田端の駅すぐのふれあい橋を超え、高架道路を下に降りてすぐの路地を入ると、殺風景な大通りとは全く異なる、下町情緒あふれた商店街が突如目の前に広がる。懐かしいような気持ちを感じながら、生活感にあふれた商店街をぷらりぷらりと進んでいくと、その丁度中ほどに、大きく書かれた「手打ちそば」の旗が見えてくる。あそこ・・・?
田端 「田端玄庵 昌」
両隣に薬屋さんや、整骨院に挟まれ、商店街にすっぽり埋まったお店。「玄庵」の名前からしっとりとした感じのお店を(勝手に)想像していたので、そのあまりの違いにちょっと躊躇う。まるで、よくある街の蕎麦屋?いや、定食屋さんのような・・・。でも、お店から漂うほのぼのとした暖かい空気は、何かほっとさせられる・・・
掛けられた鮮やかな暖簾に近づくと、裏返しなのが又微笑ましい。すぐ横には今しがた打ってましたと言わんばかりの、「気」が残っているような打ち場があり、ちょっと目を落としながら扉を開く。午後1時半も過ぎようとする店内だが、まだまだ何人かのお客さんが、寛いでいる。
カウンター席が4つ、それに4人がけのテーブル席が三つ、二人がけのテーブル席が二つ並べられた小じんまりとした店内は、蕎麦屋というようりは、小奇麗な居酒屋のような雰囲気。すぐに、「お一人ですか 」と、女将さんが出てきて下さり、二人がけのテーブル席に通される。
出された冷たい蕎麦茶を頂くと、これがとても美味しい。ほっとしながら、置かれている品書きを手にすると、びっくりする程リーズナブル 。「玄庵」さんなのに~?
蕎麦もともかく、お料理の安さに加え、お酒も豊富に揃っているのもうれしく、仕事明けだし♪と、ちょっと頂いていくことに。
中から「雪の音」純米(500円)を選ぶと、「よかったらどうぞ」と出して下さった、切り昆布の煮物。
続いて、「ここにしば漬けもありますので、それもどうぞ・・」とのこと。
お昼のセット(200円)に、じゃこご飯やとろろご飯などがあるからなんだろうか・・、各テーブルに置かれた蓋付の坪には、しば漬けが入れられて置かれてる。
これはちょっとうれしいなぁ~
と、すぐに、お酒と一緒に、咄嗟に頼んでしまった「じゃこおろし」も目の前に置かれる。
小鉢に大根おろしの上に盛られたじゃこは、たっぷり。
よく居酒屋で「白子おろし」の、悲しいくらいにちょこっとしか盛られていない物と比べ物にならに程、たっぷりと盛られているのにうれしくなってしまう。しかも質のいいじゃこで、味のしっかりとした、美しく形の揃った揃ったちりめんじゃこ。これだけで一合たっぷり頂けてしまいそう~?しかも、これが200円というんだから、なんて素敵♪。
しばらく、この「じゃこおろし」でちびちびやっていたのだが、なんだかとても他のお料理も気になる・・・。野菜天ぷらも450円という安さだし、頼んでみようかと思ったが、前の席のご夫婦が頼まれていた量がたっぷりだったので(でも、とても美味しそうな天ぷら)それは辞めて、「さつま揚げ」を追加でお願いしてみる。
頼むとすぐに、揚げ音が聞こえてきたのを察すると、自家製らしい。さほど待たずにして、目の前に出されたさつま揚げは、薄めながらもしっかりすり身の甘みのある、かりっと揚げ立ての「さつま揚げ」。いやぁ、なんって素敵なお店なのかしら・・・
薩摩揚げにじゃこで、すっかり満喫し、そろそろお蕎麦を。
品書きに丁寧に書かれているお蕎麦は、常陸秋そば種を中心に季節により奈川種を使用の「せいろ」と、岩手在来種を取り寄せ、色・風味・歯ごたえの楽しめる「田舎そば」の二種。どちらも二八とのことで、どちらにしようかしばし迷ってしまう。
偶然顔を出してくださったご主人に、「田舎は太打ちですか?」とお聞きすると、「やや、太いかな。黒っぽい挽きぐるみの蕎麦ですよ」と、にこにこして答えて下さる。どっちにしよう~と、ちょっと迷っていたら、「二色にしてあげようか 」と、おっしゃって下さるではないの
うれしくなって、もちろん二色でお願いすることに。
田舎とせいろの二種の蕎麦は、一つの笊に対照的な姿で盛られて出される。
どちらの蕎麦もエッジが斬新に立つ、男気のあるような凛々しい姿。
まずは、「せいろ」から。表面に所々蕎麦の欠片が散った細打ちの蕎麦は、手繰り寄せるとふわりと香ばしい蕎麦の香り。噛み締めるとしっかりとした穀物感のある腰が心地よく、蕎麦の風味がふわりと広がる。その後で、ゆっくりと追いかけてくる蕎麦の甘み。猛々しさと自然の優しさを合わせもったような、美味しい蕎麦。
そして、かなり濃い目の挽きぐるみの「田舎そば」。表面には蕎麦の欠片の浮くやや太打ちの蕎麦は、手繰ると日向のような香ばしい香り。
そのまま口に含むと、さらにしっかりとした腰の、もちもちとした歯ごたえで、よく噛み締めて食べるタイプの蕎麦。甘み、風味はこちらの方がやや強く、これは暖かい漬け汁でも頂いてみたくなってしまう。
全くタイプの違う蕎麦で、これは楽しい。
