全く普通の住宅の玄関の扉を開けば、
すぐに迎えてくれたのは、まだお若いかわいい奥様 。



お好きなところにどうぞ、とにっこり通された座敷間は、
古箪笥など置かれた、古民家風しっとりとした落ち着きがあり、



そうそうそう、この障子 。
「雨幸」の文字の枠組みに、後ろから優しく灯す透かし照明。



ぐるり眺め、窓際のテーブルに腰を下ろすと、
「お昼は、このランチセットになっております」
と、説明され置かれた品書きは
どのお蕎麦にも、天麩羅に甘味のつくセットのよう。

久しぶりのお店、基本の「せいろ」に、
表の看板に書かれていた、「くるみ汁」も付けて、



一人占めするこの空間、ちょっとゆっくりしていきたい。
ずらりと書かれたリストから、「鯉川」を選び添え注文 。



待ちながら、他のページをめくってみると、
酒の充てに良さそうな一品料理も幾つか並び、



夜限定の、以前頂いたのに似た「蕎麦三昧」のコース料理。



当時の事を思い出し、しみじみとしていると、
しばれ硝子が美しい、グラスに注がれたお酒と、
韓国海苔を添えて置いて下さり…、

少々奥様とお話しも 。
ご主人は、あの後体を壊され休業していたそうで、
今は、長男である今のご主人が、蕎麦を習い後を継いだのだそう。

にこにこと、気さくに接して下さる奥様がうれしく、



窓ごしに、雨に滲んだ庭の景色を眺めていると…



程なく、抹茶塩を添えた、野菜の天麩羅が目の前に。

今が旬ヤングコーンにししとう、舞茸の天麩羅は、
衣薄く軽やかさっくさく、中はジューシーに揚がり、
どれもが美味しい天麩羅で… 。



海老天も一本、追加で注文。
火の入り加減が絶妙な海老は、ぷりぷりで旨み濃く、
うんっ、この海老天も美味しい 。

すっきりとした鯉川をじっくりと味わって…



お声かけして出された蕎麦は、
茨城猿島の常陸秋そば、外一の蕎麦。



すらりと伸びた繊細な細切りに、ぽつぽつと星が散り、



手繰り上げれば、すぅ～っと広がる清々しい蕎麦の香り。
心地のいい絶妙な腰に、するりと落ちる喉越しよく、
ふっと鼻孔に上る、ふっくらとした甘みのある味わい。

あ…、美味しい 。

しばし、そのままの蕎麦を楽しみ、
そっと浸した汁が、又素晴らしい。
雑味なくすぅ～っと伸び、蕎麦を支え旨みを添える 。



そのまま食べてしまいそうになりながら…



ようやくくるみ汁にも浸してみると、これは美味しいっ 。

粗削りの胡桃がとろりと絡み
胡桃の芳ばしくほんのりとした甘さが、この蕎麦によく合う。
…と交互に手繰っていたらあっという間。



頃合い見て出された、さらりとした蕎麦湯を、
それぞれの汁に注ぎ、余韻にじっくり浸っていれば、



そっと出された最後の甘味は、「蕎麦湯寒天」。
黄粉と黒蜜がかけられ、さっぱりとした甘さが気持ちよく、

ご馳走様でした～

席を立てば、厨房から顔を出して下さったご主人も、
にこやかで、優しそうな素敵な方。
豊島園の住宅街の中で頂く、贅沢なひと時。

できれば…、もっと営業日が多ければいいのになあ 。

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