と、五日市のお蕎麦屋さんから教えてもらったのは、まだ春の頃。
それからずっと楽しみに待っていて・・・。
昨日、再び連絡があり、8月5日にいよいよオープンしたとの事。
これはもう、じっとしていられない・・・

午前中の花活けの仕事を済ませると、ワクワクする気持ちで電車に乗り込む。
東村山駅西口。
東口の商店の賑わう雰囲気とはがらりと赴きの異なる、昔ながらの風景の残る街並み。駅横を走る通りを向かい、「大善院→」の看板の置かれた細い路地を入ると、ふっと懐かしいような田舎の風景が広がる。
道を横切る小さな川には、草が生い茂り、それにかかった小さな橋。
のんびりした気持ちになりながら、この橋を渡り、見上げた先に・・・、
ん?あの、黒塀の建物は・・・


黒木の塀に囲まれた、しっとりとした古民家。それに、そよそよと靡く、真っ白な暖簾。
こ、ここだ・・・


東村山 「土家」
この風景の中に、この佇まい。もうこれだけで、心惹かれてしまう・・・



ゆったりと流れる小川の横に佇む、一見家屋のお店。
年代を感じる扉を、はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと引き店内へ・・・。
扉の後ろは、ちょっとした土間があり、涼しげに風船蔓が置かれてる。
その先の店内へと足を踏み入れた途端、思わず見入ってしまう。
日光を遮りしっとりとした陰が落とされた、肌にひやりとする心地のいい空気。
高い天井には、手作りのような梁が張られ、全体を黒木で統一した店内。
どこかの野の里の一軒家に訪れたかのような、年月が積み重なったぬくもりのようなものも感じさせ、しばし佇み見とれてしまう。
なんて、なんて素敵な空間~・・・
うっとりとしながら、ゆったり広々と配された板間の店内へ入って行くと、奥には骨董の電柱の下げられたテーブルの置かれた一室。
昭和初期を思わせる、落ち着いた部屋の窓は大きく開かれ、横の小川のせせらぎが一望できる。
この穏やかな景色を見ていると、ここが東京である事を忘れてしまいそう。
すっかり心奪われていると、まだお若そうな素敵なご主人が顔を出して下さり、入ってすぐの間にあるカウンター席に通される。
使い勝手の良さそうな、ゆったりとした厨房に面して、すっと伸びたカウンター。
腰を下ろすと、時折入ってくる風を心地よく感じ、すぐに憩ってしまいそう。
これは、もう、頂かない手はないでしょう~・・・
と、出して下さった品書きから、三重のお酒「瀧自慢」をお願いする。
すっきりとして、フルーティな香りのさらりとしたお酒には、じっくりと炊かれた煮昆布が充てに出される。
厨房に立つご主人は、とても気さくな方で、頂きながらあれこれとお話などまで。
立川無庵さんで修行なさった後、6年程陶芸や野菜作りなどしてきて、今回地元である東村山でお店を開くことになったそう。
「移築したんですか?」
と、この建物をお聞きすると、以前からこの場所にあった廃屋を、生かせるところはそのまま生かしながら、手作りで改築して作り上げたとのこと。
「まだオープンしたてなので、品書きも少ないのですが、徐々に増やして行くつもりで・・・。もちろん、お酒もいろいろ選んでいるところです。」
と、シンプルな品書きを横にし、おっしゃる言葉にますます楽しみになってしまう。
さらに、話の中から、ご主人も漬物が好きで、すべて手作りで作っているというのをお聞きし、それでは早速と、頂いてみることに。
出された漬物は、手作りの陶器のお皿に見目も美しく盛り付けられて。
小茄子の醤油漬け、山葵茎と茗荷の甘酢漬け、胡瓜、長芋の浅漬け・・・。
どれも上品で程よく漬かった、とっても美味しいお漬物。
このお漬物にお酒を頂きながら、ご主人との会話が楽しく、時の経つのも忘れてしまいそう。さらに「白岳仙」も半合お変わりし、ゆるゆると過ぎていく心地のいいひと時間。
そして、十分満喫したところで、いよいよ楽しみにしていたお蕎麦をお願いすることに。
「今、自分がやるとしたら、手挽きだろうと思って」
と、朝から石臼でごろごろと、すべて手挽きで挽いているそう。
この言葉に、さらに期待が高まっまっていると・・・
まずは、これもご主人の手作りであろう、汁の入った片口に猪口、薬味の葱に山葵が置かれる。
