懐かしく思いながら、扉を開き入ると、ふっと照明の落とされた柔らかな空気。
空いていた奥のテーブルに腰を下ろし、温かなお茶を口にして、
置かれている品書きに手を伸ばそうとしたら…



「年越そばご予約承ります」の文字。
急に年の瀬を感じ、一年の過ぎゆく早さをしみじみと実感…。



何かちょっと寂しい心地になるも、気を取り直し品書きを開く。
これこれ、お目当ての「摺りたての山芋をそば汁でのばしました」の「つけとろ」。

「にはち」さんの「つけとろ」は、独特で一度食べてからすっかり大ファン 。
早速これをお願いすると…



程なく、たっぷりのつけ汁の添えられたお盆が置かれる。



角がきりっと立つ、繊細で凛々しく、ノーブルな風貌。
顔を寄せると、丸みを帯びた香ばしい香りがふわり豊かに広がり、



口に含むと、しなやかながらしっかりとした歯ごたえがあり心地いい。
噛みしめると、甘みのある豊穣な蕎麦の味わいがじわりじわり。
ああ、「にはち」さんのお蕎麦は、いつもブレがなく、美味しいなあ…

と、しばしそのままの蕎麦を楽しんで、
いよいよ楽しみにしていた「つけとろ」を。



山芋にもり汁、それに玉子が加わり、きめ細かく丁寧に溶かれたこのつけとろ。



これに蕎麦を浸し頂くと、さらりとしてまったり、優しいとろみが蕎麦に絡まり、
山芋の風味に、玉子のまろやさかが蕎麦が、絶妙にぴたりと嵌まる。

ああ、やっぱりこれは美味し～いっ

あとは、もう夢中、ずずずっ、ずずずっと、
手繰り口に含む手間さえ待ち切れぬように、あっと言う間に食べてしまう。



頃合い見て出される、立派な鉄瓶に入ったとろりとした蕎麦湯を注げば、
途端にぱっと玉子に山芋に熱が加わり、
とろ～り、まろやか滋味深いとろろ蕎麦湯。
まるで、お粥のような飲みごたえのあるこの一杯を、ゆっくりゆっくり楽しんで…。

ああ、やっぱり美味しかった、と、余韻に浸り…



そういえば、食べた事がない、ちょっと気になる「にはち」さんの手打ちうどん。
今度、一度、おうどんも食べてみようかな…。

あれから早半年、少しは大人になっ…



いやいや、まだまだ、子供だね

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