚な中に、しっとりとした風情があり、
隅々にまで手入れの行き届いた、落ち着いた空間。
寒さに凍えながら入った私に、迎えてくれた女将さんの笑顔が暖かく、
コートを脱いで、腰を下ろしたら、途端にほっと寛いで…
すぐに出して下さった暖かいお茶を口にし、早速品書きを眺めると、
冷たいお蕎麦に、
暖かいつけ汁の品々、
と、「季節の暖かい蕎麦はこれです」と、別に出してくれた一枚は、
私があまりに寒そうにしていたからか、「温かい蕎麦」のお品書き。
すぐにでも、お蕎麦を食べたいところだけれど…
ど…、ど…、想い募って訪れた念願のお店、
しかも、雪が舞い降るこんな日だもの、
「あの…、熱燗を頂けますか」
とお声かけると、熱燗は「黒龍」の「九頭龍」だそう。
それはいいな♪、とお願いすると、快く受けて下さるのもうれしく、
「お酒の充てはこちらになります(^^)」
と、壁に貼られた品書きを指して下さる。
やはりここは本物だ、書かれた手筆も美しい 。
端から眺め、いくつか食べてみたい物もあったけど、今日は一人。
中でも、熱燗にこれとない「浅漬け」があるのがうれしく、添えて注文。
程なく出された熱燗は、味わいのある陶器の徳利。
手にしっとりと馴染み、注ぎ口にすれば、ほおっと心も体も癒される。
次いで出された「野菜の浅漬け」、これが又とても美味しい。
大根、胡瓜に人参が、さっと漬けられしゃきっとして瑞々しく、
ほのかな柚子胡椒風味が爽やかで、どの野菜も甘~い 。
さっと散らされた胡麻は、とても香ばしく、
小さな一品であるに関わらず、この浅漬けにちょっと感動。
しばし、ほっとゆっくり熱燗で楽しませて頂いて…
ようやく体も暖まり、いよいよ楽しみにしていたお蕎麦をば 。
様々なつけ汁にも、とても心惹かれたが、
「手碾き」で打たれた蕎麦となったら、まずは素で頂きたい!
と、迷わずお願いした、「手碾き蕎麦」。
出された蕎麦は、陶器の器にこんもり、モンブランのごとく盛られてる。
瑞々しく端正に断たれた、グレーの細切り。
その中にぷつぷつと盛り込まれた蕎麦の欠片がそっと煌めく。
手繰ろうと、顔を寄せたら…、こっ、これは
むわんっと立ち込める、甘みに香ばしさ、ふっくらとした芳しい蕎麦の香り。
熟成蕎麦に近い、いやそれとも違う、
これが蕎麦の香りだ!と思わせる、力強くも温もりのある香りが、
途端に強烈に漂い、思わずこの香りに酔ってしまいそう。
手繰り口に含めば、「これぞ粗挽き」と主張する蕎麦とは又異なる、
たおやかな心地のいい腰に、滑らかな感触。
が、噛みしめれば、きしっとほのかに歯に感じる粒の感覚。
その途端、じわ~っと弾けたかのように広がる、たまらない蕎麦の味わい。
お、美味しい…
今感じた香りが、そのまま味わいになって、さざ波のごとく口に広がる。
その魅惑的な味に、汁に浸すと言う事も忘れ、
憑かれたかのように、うっとりと蕎麦を手繰り…
ようやく、そっと汁に浸せば、それぞれの出汁が見事に交わった、
雑味なく、しっかりとした味わい。
ちょっと浸し頂けば、蕎麦の風味をそっと支えこれもいい。
が、この蕎麦にはもう、汁などいらない 。
と、じっくり味わいながら食べていたつもりがあっという間。
残った皿には、水一滴残らずの水切れの良さに感動していると、
頃合いも、どんぴちゃりに出された、程良く白濁した熱々蕎麦湯。
汁に注ぎ頂くと、すぅ~っと素直に伸び、汁の美味しさも改めて実感。
感動を沈めるように、余韻に浸りながらこれも全部頂いて…
お勘定をと席を立つと、出てきて下さったご主人が優しい笑顔の素敵な方。
「美味しかった」と思わず、感動を伝えると、
「すべて、こうやって手で挽いているんですよ」
と、奥様がにっこり。ちょこっとお話しなどもさせて頂いて…。
手挽きだけで打たれている、その心意気。
何故もっと早く訪れなかったんだろう、とひしひしと…
ご馳走様でした~
素敵な出会いが、又一つ。
雪ふる寒さも忘れる程に、心に暖かなものがほっこり。
又、絶対に来よう…、しかと心に想いながら、
蕎麦の感動を思い返していたら、あっという間に新宿だ

「そば切り 萬両」
町田市原町田6-17-18
042-720-0147
12:00~14:30 / 17:30~20:00
(日・祝)17:00~19:30
月曜定休
禁煙
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そうなんですっ
素晴らしく美味しいお蕎麦ですよね!
しかも、ただのお新香であっても、この手の加えよう、感動したのが昨日のようです。
私もここは、皆で行って、いろいろ食べてみたいと思っていたところ。
やりましょう~(^^)丿
ツマミも多くひと味凝っているので、一度皆で行って蕎麦前制覇したいですね。
日本酒の品揃えもいい・・・のに・・・でも、でも、でも、
日本酒は一種類しか開栓せず「一本開いたら次」という方式がなんというかかんというか・・・
一考を促したい。
こんな方式を取り入れるなんてご主人は酒飲みではないのかもね。
それにしてはツマミが酒飲み向き過ぎるけど。
そんな不満を忘れさせる蕎麦のクオリティでした!
ずっと前から行きたくていて、手帳にメモしてた時間を書いてしまいました。
訂正しておきます<(_ _)>
ブログに書かれているのは以前の時間帯です!!(^^)
帰りに影響がなければいいんだけど、と冷や冷。
町田には何軒もお蕎麦屋さんがあって、まだまだ行きたいです。でも、ここも又行きたい…
もうちょっと近いといいのになあ、としみじみです(^^;
いや、見た目以上に香り味わいが濃くて、本当に美味しいお蕎麦でした(u_u*)~。
ぜひ!です。
馬肉料理を食べて、〆にお蕎麦、、かしら?(笑)
定休日が同じというのは、つらいですよね~。それで、なかなか行けないお店っていうの、結構あったりします。
いつか、ぜひ、行かれてみて下さい。
三善堂さん!、今度町田に行ったら、絶対に寄ってみます。和菓子大好きなので、この情報うれしいです(^^)。地元の情報ほど、助かるものはないですね。
定期券の向いてる方向に対して
90度向いちゃってるので
最近なかなか行かなくなってしまった
大きい街だからこんなお蕎麦屋さん
あるんだろうなとは思ってましたけど
乾物屋でも有名なはずなので
乾物屋さんの多い通りにあたり
かと、思ったらあんまり知らないゾーンですな
しかし雪は今週の方が大変らしいですね
よりによって平日ですか~
って感じ
又、手碾きそばの美しい事!!!
そば湯も白濁具合が私好みです。
おいしそー。
面白いところにお店が有るなと思っていたんですが、こういうお店でしたか。
日祝の営業時間もいいですね。
直ぐ近くの馬肉料理の柿島屋さんとのハシゴも狙えそう
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