行きたいなー、行きたいなー…と、このところずっと思っていて、
武蔵境の午後からの用事を前に、咄嗟に向かっていた、国分寺。
駅に降り立った瞬間、あの蕎麦の姿が瞼をかすめ、気もそぞろ 。
大丈夫、今日はまだまだ時間も充分…。
と、「お鷹の道」への、ほのぼのとした細い路地を入って行くと、
無人の路地野菜の販売所などが点在する、のどかな風景。
その中を、心ワクワク、てくてくと歩いていき…
「お鷹の道」の道しるべが出たら、もうすぐその先。
ぽっかりと開けた一角に、穏やかにほこっと現れるかわいい建物。
この佇まいも、山中さんのお人柄が滲み出ているよう…
国分寺 「きぬたや」
扉を開くと、すっぽり木で覆われた小さな店内があったかい。
丁度昼時、忙しそうに釜前に立ちながら、にこっと微笑んで下さるご主人に、
そっとご挨拶をして、空いていたカウンターの椅子によじ登る。
一枚板で作られた、ゆったりとしたテーブル席もいいけれど、
真剣な面持ちのご主人の姿を眺められる、この席も、又特等席
この後予定はあるのだけど、美味しいお蕎麦を食べる前だもの、
やっぱり、蕎麦前は頂きたい…
と置かれていた品書きを手にし、中から「醸し人九平次」を。
小さなグラスに半合ほど注がれた九平次は、すっきりとして軽やか。
蕎麦前に頂くのに心地のいい、清らかな味わい。
そっと添えて出してくれたのは、ほかほかの「みそ田楽」
しっかり弾力のある蒟蒻で、ほっこりこれは、美味しいな…。
さらに、こそっと出してくれた「粕漬け」二種。
まだ恋ヶ窪にあった頃から、「きぬたや」の粕漬けが大好きで、
覚えていて下さっているのが、何よりうれしく…
さっくりとして味わい深い、この漬物をゆっくり口に運びながら、
ちょこちょこと、近況などご主人と交わすひと時が、とても楽しい。
お変わりの「磯自慢」を頂き、これも来た時から目に留まった、
「きぬたやの蕎麦を支える、4台の石臼」を、じっくり眺め…
挽き具合、その蕎麦の状態などあれこれとお聞きし、これが又奥深く、
一つ一つ、愛らしい名前がついているのも、山中さんだ
と、程なく出された、「きぬたや」さん名物のお通し「蕎麦の耳」。
熱々の風味ある蕎麦湯の中に、はらりと沈んだ蕎麦の切れ端。
もっちもっちとして、かみ締めるとじわ~っと広がる蕎麦の味。
ああ、これだけでもうれしくなってしまうよう…
お酒はまだ残っていても、この蕎麦の耳で助走がついてしまったよぅ…、
早速、お蕎麦を頂きたい…の言葉に、「もういいの?(笑)」と言われたが(^^;;
今日の蕎麦をお聞きすると、すべて丸抜きで5種打たれているそう。
「少しずつ全部食べてみて」、との言葉に、もっちろん、「是非♪」
ここからは、もう、夢の始まり…、
まず一枚目は、福井在来種、「ひこべえ」挽きの、篩い40の生粉打ち蕎麦。
ほんのりと緑ががかった、繊細ではかない美しい細切り。
手繰りあげると、ふわっと軽やかに広がる穀物の香りに、
口に含むと、どこまでもしなやかで、するりとした滑らかな舌触り。
あっという間に、軽やかにすべり落ち、はかなく喉に消えていく。
まるで、か弱い乙女のような、清らかな蕎麦。
きっと、誰もがこの蕎麦を愛さずにはおれないだろうなあ…
と、続いて二枚目、福井の、これは珍しい南宮地在来種、
それを「まさるくん」で挽いた、篩い32メッシュの生粉打ち蕎麦。
一枚目に比べて、ごくごくわずかだが、太めに断たれた蕎麦には、
透明な蕎麦の粒がびっしりと覆い、その姿に一瞬見とれる。
手繰りあげると、日向を思わせる香りがふわっと漂い、
口に含むと、ミシミシっとしっかりと感じる穀物感。
ああ、蕎麦を食べている…、という素朴な蕎麦の味わいが実に深い。
ああ、これは、美味しいなあ…
ここでちょっと休憩、この二枚の蕎麦についての感想など述べつつ…
三枚目は、福島、会津の桐屋さんから届いた、会津のかおり。
オーストラリアの石臼、モラで挽いた篩い24メッシュの生粉打ち。
あ、これは、又きれいな蕎麦…。
燐として、ぴんと伸びた繊細な細切りの中に、びっしり埋まる蕎麦の粒。
かみ締めると、心地のいい弾力の中に、すぐに感じるぷちぷち感。
なんて軽やかに感じる粒の感触に、弾けるように広がる香ばしさ。
これもいいなあ…
と、続いて4枚目、福井、丸岡の在来種。
これもモラで挽いた、篩い24メッシュの生粉打ち蕎麦。
っと、何っ!この、濃厚な香りっ…
目の前に置かれた瞬間に、ぶわっと立ち込める蕎麦の香りに、
箸を伸ばす前に、もううっとり。