鰹と昆布で取ったという汁は、鰹の香り豊かなすっきりとした辛口のまろやかな汁。雑味なく、すう~っと広がる汁で美味しい。
そして・・・
「まだまだ、自分の思っている蕎麦とは、ちょっと違うんですが・・・」
などと謙虚におっしゃりながら出して下さった蕎麦を見て、一瞬唾を飲む。
な、なんという粗挽き!
びっしりと覆う蕎麦の欠片に、野趣溢れた挽きぐるみの蕎麦。
手繰り上げると、透明感のある細切りの蕎麦からは、香ばしい穀物の香りが豊かに漂う。
茨城の蕎麦、7パーセントの繋ぎで打ったとのこと。
口に含むと、まず感じる、ざらりとした心地のいい蕎麦の欠片が掠める感触。噛み締めると、もちもちとした腰があり、強烈ではないが、次第に蕎麦の風味が漂ってくる。これは美味しい
手挽きならではの様々な欠片が感じさせるこのざらつき、温もりを感じる歯ごたえ、これがたまらなくするすると手繰り続けてしまう。
何よりも、この久しぶりに目を見張るような、粗挽きの蕎麦に出会えたことが、うれしくてたまらない。
非常に満足な心地で食べ終え、最後にはやさしく白濁した蕎麦湯を注ぎいれ、余韻を噛み締める。
蕎麦が一番よく分かるのは、手挽きだから・・・
と、これからも出来る限り、手挽きでやっていくとのお話に、まだまだ未知なる可能性をたくさん秘めた物をしっかりと感じ、さらに期待し楽しみになってくる。
東村山に現れた、隠しておきたいような素敵なお店。なんてうれしい 。
ご主人とのお話もとても楽しく、又、是非訪れようと心にしかと思う。
趣溢れた佇まいに、現実を忘れさせてくれるような空間。美味しいお蕎麦に、素敵なご主人・・・
ご馳走さまでした~
ほっと心に暖かいものを感じながら、幸せな心地に包まれ駅まで・・・。
*お品書き
粗挽き田舎蕎麦 850円、釜あげ蕎麦 900円、辛味大根おろし蕎麦 900円
そば豆腐 680円、そばがき 860円、つけもの 630円、旬の野菜の炊き合わせ 730円、蕎麦懐石(要予約)3,500円~
「土家」
東村山市野口町4-18-1
042-392-9457
11:30~14:00 / 17:30~20:30
水曜定休 禁煙
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素敵でしょう~。
最近、予約で混んでいるようですが、行けてよかったです(^^)。
ご主人、お元気でした?
ああ、又行きたいな~♪
ブログ見てきました!と伝えると・・
すかさず「yukaさんのですか?]
ですって!
最高に満足しちゃいましたー!
本当に有難う御座います♪
私も、この手の建物、雰囲気にめっぽう弱くて・・・。
もう、どっぷり憩ってしまいました。
まだ、始められて間もないのではありますが、蕎麦もとてもよかったです!
又、ご主人もいい感じで・・。
(私のように)混んでいない時に、の~んびり、風を感じながら、楽しんでもらえたらいいな・・・、と思います。
もう、味なんか二の次で、とにかく嬉しくなってしまいます。
蕎麦の姿も、お店の雰囲気によく合っていて、大変結構ですね。
長野でも自転車、ゲットしたんですかっっ?
粗挽き号?
ってことは・・・
水玉??????
でも、とてもとてもうれしいお店ができました♪
地元出身のお方なので、
>月の菖蒲、7月のハス、9月の曼珠沙華
辺りは、ご存知の事と思いますよ~(^^)
ま、お一人なので、その辺りが難しいかもしれませんね。
今回の京都は、指を加えて読ませて頂いていた次第です。
それはそうと・・・
うれしいお店ができました。
今後、ますます、期待を寄せている私です(^^)
こういうの凄い好きです。
もう少し涼しくなったら、長野から持ってきた
『挽ぐるみ 1号』(自転車)で行ってみよう。
まだまだ、お品とかは、少な目の様なので
もう少し落ち着いたら伺ってみたいと思います。
ただ、この場所は、東村山駅から
北山公園へ向かう通り道だと思うので、
6月の菖蒲、7月のハス、9月の曼珠沙華を見に
押し寄せるお客さんを捌くのが課題になりそうですね。
雰囲気がどことなく・・・、
素敵なお店に仕上がっていました。
まだ開店して3週間、これからがますます楽しみなお店です(^^
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