醤油や砂糖、出汁にも吟味した素材で作られた拘りのある汁は、まったり感のある辛汁。かなり濃い目の汁で、せいろにはちょこっと漬けるくらいがいい感じ。むしろ、田舎蕎麦には、がっしりと合い、蕎麦の旨さを引き立てているよう。
さらさらっとしたナチュラルな蕎麦湯を薄めて頂くと、量もしっかりとあったので、かなりお腹いっぱい 。
すっかり満足して、お勘定をと席を立つと、ご主人に「どうだった?」と聞かれ、感想などからちょっとしたお話まで。「立石の玄庵さんとは・・・?」と、お聞きすると、にこにこしながら「そう、そこを卒業してね、今は講師もしてるんだよ」と、おっしゃるではないの。何でも、お店の定休日には、立石で蕎麦打ちの講師をしているとのこと。
「玄庵って名前、あんまり好きじゃなかったんだけどねぇ~」なんて、あけすけにおっしゃる。とても親しみやすく、大らかで素敵なご主人。お話していると、こっちまでにこにこしてしまいそう。
ああ、このご主人のお人柄こそが、このお店のほのぼのとした雰囲気を作っているんだなぁ、と改めて実感する。
又、ぜひ来ま~す
そう伝えてお店を後に。
玄庵さん出身のお店はいろいろあるけど、ここは又、特別気取りのない温かみのある気さくなお店。それでいて、蕎麦が旨いんだから、これは近くに是非欲しくなってしまう。
ご馳走様でした~。
今度は、友人とでも連れ添って、いろいろなお料理も食べてみたいな。最後には、(一番人気)の「鴨汁そば」を頂いて・・・
*お品書き
せいろ、田舎せいろ 650円、きつねせいろ 850円、おろし、椎茸せいろ 900円、なめこおろし 950円、つけとろ、肉天せいろ 1,000円、鴨せいろ 1,400円、天せいろ 1,800円、かけ 650円、きつね 850円、山菜、椎茸 900円、やまかけ 1,000円、茗荷そば 900円、納豆 1,000円、梅おろし 1,000円など豊富
じゃこおろし 200円、そば味噌、冷やしトマト 250円、さつま揚げ 、揚げなす 350円、揚げだし豆腐、板わさ、鴨つくね串、鴨スモーク 400円、出し巻き、京にしん 450円、野菜天盛り 450円、はぜ天盛り 500円、アナゴ天盛り 500円、馬刺し 750円などなど
宝寿、立山、真澄、梅錦、南部美人、司牡丹、国土無双、雪の音、一の蔵、久保田千寿、など450円~500円
手打ちそば「田端玄庵 昌」
北区東田端2-8-2
03-3800-8873
11:30~14:30 / 17:30~20:30
火曜、第3月曜定休
禁煙
- 関連記事
-
- 東十条 「一東庵」 三つの「そばがき」に感動の五つの蕎麦 (2017/05/09)
- 東十条 「一東庵」 雪空の下の感動の蕎麦三昧 (2016/11/25)
- 東十条 「一東庵」 馬刺しに蕎麦がき、感動の5種の蕎麦 (2016/06/14)
- 東十条 「一東庵」 極上の「トマトの冷かけ」 (2015/08/19)
- 東十条 「一東庵」 感動の嵐再び、絶品5種の蕎麦 (2015/06/16)
- 東十条 「一東庵」 感動の「手挽きそば」季節の「さくらそば」 (2015/03/25)
- 東十条 「一東庵」 感動の嵐 5種の蕎麦 (2014/05/13)
- 東十条 「一東庵」 江戸の粋ある蕎麦コース (2012/07/11)
- 東十条 「一東庵」 (2012/02/03)
- 田端 「玄庵 昌」 (2011/01/13)
- 十条 「まつ屋」 (2008/12/12)
- 上中里 「ひろと家」 (2008/11/27)
- 十条 「出陣」 (2008/08/18)
- 田端 「田端 玄庵 昌」 (2007/12/10)
- 田端 「田端玄庵 昌」 (2007/10/25)
こちらのお店。
絶対、近くにあったらすごくうれしいお店です。
馬刺し・・・、いいなぁ、気になっていたんです。食べてみたいです。
また行こう♪っと(^^)
町の蕎麦屋、かくあるべし!
じゃこおろしに馬刺しで
ビールに南部美人を2本いただいてきました。
お蕎麦はユカさんを見習って二色もりにしてもらいました!(^^)!
ぜひ、あちらにも・・・。
又よろしくお願い致します(^^)。
それにしても、私も、びっくり!
某所でお会いできるといいな、と思っております(^^)
いやぁ、ここいいですね♪
居酒屋使いにでも、きっと大満足しちゃいそうです。それでいて、玄庵さんのお蕎麦も食べられるんだもの、これはうれしい。
ご主人、ほんっといい方で。
お話してると、こっちもにこにこしてきちゃいそうでした(^^)
私もつい十日程前に久し振りに行ったばかりです。
町の蕎麦屋はかくあるべしみたいな、何のことは無いがホッとするお店ですね
田舎は程々ですが香りも甘さもモチモチ感もあって楽しめますね
→ yuka (03/19)
→ yuka (03/19)
→ sherbetsST (03/18)
→ 森のたぬき (03/01)
→ yuka (02/24)