
「美味しい蕎麦だったね~♪」
と「ふく田」さんを出て車に乗り込み、次の目的地を島田にある蕎麦屋、と告げると、
「今食べてきたのに、なんで、もう一軒行くの?」
と、いう彼を、
「どうしても、どうしても行きたいの・・・」
と何とか説得し、どうにか吉田ICで降りて向かう。
分かりにくい住宅街にひっそりとあるのかとばかり思っていたお店は、ICから降りた通りに、あまりにもさりげなく看板が掛けられていてちょっと驚く。
こ、ここが・・・!
お店に入り、お店の前にある駐車場へと入って目にしたお店は・・・、
な、なんて素敵なんだろう~・・・


一瞬通り過ぎてしまいそうな程に、あまりにもさりげなく通りに面して佇むお店。
まるでそこだけ違う空気が流れているかのよう。。

車から降り、入り口へと向かうと、
ちり~ん、ちり~ん・・・ちりちり~ん・・・
と、なんとも涼しげな風鈴の音に出迎えられる。
肌を優しく撫でる、さらさらとした自然な風が流れていく、静かな佇まい。。
島田 「藪蕎麦 宮本」
すっと落とされた暖簾を潜り、いくつか敷かれた石畳を歩き、入り口へ。
扉を開くと、夏の炎天下でありながら、ひんやりと沈んだ空気が流れる、土間作りのちょっとした間が目の前に広がる。
小さなベンチが置かれていて、ここは待合室でもある様子だが、運良く待っているお客さんはいない。
入っていくとすぐに奥様が顔を出して下さり、二人であることを告げると、
「こちらにどうぞ~」
と、優しく微笑んで通して下さる。
もう、この風情だけでうっとりとしながら、靴を脱ぎ、通された座敷の席へ。
年月を積み重ねたような、しっとりとした畳の部屋。
古い柱に、所々に置かれた懐かしさを覚える年代ものの古箪笥。
時が止まったかのような店内は、鴨居が置かれ、全部で5卓くらいだろうか・・・、
どの席もゆったりと配され、相席させない配慮にお店の気持ちが伝わってくる。
座った途端、既に憩ってしまいそうになっているところに・・・、
お品書きといっしょにお水が出される。
何気なく口にしたこの、ただの水が!
なんて、美味しいんだろう~っ
どこまでも清らかで柔らかく、
まるで美酒を口にしているような感覚にまで。。
と、感動しながら、置かれた品書きをゆっくりと開くと、達筆な書で書かれたお品書き。
本当だったら、この空間・・・
何かをちょっと頂き、一献傾けゆっくりと浸りたいところだが・・・
車なので、ぐうっとがまんし、「ざるそば」と、まだ残っているとの「限定 手挽きそば」を、各々一枚ずつお願いする。
(二枚も食べられるのかよっっ、という彼を説得するのが大変~・・・)
待つ間、ゆっくりと店内を見渡すと、静かに時を刻む柱時計の横には、季節の品書きも・・・。
「冷かけ」、この文字に心が惹かれかけていると、目の前に「ざるそば」が置かれる。
笊にささやかに盛られた蕎麦は、なんとも繊細にキラキラと輝く細切りの蕎麦。
均一な微粉で打たれた蕎麦は、エッジの鋭い、キリリとしとした上品な面持ち。
おずおずと手繰り寄せると、強くはない爽やかな蕎麦の香りが軽やかに感じられる。
口に含むと、すぐに感じるしなやかな感覚。
上品で繊細、それが口の中でまどろみ、ゆっくりと静かに蕎麦の風味を残していく。
あっという間に食べてしまった蕎麦に、お、美味しい・・・、と余韻に浸っていると・・・
タイミングよく出される、「手挽き蕎麦」。
目の前に置かれた瞬間、この佇まいに、一瞬目を見張る。
な、なんて・・・、美しいんだろうか・・・っ!
