あの時頂いた「手挽き」の粗挽き蕎麦が忘れられず、又是非とも訪れたい…、とずっと思っていた所、
今日、ふとしたきっかけで友人二人と待ち合わせて再訪する事が


あいにくの雨の中、記憶の中の地図が蘇り、たどり着いた念願のお店。
雨にそぶれ、しっとりとしたかわいらしいお庭に、しっかりとした文字の看板が掛けられている。

敷かれた石畳をゆっくりと歩き、入口へと…
西八王子 「手打蕎麦 いっこう」
さりげなく下げられた暖簾をくぐり、カラン~コロン~と鳴る扉を開き店内へ。
平日の昼下がり、しかもしとしとと降り続く冷たい雨の今日。
先客のない静かな店内から、すぐに顔を出されたにこやかな女将さんに迎えられ、真ん中に鎮座する8人がげのゆったりとしたテーブル席に3人で腰を下ろす。
気さくで、そのあったかい笑顔にふうっと親しみ感じてしまう女将さんから、お茶(これがほんっとに美味しいお茶)に、お茶受けの小鉢が出される。
ほっと心安らぐような、切干大根の煮物を頂きながら、うれしい事に、去年訪れた事を覚えていて下さり、すぐに話が盛り上がる。
うれしいなぁ~…
今日は、念願だった、こちらでそば前からゆっくりと頂きたい、と電車で来た私。
まずは温まりたく、「東北泉」を熱燗でお願いする事に。
程なく出された熱燗には、手作りとの「蕗味噌」があてに出される。
独特の苦みに春の息吹を感じさせる蕗味噌がたまらない。
と、お酒を頂き始めたらすぐ、お会いしたいなぁ、と思っていたご主人もに顔を出して下さる。
にこやかで素朴で暖かな、不思議な魅力に溢れたご主人。
蕎麦の話に入ると、止まらないように語って下さるお話に夢中になってしまいながら…
前回、とっても美味しかった「掻き揚げ」を、とまずは注文~。
…・と、
「ちょうど今、陣場の方で摘んできたフキノトウがあるので、それも揚げますね」
と女将さんがおっしゃって下さり、出して下さった「フキノトウとアスパラの天ぷら」。
さっくりカラリと揚げられたフキノトウ。それに甘みが濃いアスパラに大満足。
これを楽しんでいると、程なく念願の、あの、「掻き揚げ」が各々出される。
おおおっっ これはうれしい。
前回頂いた時よりもさらにグレードアップしたような…。
高さ10センチはある、立派な掻き揚げ。
玉ねぎに人参、葱、三つ葉、それにしっかりとした海老のぶつ切りに、厚みのある帆立貝柱がごろごろと埋まった豪華な掻き揚げ。
しかも、エア感のあるふわりとした衣で、いつまでたってもサクッサクの軽やかな掻き揚げ。
油っこさが全くなく、帆立はジューシーで、野菜一つ一つの具材が非常に美味しい。
もうこれだけで、私は大満足~…
と、お酒のお変わりをお願いして満喫していると、
「お酒と一緒にお蕎麦も一枚食べてみよう~♪」
とプロでもあるSさんが提案し、「せいろ」を一枚お願いする事に。
福井大野の蕎麦、丸ヌキを粗挽きで挽いた外二の蕎麦。
丹精に切り揃った蕎麦は、ご主人の作られた陶器の器に盛られて出される。
顔を寄せた途端に立ち込める香ばしい蕎麦の香り。
手繰り上げると、その細切りの蕎麦には、透明な蕎麦の粒々がびっしりと埋め込まれた繊細な粗挽き。
口に含むと、しなやかな腰が心地よく、噛み締め飲み込んだ瞬間、喉元からぐわ~っと上ってくるなんとも言えない濃い風味。
つなぎ感を全く感じさせず、蕎麦の味が後までずっと残る、この風味にしばし酔いしれてしまう。
な、なんて美味しいんだろう…
と、三人で手繰っていたらあっという間。
使う間もなかったが、各々出して下さったもり汁は、並べてみたら…、
これがかわいい~っ
目が付いたご主人手作りの器は、まるで小鳥のよう。
ご主人のおちゃめな遊び心が、垣間見える 。
このお蕎麦で、拍車のかかってしまった我々は、さらにお酒のお変わりをお願いし
(今丁度あるので…と、お勧めして下さった「月の桂」の発砲酒がヤバイくらいに美味しい~っ)、
「出汁巻き玉子」をも。
出来たて熱々の出汁巻き玉子は、ほんのり甘めのジューシーなもの。
さらに、「せいろ」の粉で作った、「蕎麦掻き」。
蕎麦湯に浸された茶巾型の蕎麦掻きは、もっちりとしてとろり。
口の中で転がしていると、又再び香ばしい濃い風味がじわ~っと口いっぱいにに広がってくる。
頂きながら、さらに盛り上がるご主人、女将さん含めての蕎麦談義。
ご主人の手挽きで使っている石臼など見せて頂きながら…、
「京都の味です」と書かれているのが気になり頼んだ、「にしんの昔煮」。
艶々とした鰊は、箸を入れると途端に、ほこほこっとこぼれる身の柔らかさ。
しっとりとして上品な味付けの、それでいてしっかりと味の染みた鰊でこれも旨いっ。
