最後の日の今日は…
ほぼ一年半ぶりに、「潮」さんの素晴らしいお料理にお蕎麦を頂こうとの夜の宴。
今は、筍料理も入るとの事で、もう何日も前から楽しみに、荒々しく吹き荒れる強風も何のその、急ぎお店へと…。
大通りに面して、貫禄感じる黒木壁のどっしりとした建物。
そこに、風を操るかのように大きな暖簾が閃いている。
西国分寺 「手打十割そば 武蔵国分寺 潮」
扉を開き一歩入った店内は、
柔らかい灯りに包まれ、木肌のぬくもり感じる壁に包まれた、暖かな空間。
壁には、春のお料理の品書きが、ご主人の挿絵を添えてずらりと貼られ、
これさえもが一つの素敵なインテリア。
すぐに顔を出されたご主人の、にこやかな笑顔がとてもうれしい。
ご挨拶をし、用意されていたテーブル席に腰を下ろして…
既に到着していた友人3人と、
まずはビールで乾杯~
柱の梁にちょこちょこと置かれた小さな木彫りの仏像や、
ずらりと並べられた素敵な器について話していると…、
程なくお料理が運ばれ始める。
各々の前に置かれた最初の一品は、
「つくね芋の雲丹包みマシュマロ仕立て」。
真白でつやつやとした白玉に、下に美しい包丁さばきの入った胡瓜。
この芋がすごい。ふわっとろっとした、文字通りまるでマシュマロ。
しかも中には、海苔が敷かれた雲丹がたっぷり包まれていて、
一緒に口に含むと濃厚な味わいでいっぱい。
周りに掛けらた土佐酢餡がとてもよく合い、これだけで早くもうっとりしてしまう 。
二品目は、椀もの 「かたくりとトリ貝の煮びたし」。
けなげな花が思い出されるかたくりは、茎と葉の部分をさっと湯がかれたもの。
上にかかったすり胡麻が香ばしく、出汁の加減がとても上品。
中のホッキ貝はしこしことした歯ごたえで、かみ締めると甘~い。
これらのお料理を前にし、早速お酒に切り替えて。
いくつものお猪口が並んだ籠から、各々好きな猪口を選び、
まずは「酔鯨」から。
すっきりとした美味しいお酒を頂いていると、
まるで宝石が並べられたかのような美しいお料理の乗ったお皿が置かれる。
ひとつずつ丁寧に説明された小さなお料理は、手をつけるのが惜しいよう。
「片口いわしの生姜煮」は、しっかりと味が染み、身がほろりと柔らかく炊かれたもの。
これだけでもお酒が進んでしまいそう。
「チーズで作ったお豆腐です」 との 「チーズ豆腐の生ハム巻き。
優し~いチーズの風味に柔らかく滑らかなチーズ豆腐。
質のいい生ハムとのバランスがとてもいい。
「丹波黒豆とうぐいす豆の煮物」
ほっこりとしてふくよかな豆の味が、甘さ控えめに炊かれたもので、
これはお酒によく合う黒豆煮。
「潮」さんの黒豆は、どうしてこんなに美味しいのかしら。
まるでルビー、と思ってしまう、美しく輝く 「たこの桜煮」。
透けて見える蛸に、周りを囲んだ煮凝りには、
口に含んだとたんに溶け、蛸の味がしっかりと染みたたまらない味わい。
そして、その横には、「蛸の卵の酢味噌がけ」。
ぷちぷちとした食感が魚卵好きの私にはたまらな~い 。
さらには、味の濃い蚕豆が添えられた 「手作りからすみ」。
やっぱり手作りは違う、違う、これが美味しい~っっ
もうこれだけで、すっかり堪能してしまうお料理に、お酒はすすみお変わりを。
「春鹿」、「八海山」とお変わりをして余韻に浸っていると、
それぞれ柄に違う蓋のついた、器が置かれる。
蓋を取ると、ふわりと湯気が上がる、これも美しい一品は、
「松の実と穴子の百合根まんじゅう」
真っ白でかわいらしい白玉には、たっぷりとかけられた海老餡が表面を彩る。
口に含むと、百合根のまったりとしてとろりとした円やかな味わい。
中には、ほこほことした穴子の身が埋まり、
松の実の香ばしい風味に歯ごたえが心地いい。
これも味わい、ゆっくりと頂いていると・・・
「次はお造りです」と、にこにことご主人が、大きな大きな陶器の器を抱えてくる。
これは、又見事・・・
まるで箱庭のように作られた陶器の器の中は、ひとつの絵のよう。
金魚蜂の中で魚が跳ね、桜の花の周りには飛び交う大根の蝶々達。
ガラスの器の中の鯛のお刺身は、ご主人に食べ方を説明され、
脇に添えられた塩昆布を乗せて頂く。
塩昆布の塩味に、昆布の風味がいい。これはいいな~
下にヒモも置かれた赤貝は、独特の歯ごたえに旨みもたっぷり。
そして、これがたまらな~い 、「皮ハギの肝巻き」。
