今日は電車で、昨日に引き続きの八王子。
所用を済ませたお昼は、さらに研究を重ねているご様子で気になっていた、
随分ご無沙汰してしまった、隣駅のお店へと 。
西八王子から甲州街道を渡った全くの住宅街の中に、
気付かない程そっと置かれた、木の看板。
敷石の敷かれたお庭に入っていくと、すっと下ろされた粋な暖簾。
「自家製粉」ならぬ、「自家製石臼」粗挽き、というのが、ご主人ならでは
西八王子 「自家製石臼粗挽き蕎麦 いっこう」
扉を開き入ると、やさしく日差しが差し込む小さな空間。
すぐに、にこにこっと心ほぐれるような笑顔で迎えて下さる女将さん。
先にお客さんが一人いらっしゃる中、贅沢にも6人がけのテーブルに通され、
そっと出してくださるお茶の器が、又素敵…。
と、美味しくお茶を頂いて、これから頂くお蕎麦の前に、
ちょっと落ち着いて、蕎麦への渇望を掻き立てる蕎麦前をば。
今日も空気が冷たく、手がかじかみ凍えた体には、やはり熱燗 。
「東北泉」の熱燗は、これも素敵なご主人手作りの陶器の器で。
お通しは、青海苔が香ばしいちくわの「磯辺揚げ」。
ぽつりぽつり口に運びながら、程なくご主人が顔を出して下さり、
早速始まる、これが楽しみだった、蕎麦談義 。
お料理を頼むのも忘れて、ご主人の話に聞き入り夢中になっていると…
「私が漬けたのよ~(^^)」と、奥様が出して下さったお漬物。
さっぱりとした赤蕪に、白菜の甘みが広がる美味しいお漬物に、
さらにお話も盛り上がり…
さっと揚げて下さった、「季節野菜の天ぷら」まで。
衣薄く揚げられた、たらの芽にレンコン、モロッコインゲンの天ぷらは、
一つ一つの素材の旨さが引き立ち、どれもが美味しい
この天麩羅にご主人のお話に、お酒ももう一杯頂いて…
そろそろ、念願のお蕎麦を頂こうと、改めてみるお品書き。
粗挽きに、溢れる程の情熱をかけた、既に「マニア」の域に達するご主人。
自家製石臼で挽き打たれた蕎麦は、すべて10メッシュ毎に分布率を管理し、
試行錯誤しながら、水回しを変えて研究しているそう。
これは、どうしても、三種の粗挽きどれも頂きたい
…と、お願いするまでもなく、今日はもうお客さんもいないから、と
「少しづつ盛って作ろうか」と、おっしゃって下さる言葉がとてもうれしい。
そうして出された、陶器に盛られた三つの山。
粗挽きとはいえ、色姿異なる三種三様の蕎麦に、目が釘付け。
まずは、茨城真壁の常陸秋蕎麦で打たれた「蕎薫」との「せいろ」から。
丸抜きを18メッシュで振るった粉で打たれた粗挽き。
繊細に断たれた細切りに、透明な蕎麦の粒がびっしり。
手繰り上げると、芳しい常陸秋蕎麦独特の香ばしい風味が濃厚に広がる。
かみ締めると、しっとりとしてしゃきっとした歯ごたえ。
粒の感覚を感じながらも、滑らかで繊細な上品な食感で、
じわりと広がる香ばしさは、さすがのもの。
18メッシュという超粗挽きで打たれたものでありながら、
これは粗挽き苦手な人でも好まれそうな、気品のある仕上がり。
続いて、山形出羽香りで打たれた「白妙」との「手挽きそば」。
せいろに比べてやや太めの蕎麦は、丸抜き12メッシュという超粗挽き。
今にでも飛び出てくるかのように、ぷつぷつ浮き上がる蕎麦の粒は、
跳ね飛んできそうな程の勢いある、怒涛の蕎麦。
手繰り上げれば、これが又、むせかえるような蕎麦の香り。
ぐわりと広がる、深く濃厚な香ばしさに、思わずうっとりくらくら。
口に含めば、蕎麦の粒が舌の上を駆け回る、まらない快感に満たされ、
その間に、口の中は蕎麦の香ばしい味わいでいっぱいに。
ああ、もう唸ってしまいそう…、たまらな~いっっ
