ひゅううと時折吹き抜ける寒風にさらされ、待つ事しばし。
そろそろ2時に差し掛かかった時、
おもむろに女将さんが出てきて、待ち人の人数を数えだし…
「すみません…、ここまでしかお蕎麦ないです」
と告げたのは、丁度我々のすぐ後ろまで。
よ、よかった…、
どうしても、どうしても、最後にご主人の蕎麦、頂きたいの。
ようやく店内に通されふと見れば、
壁には、分かっていても名残惜しい、ご主人のお言葉。
程なく通されたのは、初めて座った小上がり席。
横には、整頓された広々とした打ち場があり、
存在感のある「手挽き」の石臼。
ここで毎日丁寧に丁寧に挽かれていたご主人の姿が浮かび、
ふっと涙が溢れてきそうになっていると…
頼んだ「鴨汁せいろ」に「鴨南蛮」が程なく置かれる。
しっかりと胸に焼き付けておかなくちゃ…
今日の蕎麦も又なんて美しいのだろう 。
びっしりと蕎麦粒が重なり合う、穀物の息吹感じる躍動感…。
粒感が際立つ、もちもちとした歯ごたえが心地よく、
芳ばしくて甘い、蕎麦のもつ自然な甘みが広がってくる。
美味しいなあ、ああ、美味しいなあ…
そのままで、しっかり味わい何度か手繰り…
初めて頂く「鴨汁」は、茸に葱がたっぷりの具沢山。
そっと浸し口にすれば、キンっと冷えた蕎麦が暖まり、
途端にほろっと解け、さらに旨みを放ちだす。
美味しいっ、これ、もっと早く食べとけばよかった…。
鴨出汁がじわりと染みた、柔らかくすっきりとした上品な汁。
蕎麦の風味を邪魔せず、そっと支える優しい旨み。
葱の甘みに茸の出汁も染み、これは美味しい…。
「おっ、これ旨そうっ」
と第一声つぶやいた彼の「鴨南蛮」も、具沢山。
途中で交換して食べた、初めて頂く温そば。
鴨汁同様、優しく柔らかく出汁が染み、
熱々の汁に浸っているのに、全く腰を失わない蕎麦の旨さ。
これもなんて美味しいんだろう
温蕎麦もいろいろ食べておきたかった…
と、怒涛の如く後悔が押し寄せながら、
慈しみ、慈しみ、食べながらも胸がいっぱい。
熱々の濃厚蕎麦湯で、思い出と共に余韻に浸り…
ご馳走様でした…。
「これは旨かった」と漏らす彼の丼にも汁一滴残っておらず、
彼をもっと早く連れてくればよかった、と再び悔やまれながら…
感慨深く、ゆっくりと席を立ち、
厨房をのぞきご主人に、深く深くご挨拶。
荒川さん、御苦労さまでした 。
いつかどこかで、又お会いできることを願って…
「山泉(さんせん)」
東京都国分寺市西元町2-17-16
042-327-7400
11:30~15:00くらい(そば仕舞)
木・第2水休
禁煙 P2台
2012年12月14日 「きのこおろし」で熱燗、「せいろそば」
2010年 6月14日 「とりわさ」にむき実の「せいろ」
2007年12月 4日 「田舎そば」
2007年 8月20日 「とりわさ」に「せいろそば」
2005年 9月21日 ビールで「にがうり」、「せいろそば」
1995年にお店を開かれ、17年間のピリオドが今日打たれる。
いつまでもずっと…、ご主人のお蕎麦、忘れません 。
そして私も、新しい年に向けて…
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惜しかったです…(涙)
久しぶりに、もう一度いただきたかったんですけどねぇ(涙
>特に人の手で作り上げるもの、ということで…
奥様の調子がもう限界と言う事で、ちょっと早くなっちゃったけど、とおっしゃっていましたが、既に長野で半分暮らしているとの事で、
もう前から決められていたようです。
そうなんですね、決断、していたんですよね…。
きっとそのうち、荒川さんの造った石臼がどこかの打ち手の方に渡り、
いつかどこかでその蕎麦を食べられるかもしれないなあ、などと思ってます(u_u*)~
特に人の手で作り上げるもの、ということで、しかも念を入れれば入れるほど、
皮肉なことにある時点で続けられなくなってしまう。
でも、その決断に至るまで頑張ってこられたということで、ご自身が納得されて
おられるのであれば、残念無念ではあっても傍は諦めるしかないし、寧ろ
「お疲れ様でした!これまでたいへんお世話になりました!どうもありがとう
ございました!」
と述べるのみです。
そして、これからの人生や「試み」に向われる方々を、心から祝福させて
いただきたいと思います。今後もお幸せに~!! と。
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