透き通るかのようなグレーの蕎麦には、びっしりと埋め込まれた蕎麦の欠片。
繊細なガラス細工を思わせる、はかないような美しさを思わせる。
手繰り寄せると、穀物の香ばしい香りがしっかりと漂う。
繊細で清々しく、口に含んだ途端にはらりと解け、そのまま体に染み渡っていくような感覚を覚える、たまらない魅力。
人の手で作り上げたものとは思えないような、可憐で洗練された美しさを感じてしまう。
汁は、さすが藪。
かなりしっかりと濃い目の汁だが、出汁のしっかりと感じる濃い汁に蕎麦をほんのちょっと浸すと、ぐんっと蕎麦の風味が強く感じる、素晴らしさ。
粗挽きや田舎蕎麦を苦手とする彼さえも、「旨い!」と思わずつぶやいている言葉を聞きながら、私もこの蕎麦に、もう、うっとり・・・。
頃合を見て、蕎麦湯を出して下さった奥様が、
「これは、主人が手で挽いているお蕎麦なんですよ」
と優しくおっしゃって下さり、さらさらとした蕎麦湯を注ぎ、頂く汁が本当に美味しい。
始終、そっと水を継さして下さる、細やかな持て成しもうれしく、美味しかった・・・と興奮止まぬような心地で告げると、
「そうですか・・・ 」
と、優しく上品に微笑んでくださる。
ああ・・
ここは、又是非とも訪れたい。
できれば、車でなく訪れ、この空間をたっぷりと堪能しながら、最後にお蕎麦を頂に・・・
と、しかと胸に思いながら、丁寧に対応してくださる女将さんにお勘定を。
ご馳走さまでした~・・
長年、望んでいた念願のお店。
思っていたよりもずっとずっと素敵なお店に、お店を後にしながらもしばらくぼおっと・・・
ああ、よかったなぁ・・・。
*お品書き
ざる 800円、手挽きそば 800円、各汁なし 600円、ごまだれ 1,100円、おろし 1,100円、山かけ、とろろ 2,300円、花まき 1,200円、にしんそば 1,800円、天ぷら 2,000円など
板わさ 800円、天だね 1,600円、穴子 1,500円、にしん棒 1,500円、天抜き 1,700円、合い焼き 1,700円など
酒 660円、冷酒 800円
「藪蕎麦 宮本」
静岡県島田市船木253-7
0547-38-2533
11:30~15:00
月曜定休 Pあり
禁煙
名古屋へと向かう、浜名湖さえも、幻想的で・・・。
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何よりのお言葉です…(u_u*)~。
私も女将さんの前で、なのですが…・?
ちょっと確認し、考慮してみます。
ありがとうございました。
絶対、こちらは再訪しようと思っているので、その時は、ぜひとも食べてみます♪
冷かけ、これも気になって・・・
掻揚げは召し上がらなかったんですね。
すごくわかりやすくて美しいブログですね♪
これから、参考にさせて頂きます!
「ぐらの」さん、行ってみたいと思っているお店のひとつです。(ここの、天せいろを食べてみたい・・・と)。
ぜひ、機会を作って行ってみますね。
これからも・・
よろしくお願い致します。
同じお名前なんて、なんだかうれしいです♪
これからもよろしくお願い致します。
お近くにご友人がいらっしゃるなんて・・・
う、う、う、羨ましすぎです!
私も欲しい~。。
店内撮影禁止・・?だったんですか?
表示はなかったので、女将さんの目の前で撮っていましたが、何もおっしゃられませんでしたよ~。
同じく蕎麦好きのyukaです。(笑)
宮本さんは友人宅の近所なので、『友人宅を訪れる=宮本さん』になっています。
相変わらずの水水しい蕎麦、新蕎麦になったら1番に行きたい気分・・・
ところで気になったのですが、宮本さんは店内撮影禁止だたと記憶しています。
解禁になったのですか?
とてもうれしいです。
そうですか・・、過去に。。
ぜひ、ソバツユさんも、うかがってみて欲しいです。
こんな私の表現なんかでは、ぜんぜん足りないくらいです。
でも・・
口福、でした・・・(u_u*)~
実に美しいお蕎麦を拝見出来て眼福です♪
yukaさん口福でしたね♪
はい、温泉もたっぷり♪
こちらの蕎麦、三手繰り程で食べてしまえちゃうくらいのものなんですが、でも、本当に素晴らしいものでした。
この後には温泉の話もあるのかな。
しかし、コチラの手挽き蕎麦はキレイですねぇ。
スルッといけちゃいそうです。
私も、ちょいっと思ったりして~。
やっぱり、花まきさんは、花巻が好きなんですね♪
もう、大感激でした。
手挽きには、心奪われてしまいましたです。
でも、今度は、蕎麦前も楽しみたい・・・。
花まきも、ぜひ、食べてみますね。
といいつつ、夏季限定の冷かけ、とってーも気になってしまっていました(^^)
おけいさんも、ぜひぜひ(^^)。
いやあ、何も知らないヒトなので、ほんっと苦労しました~(^^;;
やれやれ、です。
本当によかったです。
でも、そうなんです、そうなんです、
蕎麦前をがまんするのが、とてもつらかったです・・・。
いずれ、又(^^)。
っで、もって
「花まき」
っは、いかに・・
こちらは私も好きなお店なので、yukaさんに気に入ってもらえたようで、なんだか嬉しいです。(yukaさんの彼にも)。
「花巻」も美味しいですよ。
次回は是非!
すごく憧れているお蕎麦屋さんの一つです。
ほんときれいなお蕎麦ですよね。
透き通っていて、芸術品のよう。
初め躊躇していた、yukaさんの『彼』も喜んでくれたのが、なんだか嬉しいですね♪
流石にその蕎麦も美味しそうですね(^^)
店も風情のある佇まい~ここで蕎麦前なしでは厳しいですね(^^;
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