がらがらがら、と引き戸を開くと、
うんと照明を落とした、しっぽりとした暗がりに、
肌を撫でる、古民家ならではの柔らかな空気。



「こちらにどうぞ」、
迎えてくれたのは、久しぶりにお会いする、ご主人の金子さん 。
ちょっとドキドキ、カウンターの椅子を引き、
腰を下ろせば、ずらりと貼られたお酒の銘柄。

こんなのを目の前で見ていたら…、
前回は、ぐっと我慢したんだし、
今日は、ちょっとだけ蕎麦前も 。




出して下さった、お酒のリストをゆっくり眺め…、

「四季の味」の、「栗駒山」特・純・辛口　ササニシキ
を半合に…




充ては、軽めにっと、



「佃煮の三点盛り」（500円）

コリコリっと歯ごたえの残る切り昆布に、
さっと炊かれた、しっとりとした海苔、



じわっと出汁が染み出す、立派などんこ椎茸…

濃厚な甘辛の、いわゆる佃煮、かと思ったら、
どれもが、上品にすっきりとした味わいで、
素材の味わいを残し、思った以上の素晴らしさ 。

こ、これは、なんて素敵な酒の充て 。

ついつい、「村邑」をお替りし、
雨の昼下がり、静かに流れるＪＡＺZに身をゆだね、
うす玻璃グラスで頂くお酒、美味しいなあ…

心地よく憩っていると…、
「あれ、新メニューなんですよ」
と、ダンディなご主人がにっこり。



指をさした壁には、
「合鴨ロースの脂身をネギと一緒に煮込んだ温かいつけ汁」との、
「脂（合鴨）せいろ」。

これはいい、鴨の脂で炒めた葱は絶品。
肌寒い今日、まさにうってつけ、かな～り迷ったけども…



久しぶりだし、やっぱり「よしむら」の、「吉祥寺」を、
美味しいもり汁で食べたい 。



しかもせっかくのランチ時、
前回は、「親子丼」だったので…、
ランチの、「天丼セット」（1,150円）を注文～。



蒸篭に盛られた蕎麦は、
ぽつぽつと蕎麦の欠片が混じる、色白繊細な細切り。



すうっと過る香りを感じ、手繰れば、
はんなりきりりっとした、独特の歯ごたえ。
ふっと落ちる喉越しに、ふわ～と甘みが口に広がる。

これこれ、このお蕎麦 。

鰹出汁薫る、まろやかなもり汁が、この蕎麦にぴたり。
心地良くするすると手繰り、



頃見てそっと置かれた蕎麦湯は、さらさら熱々。
注げば、すぅ～と伸びる、もり汁が美味しく、
何度も注ぎ注ぎ、たっぷりと頂いて…



「天丼」のご飯は、とても薄盛り。
その上に、海老に茄子、シシトウが、衣薄くさくっ。
さっとかかった、丼汁も実に美味 。



添えられた、ほうれん草のお味噌汁も、
何気ないようで、出汁がいい。



ほおっと食べ終えた頃合いに、
すっと出された、オレンジの甘味を頂いて…

ご馳走様でした～

蕎麦に天丼はもちろん、
初めて頂いた「佃煮」に、「よしむら」さんの真価を垣間見て…
やっぱりここは、蕎麦前をしたいお店だなあ 。

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