そして、最後に玄ごと挽いた「墨衣」こと「十割そば」。
24メッシュでふるいながら、余分な殻が除かれた蕎麦は、
うっすらとグレーがかったエレガントな姿に、これもびっしりと蕎麦の粒。
しかも、この香りが又強烈 。
まるで熟成させたかのような、だだ茶豆の放つ甘い豆系の香りがぐわ~り。
思わず聞き確認したが、打ちたての蕎麦でこの香りを放つとは…。
と、甘く香ばしいこの香りにしばし心奪われうっとりし、
かみ締めると、ざらりとした蕎麦の欠片が喉元をかすっていく。
広がる味わいも、まるでだだ茶豆のような、甘く香ばしい濃厚な味わい。
これ、この蕎麦、これも美味しい~っ
すっかり汁の存在を忘れ、忘我のごとく手繰ってしまうが…、汁が又旨いっ。
ぐっと広がる力強い鰹の風味が広がる、まろやかな汁で、
このどの蕎麦にも、きちんと伴奏し支える汁。
ユニークな掻き混ぜ棒のついた、濃厚な蕎麦湯をこの汁に注ぎ、
たっぷり頂きながら、込み上げてくるように思い出す一つ一つの蕎麦の余韻。
このひと時が、ああ、、幸せ… 。
お茶目で少年のようなご主人との会話に、
暖かく支える、あったか~な女将さんのもてなしに心温まり、
粗挽き心を多いに満たしてくれた、三種の蕎麦。
ご馳走様でした~
「まだまだ、いろいろ試していきますよー」
とおっしゃるご主人の言葉に、これからも目が離せない。
この楽しさを前にしたら、西八王子までの道のりも近い近い

手打蕎麦処 蕎酔庵
「一紘 -いっこう-」
八王子市日吉町8-16
042-622-0792
11:30~14:30
(夜要予約)17:30~20:30
火曜水曜定休
P2台 禁煙
2009年10月16日 「粗挽き三昧」
2009年 3月 6日「手挽き粗挽きそば」に「かけ」も満喫
2008年 4月20日 「掻き揚げ」、絶品「手挽き蕎麦」
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今回のいっこうさん。
手挽きに、鹿児島の蕎麦(鹿児島在来か、九州秋蕎麦か、でどころが農家さんも分からないという蕎麦らしいのですが)、これが、又凄い香りに、久々に我忘れうっとりしてしまいました。
やはり、今の時期がいいかも、です。
(実はブログに載せてないいっこうさんが2回ほどあるのですが)、もっと行きたいとおもいつつ、本当に、悲しいところです…。
まゆたんさんのブログも、ほのぼのととてもよく伝わってきて…
私も、行けていないお店、参考にさせて頂きます(^^)。
これからも、どうぞ、よろしくです。
やっぱり、いっこうさんは、すごすぎです。
(おかしいくらいに…!)
ぜひ、行かれて見て下さい。
ますます、粗挽きに磨きがかかっていますよ~♪
今頃が 一番蕎麦がおいしくなる時なのですが 幸い 蕎麦屋はすいている。良いタイミングです。
とても近い様に思うけれども
色んな条件で 中々行けないことも ありますね。
矢張り蕎麦は東京周辺、
選択枝が多すぎるのも悩ましい
私もお蕎麦が大好きで、いつもyukaさんのブログと本を参考にお蕎麦屋さん巡りさせていただいてます。
私も茨城の出身なので、yukaさんの大ファンの私は何だかとっても嬉しいです。
ずっとコメントしたかったんですが緊張しちゃって…思い切ってみました。なので今日の記事とあまり関係なくてごめんなさい。
これからもブログ楽しみにしています。
しばらく行ってないので、自分もそろそろ。
こちらの鴨焼き好きなんで。
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