それにさっと炙った「すずきのお刺身」。
どれもこれもが、創意一工夫されたお刺身に、感動しつつ堪能~。
そして・・・、いよいよ、待っていました♪の「竹の子も」
人数分盛られた、大きめの竹の子は、甘辛ダレを付けて焼かれたもの。
う~んっ、旨いっっ。この独特の歯ごたえ。
それに、じわ~っと広がる竹の子の味わい。
付けられたタレがよく絡み、もうこれだけで大満足。
と、そこで出されたのが、又熱々の器に盛られた「蕎麦掻き」。
二人でひとつ半分ずつ頂く「蕎麦掻」は、箸を入れた途端、驚いてしまう位に柔らかい。
まるで赤ちゃんのほっぺのような、ふわ~りぷよぷよとしてクリーミィ。
中に昆布が混ぜられ、磯辺揚げ風味の甘辛の味付けされ、
口に入れた途端に溶けていく。こんな蕎麦掻は、初めて。
「美味しい~」「たまら~ん」
と口々に飛び交う言葉の中、ご主人が鍋を出し、目の前で調理し始める。
我々がお料理にお酒を楽しんでいる間にも、手際よく作られたお鍋は、
これもうれしい 「竹の子と蛤に鯛の鍋」。
ご主人の手でよそって頂き、それぞれの目の前に置かれるお椀。
「あなた、竹の子好きだから…」
と、私は皆よりもたっぷり入った竹の子に、大感激
すっきりとして上品な薄味仕立ての鍋汁は、さらに竹の子の風味が楽しめる。
しかも、ぷりぷりの蛤に、ほろほろと身が崩れる鯛の切り身。
体にすぅ~っと染み入るようなお汁で、ああ、幸せ
堪能している間に、いつの間にかお鍋が片付けられたかと思いきや、
大きく二つ作られた 「白魚ときぬさやの掻き揚げ」が出される。
取り分けて頂く掻き揚げは、なんという軽やかさ。
空気感あふれ、サックサクとした衣に、ふわふわの白魚。
その間にも、さっと置かれた箸休みの「山葵茎の醤油漬け」に
「竹の子と烏賊の木の実和え」。
そして…、「うちのまだ食べたことなかったでしょう」
とおっしゃり出して下さった、「雲丹豆腐」。
とろ~りとしてまろやかで、大豆の甘みの濃い掬い豆腐に、
中には、これもしっかりとした雲丹がたっぷり。
豆腐と雲丹の風味が一緒に合わさり、この上ない濃厚な味わい。
さらに、「蕎麦寿司」までも。
程よい加減にすし酢で味付けされ、ふんわりと握られた蕎麦寿司には、
海老に卵、穴子などが巻かれたもの。
巻いてある海苔も質の良さが伺えるもので、これが又美味しい。
すっかり満喫しきったところで、ようやくお蕎麦が登場。
笊に乱れなく盛られた蕎麦は、十割で打たれた丹精な細切り。
手繰り上げるとふわりと香る蕎麦の香りに、口に含むとしなやかな腰加減。
するすると入っていくのど越しの爽やかな蕎麦は、
飲み込んだ後に、ぐわ~っと香ばしい風味が込み上げてくる。
これだけ食べた後にも関わらず、するすると食べてしまう蕎麦が、美味しい。
さらさらとした熱々の蕎麦湯を頂き、余韻に浸っている所に出されたお漬け物。
蕪に胡瓜の浅漬けに、早取りの水茄子の糠漬けまで
そして、どっしりとした土鍋を蓋ごとをかかえて持ってきたご主人が、
再び目の前で、ざっくりざっくりと中身を混ぜ…、
程なく香ばしいいい匂いが立ち込めたところで、
「河豚の炊き込みごはん」をよそって下さる。
お腹はいっぱいなのに、あんまり美味しくてこれもペロリ。
まだまだ食べざかり(?)の男子軍は、これも食べ足りないかのように、
もりもりとすっかり全部食べつくし…
最後には、うれしいご主人手作りのデザート各種。
苺の切り口の美しい、豆乳のババロアに、
蕎麦粉ガレットと、珈琲のブラマンジュ。
真白なのに、ほろ苦くて香ばしい珈琲の味わいがしっかりと感じるこのブラマンジュ。
前回も頂いたけど、これは本当~に美味しい。
それに、ぽっこり帽子を被ったかわいらしいプチシュークリームは、一人一個ずつ。
カスタードクリームが、びっくりするくらいに美味しい~っ
切り分けて頂く、初めて見る「生ヌガー」。
ヌガー大好きな私にはとてもうれしく、まったりとして柔らかい。
中にはドライフルーツにナッツがたっぷりと入り、こんなヌガーは初めて。
いやはや、このご主人はすごい。
お料理に蕎麦、それに加えて、パティッセリーにもなれてしまのでは、
と思ってしまう程美味しいデザートに、、とにかく感心してしまう…。
始めから最後まで、すべて大満足なご主人のお持て成しに、皆で感嘆しつつ…
心から…、ご馳走様でした~
「潮」さんは、やはりすごい!