目の覚めるような、鮮やかな緑色した蕎麦は、粒粒で繋がっているかの如く、
口に含むと、もちっとした感触に、口中を掠めていく蕎麦の粒。
もちもち、ぷつぷつ、かみ締める先から、染み出るように広がる濃厚な味わい。
蕎麦という穀物の持つ、たまらないこの味わいに、
もう、何度も何度も唸ってしまう~。
美味しい、美味しい、美味しい…
思わず興奮状態になったところを、鎮め、鎮め…
最後は、北海道の、これもうれいしい、品種牡丹。
まさるくんで挽いた、篩い24メッシュの、つなぎ5分。
ああ、これも美しい…、どこかガラス細工のように透明感のある蕎麦に、
影絵のように映り輝く、さまざまな蕎麦の欠片。
口に含むと、ぷりぷりっとした弾むような腰があり、これが心地いい。
その中で、かすかに感じる、かさりとした欠片の感触。
かみ締めると、香ばしさの後に、甘みがじわ~っと広がり余韻を残し、
最後にふさわしい、落ち着いて淡い夢のような…
この蕎麦を、最後にじっくりと味わい慈しむ 。
ほとんど漬けずとも食べてしまった汁だが、
最後に熱々の、さらりとした蕎麦湯を注ぎ頂くと、
ふっと広がる鰹の香りに、きりっとしてすぅ~っと伸びる汁も美味しい。
「どうでした?」とにこにこおっしゃるご主人と、
余韻をかみ締めながら、感想など述べながら…
同じ蕎麦でも、臼によって変わるし、目立てでも変わるし、
120種類打ってもまだまだなんだものねぇ
と、うれしそうに話すご主人。
「だんだん、前のお店(恋ヶ窪)の頃のように戻しているんですよ」
の言葉に、心が詰まり、じ~ん…。
どうして、こんなに間を空けちゃっていたのかしら、
と、もう、明日にでも又来たくなる心地になりながら…
ご馳走さまでした~
マニアックかもしれない、
でも、やっぱりここは、蕎麦囚われ人の、サンクチュアリだ…

「きぬたや」
国分寺市東元町3-19-34
042-326-7399
11:00~16:00
月曜、第1,3火曜
2010年 5月19日 「6種の蕎麦」食べ比べ
2009年 9月 9日 「天ぷら」に絶品6種の蕎麦
2009年 8月19日 再び訪問、6種の蕎麦を堪能
2009年 6月24日 「『きぬたや」にて、野菜天ぷらにせいろ三種」
移転前のお店
2006年 9月13日 「賛・きぬたや」最後に頂く蕎麦三種
2006年 2月23日 私の為に打ってくれた蕎麦
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今度行かれたら、私の友達っておっしゃってご主人とお話しして下さい♪。
でも、いつか…、のこさんいは、どこかでお会いできそうな気がしています(u_u*)~
福井在来と丸岡在来(だったかな?)頂いてきました~もちろんおいしかったです。
惜しむらくはメガネを忘れたこと、よく見えなかったんですよね。
2階にお客様がいらしたようですが、下には私だけ、気さくそうなご主人だったのに、
恥ずかしくってお話できませんでした。また次回。。
きっと、のこ様だったら、ご主人とのお話しも楽しいと思います(u_u*)~
食べてみたい、、
私も、あのひろひろだけで、お腹いっぱい食べたくなってしまいました。
実に味わい深くて、もちもちで…
私も大好き♪。
大盛り、って、今度頼んでみようかしら(^^)
これまでにも、140種くらいは打たれているようで、もう、聞いているだけでも、うずうずしてしまいました。
是非。
何と言うか、昔の繊細な、美しい蕎麦の味わいが帰ってきた感じがしていましたよ。
>〇ぬきや
それはそうと、
んー、たしかにふるふるさんだったら~(汗)。
この5枚で、一応1.5人分はあったんですけどねぇぇぇ。
今日は、明日は、この天気には、この蕎麦の実には…
と打たれているのをお聞きしていると、もうたまりません。
「こいけ」のご主人にも、又お会いしたい。
私こそ、あと体がいくつか欲しいくらいなんです(^^;
つけて…。^^)
それにしてもあの蕎麦のひろひろはいい
ですよねー。他でやってないのが不思議
なくらいです。
石臼×篩い×繋ぎ=無限のバリエーション
これはもう一期一会・・・の味わいです。
しばらく訪ねてないので、また行きたくなりました。
すんごい美味しそうなお蕎麦ですね。
ココだけの話、先程までお店の名前を誤認していました。
「○ぬきや」さんって・・・・(汗)。
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