いよいよ最終日。
前夜の激しい雨も止み、晴れ間も時々見える。ホテルをチェックアウトして、以前訪れたことのある、松本の小さな酒蔵を訪れて、一路東京へ・・。
塩尻にも行きたいお店があったが、あっという間に着いてしまったので、岡谷まで走らせる。甲州街道の岡谷ICを過ぎた辺りで降りると、小さな岡谷の町並み。
その中心っぽい道路から、細い野路のような私道を入ったところにあるお店へと・・。
こんな場所に?というような、通りをほんの少し入っただけで、野花が咲き乱れるのどかな風情。
車を止めて・・、えっと、お店はどこに ?
・・・と、駐車場の目の前に、
閉められた扉の建物。
ここかしら~・・
「蕎麦」の文字の小さな灯篭も下がってる。
ん?小道が続いてる。
なんて素敵・・。ちょっと、「雙柿庵」への入り口を思い出させるような、アプローチ。
石畳が敷かれた両脇には、自然に伸びた草花が無造作に続き、これがとても和む景色。一歩一歩、歩みすすめるうちに、幸せな気持ちになって行くよう。
喉かで爽やかなこの小道の突き当たりに は、禅味も感じるかわいらしい東屋。
(思わず座ってみたり)
そして、東屋から横にさらに続く道の先には、蹲など置かれ、懲りすぎない日本庭園の風情と繋がる。
店に入るまでに、既に心はすっかりとこの風情の虜。
なんて、心憎いまでの演出。
知らず知らずに、憩い始めている・・
やっと辿り着いた入り口は、
清楚に下げられた暖簾のみ。
「蕎麦 あきしの」
白木の上品な引き戸を引くと、目の前にしっとりとしたお座敷の部屋が目の前に広がる。
既に、ほぼ満席くらいに埋まっている店内だが、静かで穏やか。
自宅を改装して作られたようで、二間続きの和室を、敷居が置かれテーブル席が4卓ほど並ぶ。
何とか空いていた一番奥のテーブルに通され、腰をおろす。
目の前の大きく開かれた窓からは、素敵な庭園が眺められ、注文することも忘れて、寛いでしまいそう。
掛けられた電球、置かれた古箪笥・・
どれもこれもが素晴らしいセンス。
これは聞いていた以上にいいよぉ~・・♪
しばしして、女将さん?らしい女性がお茶とお絞りを持ってくださり、きちんと座って、深々と「いらっしゃいませ」と挨拶してくれる。
すごいっ・・、旅館の仲居さんかのような、この丁寧な接客!
そして、お茶と一緒に(頼んでないのに)、小鉢まで。
「モロッコインゲンのお浸し」
これが、すごく美味しい。
素材もいいのだろうが、湯で加減や味付けがいい。
こんな中で、蕎麦だけというのも、勿体無くなってしまって、いくつかの料理とざる蕎麦をお願いする。品書きに書かれた料理も、定番の品の他、食べてみたくなるものが並ぶ。
で、選んだのが「蕎麦豆腐」
山葵が天盛りされ、箸を入れるとぷるんっと。口に含むと・・ お、美味しい~!
口に入れた途端に、優しく溶けていく。その過程で、ふわりと甘みを感じ、後からじわじわと、蕎麦の優しく深い味わいが広がる。これはいいっ!