ここは、やっぱり季節毎に訪れたいなぁ…。
Y様、O様、K様、ありがとうございました~
*お品がき
そばぎり(150g) 800円、大盛り 1,100円、おかわり600円、おろしそば 1,000円、鴨汁そば 1,300円
玉子やき 550円、そばがき 800円、生ゆば 800円、にしん棒 650円、鰊昆布 200円、このわた 1,000円、やきみそ 500円、焼きたけのこ 650円その他、
蕎麦会席 4,000円~
浦霞、酔鯨、春鹿、八海山 600円~、ビール(エビス、スーパードライ)
「武蔵国分寺 潮」
国分寺市西元町 2-18-11
042-359-2898
11:30~14:00 / 17:00~21:00
(土日祝)
11:30~15:00 / 17:00~21:00
火曜定休 店内禁煙 P2台
関連日記
2007年11月23日 秋の夜の「蕎麦会席」
2007年 6月20日 「焼筍」、「鰊昆布」、「そばきり」
2005年 3月18日 「そばきり」
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- 西国分寺 「潮」 (2007/06/20)
ぜひ、堪能してきてください(^^)。
専用コースではないですよ、きっと。
「おまかせ」なのですが、用意してくれたものの他に、この日は、食べてみたいねー、と一品料理をちょっと追加で注文したんです。
(5人で一皿…^^;)
私もあまり食が太いわけではないんですが、なぜか、潮さんのお料理は、するするっと食べてしまえるんです。
きっと大丈夫だと思いますよ。
もし、食べられない方がいたら、岡崎さんが食べちゃえばいいんですって(^^)。
あ、それと・・・
はい、大阪のヒトではないです(^^)
yuka様専用コースとは違いますよね?
yukaさんにお勧めいただいてからはや1年半でしょうか、
漸く「潮」に行けることになりましてね、
僕は食が太いから問題はないにしても、
一方の者の食が細くてですね、
その落差をどう埋めようか知らん、と
いまは思案中なんです。
それにしてもこれだけで1万円とは
和食としては格安ですね~。
いや、もうちょっと高いのかな?
お金の話をしたがらないyukaさんは
少なくとも大阪育ちではないな、と思いつつ。
何を隠そう、私もこちらできちんとお料理を頂く前は、gun様と同じ感想でした。
ここでは、料理を食べてこそ!
潮の魅力が分かると思います。
私も潮貯金しつつ、こちらのお料理を楽しみにしています(^^)
失礼ながら行きがけの駄賃的にもりそば
を頂いたのですが、こんなスゴイお店だ
とは思いもしませんでした。
お蕎麦は、薄いグリーンで細く、かなり
丁寧に作ってあるという印象でしたが、
そういうお店は他にもあるし。そばやつゆ
の味はかなりあっさりスッキリ系で、私の
好みとは違うので、また来ることは無いか
なと思ったのですが、このお料理の凄さを
見たら、少し懐に余裕が出来たら行ってみ
たいと思いました。
日本料理は好きなので、頻繁には・・
行けませんが、機会があれば行きます(^^)
お勉強にもなるし…
ちなみに、赤坂の「帰燕」は行ったことないです。岡崎さんほど…、食べ歩けてませんですよ~ん(^^;;
1万円でもこの垂涎物の料理の数々だといいですね。
う~ん、行ってみたい。。
yukaさんは、たとえば赤坂の「帰燕」とか
日本料理屋に行かれることもあるのですか。
もう、うなりっぱなし…。
食材ももちろん、この一つ一つの手間暇が素晴らしいものでした。
デザートまで、すべて手のこんだものでした。
ここは、蕎麦だけでは分からない、潮さんのお力があると思います。この一連のお料理を食べた後でこその、あのお蕎麦。です。
ぜひ♪食べる価値あり、ですよ~
流石の古拙の潮ですね。(意味不明)
食材もすごいし、料理も唸りますね。
羨ましい・・・・!
蛸の卵巣が仕入れにあるなんて
これは、料理屋でも至難のわざですね。
目の保養にしておきます。
すごいでしょ、もう、このレベルはすばらしいものでした。
池波正太郎さんの本は、私もお料理のしか読んでないです(^^)。
でも、大好き、です♪
彩りとか素晴らしい
お品書きのイラストも
なんだか池波正太郎を思わせます
池波正太郎が大好きな拙者ですが
実は剣客商売とか真田太平記とか
鬼平犯科帳は読んだことが無い
包丁ごよみとか料理の本ばっか
料理の絵は池波先生は自分で
描いてたそうです
読んでるとお腹が空くんですよ~
→ yuka (03/19)
→ yuka (03/19)
→ sherbetsST (03/18)
→ 森のたぬき (03/01)
→ yuka (02/24)