手足はもちろん、すっかり冷え切った体に、
暖かく、入っただけでうっとりする心地よい店内に心身共々癒されて、
笑顔で迎えて下さる、美しい奥様の応対に途端にうれしくなってしまう。



用意して下さっていたテーブルに腰を下ろし…
今日も頂くのは、すずきさんではこれ、の「蕎麦三昧」（1,500円） 。



それには蕎麦前、と早速、「飲み物」の品書きを頂いて、
やっぱりまずは、熱燗を頂きたい。



…と、お願いした「影虎」の熱燗は、備前かしら、
金の絵付けのされた、格調感じる素敵な陶器の器にお猪口。



口にした途端に、ほおおおと、声が出そうな熱燗に感じいれば、
程なく出された、「お通しです」の品に、途端にうれしくなってしまう。



私の好み、甘めのしっとりとした出汁巻き玉子に、
脂がじわりと乗った、これが素晴らしく美味しい「鰤の照り焼き」。
ん～ん、これに熱燗が美味しすぎる 。



と、じっくりじっくり味わっていると、
続いて出されたのは、「蕎麦三昧」に付く、「蕎麦豆腐」。

とろりとしてまったり、蕎麦の風味にほんのり胡麻の甘みが加わり、
この二品だけでも満喫してしまう程の、美味しい二品 。



しばし、ゆっくりとお酒で味わっていると…
「熱いところで是非」と出された、「山芋と竹輪の蒸しもの」。



味わいしっかりとしたべっ甲餡に、生姜が天盛りされた蒸しものは、
スプンで掬って見れば、とろ～りとしてざくっとした快い口当たり。
山芋の滋味なる風味に竹輪の旨みが交わり、生姜がキリッとアクセントになり、
ん～、これは美味し～い

食べ始めたら停める事が出来ず、すっかり夢中になって頂いて…



頃合いもよく出されたのは、「さつま芋のポテサラ」。
微塵切りの玉ねぎのしゃきしゃき感が心地よく、
さっとかけられたウスターソースに、優しい薩摩の甘みがとても良く合う。

じゃが芋のポテサラもよかったけれど、これは美味しい 。
と、食べてしまうのが惜しい心地で、ゆっくりと味わいながら、
これらのお料理に、お酒もお代り。



すっかり体も暖まったので、「黒帯」悠々を冷やで注文。
出された、硝子の猪口が又美しく、この猪口で頂くお酒は一層美味しい。



…と、これも又意表を突いた逸品。
何てうれしい、「蕎麦三昧」の今日の「そばがき」は、鴨汁仕立て。



まずは汁を口にすれば、
あああああ、これはたまらな～い

上品な鴨の出汁がじんわりと染み、
この汁の旨さに、すっかり浸ってしまう幸せの境地。



汁に唸り、そばがきに箸を入れれば、信じられない程の柔らかさ。
とろとろ～としながら、そこにあるのは、ざっくざっくの粗い蕎麦粒。

この鴨汁に浸っていて尚、途端にぐわっと広がる濃厚な蕎麦の味。
口の中で、ぷるぷると転がる蕎麦粒の感触がたまらなく、
飲み込めば、その後で芳香が再び込み上げてくる。

何て贅沢な蕎麦がきかしら、とすっかり心奪われて…。



と汁もすべて飲みほし、余韻に浸っていれば、
すっと出して下さった、お酒にたまらない「このわた」。



そして、いよいよ、「蕎麦三昧」に付く蕎麦の一つ、
お目当ての「トマトとチーズの温蕎麦」が 。



かなり粗めに惹かれた、珍しい平打ちの蕎麦。
その前に、まずは汁をすすれば…

こっ、これは、美味し～いっ

温められたトマトの柔らかな酸味に甘みが染み、
そこにそっと寄り添うチーズのマイルドテイスト。
ベースは和出汁なのだろう、優しくて柔らかくて、とにかく美味しい。



…と、中の蕎麦を手繰れば、、もっちりとした歯ごたえがとても楽しい。
平打ちとは言え、きしめんとは全く違う。
どちらかと言えば、パスタに近い、この感覚。
噛みしめれば、しみじみとした蕎麦の味わいがあり、これは美味しい

斬新でありながら、きちんと蕎麦を食べさせる、素晴らしいアイデア蕎麦、
と、感心してたらあっという間に、汁まで完食～。



しみじみと余韻に浸っている間に、薬味に猪口が置かれ、
二つ目の蕎麦は「もり」、茨城の「十割蕎麦」が続いて出される。



置かれた途端、ぐわーっと上ってくる、濃厚強烈な香りに、
手繰る手が止まり、思わず目が見開いてしまう。
な、なんて、濃厚、私のまたたび、この芳しき蕎麦の香り 。



手繰り口にすれば、繊細な細切りでありながら、しっかりとした歯ごたえ。
噛みしめると…、うわっ、この味の濃さ、これは悩殺もの

噛みしめた途端に、じわ～っ、
飲み込んだ後に、さらにぐわぐわ～っ、
いいえぐみを含んだ、蕎麦独特の濃厚な味わいに、我を忘れてしまいそう 。

この季節に来ることが無かったからだろうか、
この蕎麦の香りに味は、兎に角すごい…。
と、後は無言で、夢中で手繰りながら、忘我の果て。



さらりとした蕎麦湯、これが又しみじみと美味しくて…



ゆっくりと味わっていると、これが又うれしい、最後のデザート。
奥様お手製の「マンゴーゼリー」。

今日の蕎麦の、格別の味わいを反芻しながら、これも美味しく頂いて…

ご馳走様でした～

今日もしみじみ、すゞ木さんお素晴らしさに感じ入り、
感動しながら席を立てば、
きりっとお二人揃って挨拶して下さる、その姿さえが美しい絵のよう。

季節毎に訪れたい、としみじみと…。
次は、どんなサプライズがあるかしら～。

よかった…、ワクチンに勝ったんだ…
今日は、何事もなかったかのように、すっかり元気になったりん 。

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