ついでに…「鴨 陶板焼き」までも。
葱にシシトウ、それに輪切りにされ鴨の油で焼かれた茄子が添えてあるのがうれしい。
一切れ頂いた鴨肉は、肉の臭みの全くない、さっくりとしてふわり、それでいて旨みがあり、私も美味しく食べてしまう。
楽しい時間に、気づいたら時はたっぷりと経ち…
そろそろ、肝心のお蕎麦を頂こう♪
残り二つの、丸ヌキ超粗挽きの「手挽きそば」に、玄・丸粗挽きの「十割せいろ」を一枚づつお願いする。
まずは、同じ、福井大野の蕎麦で打たれた「丸ぬきの手挽き蕎麦」が出される。
手作りの器に盛られた蕎麦は、繊細で、芸術品を思わせる美しい姿。
手繰り上げると、透明勘のある丹精な細切りの蕎麦の中にはびっしりと埋め込まれた蕎麦の欠片。
顔を寄せようとする間から立ち込める、香ばしく深い蕎麦の香りにうっとり。
口に含むと、たおやかでしなやかな心地のいい腰加減。
噛み締めると、蕎麦の粒がぷつりと弾けたかのように広がる蕎麦の風味。
ご主人が一回し一回し挽き打たれたそのぬくもりをも感じる蕎麦に、もう言葉もない。
ああ、美味しい~… 、と心から感じ入ってしまう。
続いて出された「十割蕎麦」は、又目を見張るような粗挽き。
常陸秋蕎麦を、殻ごと手挽きし挽きこんだ「玄挽き」の蕎麦。
濃い色の蕎麦には、星が豪華に散り、野趣さあふれた佇まい。
姿の全く異なる蕎麦に見入り、手繰り上げると、香りも又先ほどの蕎麦とは全く違う。
甘みを感じるような深く香ばしい香りに、再びうっとりとしてしまう。
口に含むと、かすかに掠めていくざらつき感。
それを楽しみ噛み締めると、これまた濃い味わいがぐわ~っと広がってくる。
これも美味しい~っ
三人であっという間に食べてしまい、「かけ」を追加で。
程なくして出された「かけそば」は、琥珀の汁に浸された「せいろ」の蕎麦。
まずは、その汁を口に含むと、複雑で奥の深いまろやかでありながら、すっきりすぅ~っと入って行く上品なかけ汁。
お聞きすると、鰹、昆布に加え、鯖節、あご…・など、様々な素材から出汁を引いているとのこと。
これは、美味しい…と、感じながら、中の蕎麦を手繰ると、穀物感豊かな蕎麦が旨い。
もう、取りっこのように、すっかり食べてしまうそれぞれの蕎麦。
我々の様子を楽しそうに見つめていたご主人が、そっと出して下さった蕎麦湯は、しっかりと白濁したポタージュ仕立て。
感想を述べながらこれもたっぷりと頂く、なんとも幸せなひと時に…
今日こうして伺え、すべて感動してしまう蕎麦を頂け、ご主人女将さんと話す機会を持てた事に、感謝の気持ちでいっぱい。
ご馳走様でした~
ご主人のお話も、暖かな笑顔で持て成し下さる奥様も、
もうとてもうれしくて…
又、ぜひ、伺います、とお店を後に。
ああ、なんてなんて、素敵なひと時だったんだろう…
Tさん、Sさん、今日はありがとうございました~♪
*お品書き
せいろ 750円、10割せいろ 850円、手碾きせいろ 950円(大盛250円)、ぶっかけ 1,000円、掻き揚げ天せいろ、鴨せいろ 1,200円、かけ 750円、にしんそば、掻き揚げ天そば 1,200円、鴨南蛮そば 1,400円、
焼き味噌 500円、鴨陶板焼き 700円、にしん昔煮 500円、野菜掻き揚げ天ぷら 250円、掻き揚げ天ぷら 500円、出し巻き玉子 600円、そばがき 600円
東北泉、穀良都、澤姫、竹鶴 600円~
手打蕎麦処 蕎酔庵
「一紘 -いっこう-」
八王子市日吉町8-16
042-622-0792
11:30~14:30
(夜要予約)17:30~20:30
火曜水曜定休
P2台 禁煙
関連日記
2008年 4月20日 「掻き揚げ」、絶品「手挽き蕎麦」
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そうそう、こちらぼぽさんのところからも比較的近いですよね♪
本当にとても美味しい蕎麦です。
アスパラなどなどは、その日次第なのでわからないですが…
でも、この掻き揚げはいいですよん(^^)。
Pは1台ですが、ぜひぜひ。
お蕎麦のルックスもかなりのインパクトですが、ひさしくおいしいてんぷらを
頂いてないので、アスパラとかすっごい気になります! 「今とってきた蕗」
とか、いいですねー。近所にこんなお店があったら、その日の収穫?に
合わせて飲みに行きたいですね~笑。
最近、カラオケがらみで福井にお友達もできたので、話の種に福井産の
お蕎麦というのも気になりますし♪♪
すてきな情報ありがとうございました♪
それはそうと、パン屋さんを♪?
