「お昼、どこで食べようか」の彼の問いに、新そば時期には十割があると聞いて、行って見たくなっていたところ。
小金井と府中の間の住宅街。
素敵な家が連なる中にたたずむ、いわゆる「住宅街の蕎麦屋」。
前に訪れた時に聞いた駐車場に車を止めて向かう。
記憶の中でもそうだったけど、相変わらずとても素敵な家。
濃紺の暖簾がかかっていることで、どうにか蕎麦屋と分かる、普通の住宅。
いや・・・、普通なんて言えないくらい、とても素敵なお屋敷。
「手打ち蕎麦 みやざわ」
休日の、お昼ちょっと前。
笑顔の奥様に出迎えられ、記憶の中と変わらぬ、明るい広々としたリビングに通される。
まだお客さんはなく、どうやら私たちが今日の封切り。
「お好きなところにどうぞ 」
との言葉に、今日は窓際に配された、一枚板のテーブルの一つに腰を下ろす。
ほぉ~・・・ と、ため息がついてしまうような、素敵なリビング。
骨董品?のような、古箪笥。
その上に置かれた、年代ものの陶器。
そして、奥の和室も又、しっとりとして重厚な感じ。
すぐに出して頂いた、とても美味しい蕎麦茶を頂きながら、お品書きを・・。
以前訪れたのは、免許の書き換えだった、春。
その時にはなかった、「新蕎麦生粉打ち」が書かれてる。
ふと見上げると、柱にも「新そば」の清々しい半紙。
やっぱり~♪
これを頼んでみなくては
と、私は、「新そば生粉打ち」をお願いする。
待つ間に、テーブルに置かれたままの品書きを見てると、ちょっと頼みたくなってくるようなつまみもいくつか・・。この「どぶろぐ」ってお酒も気になるなぁ~・・
と思っていると、程なく目の前に、蕎麦猪口と汁、そして「生粉打ち」が目の前に置かれる。
北海道十勝の新蕎麦。
瑞々しく輝く、丹精な蕎麦。江戸の細切りよりは、気持ち太めのクリーム色の蕎麦は、切り口がなんとも鮮やかに笊に盛られている。
香りはまだ強烈ではないにせよ、清々しく軽やかに鼻腔を通り過ぎる。
そして、口に含むとしっかりとした腰。もっちりとした、歯に食い込むような穀物の詰まった感覚。かみ締めると、軽やかなフレッシュ感のある蕎麦の風味が広がる。
鰹の上品な風味の高い、すっきりとした辛口の汁が又美味しく、そのままで、そして、汁と共にとじっくりと味わう。さすがに・・・、旨い。
薬味は、丁寧に刻まれた葱と、摩り下ろされたばかりの山葵。
見た目以上に、きちんとした量が盛られていて、満足な蕎麦。
ううむ、記憶よりも美味しい。
そして、(いつもの事ながら)、まだ食べていない「開田」の蕎麦で打たれた田舎蕎麦をも食べたくなってしまいる。。
彼は・・と、二八で打たれた、やはり北海道のせいろ蕎麦(大盛り)。
こちらも丹精な蕎麦で、しっかりとした腰は変わらず。比べると、やや生粉打ちの方が猛々しさが加わっているような感じ。とはいえ、のど越しのよさが加わったような「せいろ」もかなりの一品。
頃合を見て出された蕎麦湯は、朱塗りの片口。
見ても白濁したそれは、注ぐととてもクリィーミーな蕎麦の風味の溶け出した蕎麦湯。
出汁の美味しい汁と薄めて頂くと、ほっとしてしまう時間・・。
ほぉぉ・・・、と、一息つく。
食べ終わると、こと、ささっと席を立とうとする彼に、なんだか去りがたい気持ちが残る。
ああ・・・、こんなに素敵な空間。もうちょっと、ゆっくりしていたいなぁ。
できることならば、ただ蕎麦だけを手繰るだけでなく、ゆっくりと「ひたし豆」や、「ざる豆腐」あたりで、一献重ね、じっくりと蕎麦を味わってみたくなる。
んんんーっ 、やっぱりこれは、車で訪れるのではなく、徒歩でこなくちゃあ・・・。
立ち去りがたい気持ちをなんとか押さえ、それでも満足した気持ちはもちろんで、お店を後に。
快い接客の奥様がやはりうれしく・・・、「又、来なくちゃ」と心からしかと思い、重厚な扉を。
ご馳走さまでした。
やっぱりここは、素敵な店だなぁ~・・・
*お品書き
生粉打ち 900円、せいろ、田舎 各700円(大盛 300円増し)、かけ 700円、
とろろ 900円、おろし 1,000円、鴨せいろ 1,400円、天ぷら蕎麦 1,400円、
ひたし豆、蕎麦味噌、ナス漬物 各300円、ざる豆腐 400円、天ぷら 700円など
手打ち蕎麦「みやざわ」
小金井市前原町2-13-5
042-385-2597
11:30~14:30 / 18:00~21:00
(夜予約のみ)
月・火定休
P4台(手前のJA駐車場)
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