そして、「豚みそ漬けあぶり」が、テンポよく出される。
しっかりと肉にまで旨い味噌味が染みたもので、じわっと溶けるような脂身とほろっとこぼれる赤身肉。表面をさっと炙った香ばしさもあり、こりゃぁ、ご飯にも、モチロン♪お酒に、いい一品。
食べ終わった頃合に、
蕎麦猪口と薬味が置かれる。
しかし・・、しみじみとここの接客は丁寧でいて暖かいもので、とても気持ちがいい。
程なくして、高足の笊に盛られた蕎麦。
クリーム色の細切りの蕎麦は、エッジが鮮やかで瑞々しい。寄せると、蕎麦の香りもふわり~と漂う。
口に含む。やや弱めに感じる腰だが、蕎麦の風味はいい。暖かいようなやさしさのある滋味な蕎麦の風味が、じんわりと広がる。ただ、蕎麦の長さがかなりまちまちで、短いのが気になるなぁ。
惜しいなぁ~・・、これでもう少し繋がりがよかったら、かなり素晴らしいものだろうと思わせる。蕎麦の風味、味わいがいいので、それでも、もちろん楽しめるものには違いないのだが・・。
蕎麦湯を持ってきてくれた女将さん(?)に尋ねると、これまた丁寧に答えて下さり・・、
蕎麦は、八ヶ岳山麓のもので、こちらで石臼挽き自家製粉しているとのこと。あの、駐車場の前の建物が、打ち場だそう。つなぎは・・と、さらに尋ねると、今は「一割弱くらいです」と。
白磁の急須で出された蕎麦湯は、ナチュラルなもの。
ほんのり白濁した蕎麦湯で汁を薄めると、鰹の風味が香り立ち、すっきりとした辛口の汁の旨さを実感できる。
蕎麦茶に変えて、煎茶をも出され、啜っていると、本当にこのままぼんやりとしばし寛いでしまいたくなる。
料理の質もいいし、この空間。お酒も地元の物を揃えているし、車でさえなかったら、ゆっくりとしたいお店。いや、旅行最後にこういうお店に来れたことをうれしく思う。
ご馳走さまでした・・。
長野最後の日として、とても満足できたな。
お勘定でもやはり丁寧に挨拶して下さり、お客をもてなすという気持ちが本当に伝わってくる。また、機会があったら寄ってみたいと、ふと思い、再び素敵な小道を上りながら、余韻に浸って・・
*お品書き
ざる 895円、お変わりざる 683円、地鶏つけ 1,575円、天ざる 1,575円
花まき 945円、地鶏南蛮 1,365円、天ぷらそば 1,575円、
そば豆腐 399円、地鶏つみれ椀 365円、豚味噌あぶり 525円、蕎麦茶雑炊 420円
地鶏塩焼き 1,055円、かき揚げ 1,155円、そばがき 630円、他
真澄、神渡、高天など630円~
蕎麦三昧 2,625円、月見三昧(秋)2835円、他セット1,260円~も
「蕎麦 あきしの」
長野県岡谷市長地柴宮1-9-1
0266-27-9000
11:30~15:00(売り切れしまい)
月曜、第三火曜定休
P10台
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ここっ!いいですよねー。
もう、お店に入るまでに、すっかり憩ってしまいました。
ここには載せてないのですが、随分、記念撮影(人物入り^^;;)しちゃった程です。
意味もなく、東屋に座ってみたり・・・。
蕎麦の繋がりはともかく、風味はとてもいいですよね。
ああ・・・、又是非訪れたいです。
なにしろ、「つみれ椀」の宿題が残っているんですもの、ね(^^)
『あきしの』に行ってきました。実はここ、妻の実家から自転車で5分ぐらいのところなんです。何度も店の前の通りを通過するたびに気にはなっていたのですが、「何時でも行けるや、、、」という気があったので今まで行かずじまいでした。
確かに一寸短めのお蕎麦でしたが、風味豊かで、たおやかな良いお蕎麦でした。汁も田舎風ではなく、きりっと辛口で東京っぽい感じですね。
お店の雰囲気も良かったし、帰省したらまた行こうっと(^^)
10月ごろ・・というと、紅葉が始まっていたころですね♪
それはそれは、目にも美味しい景色だったろうなぁ、と想像してもうっとり。
私も、ここで、又まったりしたいなぁ、と、自分の写真見ながら思っちゃったりしてます。
去年の10月頃僕も行きましたよ~。
そのときは、庭をみながら
蕎麦をいただきました。
これ見てると、また行きたくなります☆
そうそう、蕎麦の写真や、ドラマでのシーン、もちろん雑誌なんか見てるだけでわたしもお腹すいてきちゃうんです。
でも、いい蕎麦ばかりでした・・。
行ってみて、歩いているだけでもう、ほんっとに幸せになっちゃうみたいで・・。
言われてみると、駒ヶ根のお蕎麦屋さんと似てるかも・・、と納得しています。んー、駒ヶ根ももう一度行きたい~っ。。
「つみれ椀」悩んだんですぅ。でも、蕎麦豆腐もとても美味しかったの。下呂のお店の蕎麦豆腐も絶品だったけど、こちらのもとてもよかったです。
「しみず」にそして・・と、まだまだ行きたいところがいっぱい。私も、時間と重いお財布が欲しいですっっ。
器も面白いものを使ってますよね。因みに笊はかの「竹やぶ」さんのと一緒の職人さんが作ったものです(竹やぶさんと繋がりはありませんが)
そしてあのアプローチは駒ケ根の某お蕎麦屋さんの所も手がけた職人さんです。
ここの地鶏つみれ椀は超粗挽きにした地鶏でこれ又マッチの頭位に刻んだ生姜が入っていて他店に無い面白い食感のつみれですよ。次回はお試しあれ。
ドップリ飲んで、手枕でゴロンとしちゃいそうな・・
次回は塩尻「しみず」の玄播之丞は是非ともお試しの程
やっぱり、体も、時間も、お財布も・・・ 一杯欲しいな
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