(パンも大好きなんです(^^))
「もち月」さんは、いいですよ。私もオススメします。後、その近くの「一葉」さんも、私は好きでした。
すごい、なかなかわかりにくい場所ですが、とても素敵なお店です。
この掻き揚げすごいですよね(^^)。
蕎麦もすべておいしく、女将さん、ご主人もとても暖かなお方です。
ぜjひ♪
そうそう、楽食もおいしかったです。
あの手挽きの蕎麦は本当によかったです。
というか、三枚ともそれぞれの魅力があって、どれも甲乙つけがたかったのですが・・・。
太野さんともお会いできたとのこと、楽しいひと時になったんだろうな、と思います。
お元気でしたでしょうか…。
そばはもちろんのこと、発泡日本酒にかき揚げタワー、
うまそう。ご紹介ありがとうございました。
行ってみます。
評論家の太野さんが取材にいらっしゃってお話することができました。
あ、そうそう、鴨は一切れしか食べてないです。3人で行ったのでいろいろと食べられるのがうれしいところでした。
蕎麦もすべて3人で分けっこして、取り分けながらだから、んー、そんなに食べたかしら~?(食べましたね…^^;)
あ、ちっちゃいですよ~(^^)
鴨の陶板焼きの後、「そろそろ、肝心のお蕎麦を頂こう♪」で、「えっ!まだ食べるの!?」とひとり言つっこみ。
その後「かけそば」の写真を見た途端、ノックアウト!されました。
私も、かなり食べる方ですが・・・。yuka様って、小柄なイメージがあるのですが、大きいのかしら?
お料理にお酒、
そして素晴らしい手挽きの蕎麦。
それに温か~い女将さんの笑顔。
行かねば!です(^^)。
あの、かき揚げお玉(?)、私も欲しくなっちゃったんです(^^)。
蕎麦はもちろん、
あの掻き揚げは、おいっしぃぃぃですよね~♪
ご主人のお話は楽しいですよね~。
私も又、すぐにでも訪れたくなってしまいます。
大野の手挽き、長野でですね(^^)。
本当に濃くてうっとりとする香りに風味、心から満喫してしまいました。
ぜひぜひ(^^)
石臼を持ってきて下さり、説明して下さったりと…
頭の中に粗汁さんがくっきり浮かんできていたんですよ(^^)。
福井のヌキの手挽き粗挽き。
すばらしい蕎麦でした。ご主人も、本当に蕎麦に熱心な方で…、それでいてほのぼのとした素敵な方です。
PS、三つ葉と柚子のヌキ(^^;;;
この場合は、「別皿で」と言った方がいいんでしょうね~。
ぬきの手挽き、玄蕎麦の手挽き十割、それに「せいろ」すべてが素晴らしい蕎麦でした。
「かけ」も良かったですよ~~。
ここは、梯子を考えず、じっくり楽しんできて頂きたいです。
きゃぁぁ、魅力的すぎます。
蕗味噌、天ぷら、かきあげ、それだけでも充分なのにどんどん続く一品料理に酒に蕎麦!
これは、八王子まで行きますよ。
目の保養になりました。
が、
寝る前に訪れて後悔もしています(笑
おなかすいた。。。
蕎麦まで二倍にして頂有難う御座います。
それに、掻き揚げの大きさ(高さ)にビックリ!
ご主人にお手製の揚げる網?まで見せて頂きました。すげー、の一言。
また、食べに行きます!
昨日おみえになりましたと、女将さん。
八王子にもソバリエの方がいらっしゃるんですね。と、ご主人も出てきていろいろお話をさせて頂きました。
増えてきましたね。
第一期手挽きブームかも知れないですね。
大野産は僕もあるところで
手挽きのもの食べてきましたが、
香りに強さがあって美味しかったです。
こちらもなかなか粗挽き、よさそうですね。
玄が上手く挽けそうな石臼、
理想ととする 抜き実の粗挽き、
一番好きな 福井の蕎麦の実、
すのこの代わりになる 溝をつけた蕎麦の皿、
ほんを読みながら 蕎麦に浸りたい。
後は 打ち方を教えてもらうだけ・・
ps かけの柚子と三つ葉は 食べる人が
自由に入れる選択制だと 嬉しい。
・・・行く時は 柚子ぬきで頼もう
柚子と三つ葉のつゆだけが来たりして(汗)
柴崎さん見てくれてるかな?
行く前からファンです
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