昼時外し入った店内には、常連らしい先客お一人。
空いていたテーブルへと向かいながら…、



ふと横の貼り紙を見れば、まず目に留まった、この文字。
「燗がいいんです！！本領発揮の季節到来」。

さすがっ、やっぱり「吟」さんだ



並ぶ半紙の、「季節限定」牡蠣の品書きを眺めながら、
ようやく椅子に腰を下ろし、すぐにお願いしたお目当ての、
三種の利き燗酒、「参燗酒」。



待つ事しばし、程なく目の前に置かれたお盆の上の、
意図せぬ豪華さに、思わずびっくり 。

形の違う小さな徳利に注がれた、三種類の熱燗に、
それぞれ冷やで猪口一杯づつ添えられ、
みっつ並んだ猪口は、お酒に合わせて選ばれたのだろうか…。
形趣向の異なる、素敵な盃。



丁寧にしたためられた書が味わい深い、
「宗玄」 八反錦　に、「悦凱陣」 山廃雄町、「酔右衛門」 山田錦にごり　
…の三種類。



同時に置かれた、瑠璃色の水差しにチェイサー用の水が添えられ、



お酒の充てには、しっかり味のしみた蕗の煮物。
それそれの、冷やでの味わいと燗した違いをじっくり味わい…



充てにお願いした「あえずの参品」



刻んだエシャロットを混ぜた、乙な「蕎麦味噌」に、
キーンと山葵の旋律走る「山葵漬け」
濃厚で乙な、チーズに似た「超熟成麹漬豆腐」。

熱燗の充てにたまらない珍味三点に、
瑞々しい胡瓜にエシャロットが添えられて…

小さな空間で、じっくりと味わいながら、
手の空いたご主人との、楽しく愉快な酒談議に蕎麦談義 。



お蕎麦は何を頂こうと、たっぷり楽しみ品書きを広げ、
真っ先に、去年頂いた絶品「利休せいろ」に目が行くが…

実は最近、「牡蠣」より「浅利」の方が好き、
初めて目にした「浅利ときのこの玉子とじ」に興味しんしん。
思えば、久しく「吟」さんの温そば食べてない。



今日はこれを頂こう、「浅利ときのこの玉子とじ」



うっわ～っ、なんって美し～い玉子とじっ。



まるで蒸し上がったばかりのスフレのように、
ふっくらとふくれ丼すっぽりと覆う、鮮やかな金色輝く玉子の笠 。



そっと横に添えられた葱の丁寧なしつらえを目に留め、



蓮華でそっと玉子に分け入り汁をすくえば、
すっと流れ込む、澄んだ琥珀の清らかなかけ汁。

口にすれば、出汁が品よく奏でる繊細な汁に、
円やかに広がる玉子の優しい味わい。
ああ、美味し～い…



そのまま、ふわっと玉子をすくえば、
ふっと淡雪の如く途端に溶け消える、繊細な玉子にうっとり 。

再び汁を口にすれば、
じわりと茸の風味に、後からじわっと広がる浅利の出汁。
こっ、これは、、美味っし～いっ



しかも、玉子の蓋の下には、しゃきしゃきとした、
エリンギ、舞茸、しめじなどの茸がたっぷり入り、



そこに混じって、これもざくざく出てくる、
たっぷりのぷりぷり浅利～。



ようやく蕎麦を手繰れば、もっちりとして汁を纏った蕎麦が旨いっ 。
玉子を絡め、茸と共に、手繰る毎に楽しく、



何よりもこの浅利と一緒に手繰るうれしさと言ったら…

と、丼にしばし没頭、汁まで飲み干し、完食～。
ああ…、美味しかった～
と、お腹もいっぱい、体もほかほか大満足。

ご馳走様でした～

やっぱり吟さんは素晴らしい。
まだまだ本当の寒さはこれから、又伺います

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