ここ2年食べ逃してしまっていた、季節限定の「傘亭」の田舎そば。
まだ4月、今なら急げばまだ打っているかも…
今年こそは食べてみたい、とぽかぽか陽気の高田馬場をてくてく。
えんえんと続く道のりに、まだだったかしら…、などと思っていた矢先に、
幾つも並ぶ商店の中に埋もれ、小さな暖簾が見えてくる。
あれからすぐ来ようと思っていたのに、あっという間に1年ぶり…
高田馬場 「手打ちそばう 傘亭」
既に2時を回った店内は、今しがた食べ終えたお客さんがお一人のみ。
変わらないご主人の姿にほっとし、カウンタ端の椅子を引く。
まずはやっぱり、ここに来たら、蕎麦前を頂かねばならん 。
壁にずらりと貼られた品書きを、上から順番にゆっくり眺め…
中から、なかなか見かけない、山形のお酒「洌」純米酒を選び注文。
美しい藍色のガラスの徳利なみなみ注いでくれるのもうれしく、
口にすれば、きりっとした辛口の男酒。
これに合わせるには…、と目の前にずらり並んだお料理の中から、
充てに選んだのは、まだ頂いた事のない「鮪のづけ」。
程なく出されたお皿の上には、思ったよりもたっぷり、鮪10切れ。
胡瓜を枕に、摺りたての山葵が添えて盛られ出される。
さっと表面を熱湯に潜らせた鮪は、とろっと柔らかく味が染み、
品のいい鮪の風味が生き生きとしてとても美味しい 。
添えられた胡瓜は甘みさえ感じ、途中挟み食べると実に爽やか。
頂きながら、お酒から鮪に、竹の子の話から、放射線の話になり、
今年は素材の産地選びに念を入れているそうで、
「そういえば、漬けものってないんですね」
との私の言葉に、「作ってあげようか♪」と、にっこり。
「すぐできちゃうよ」と、ちゃかっと作ってくれた、たたき胡瓜風「即席漬け」。
頂きながら、お話し好きのご主人との話が弾み弾み…
ついついお酒もお替り、初めてみる「あたごのまつ」をお願いすると、
これは、あの「伯楽星」の蔵で去年解体直前に醸した酒だそう。
とどまる事ないお話しはとても楽しく…
「よかったら、これ飲んでみて」と出された猪口一杯のお酒の、美味しい事
お聞きしたら、…なっ、なんですとぉっっ
飲む事などないと思っていた、「菊姫」の「菊理姫」(12,000円)。
どっしりとした菊姫の味わいとは全く違う、優しく柔らかく清らかでまろやか。
こっ、こんなお酒だったのか…
と、添えられた、「大根のたらこの唐墨和え」と共に、大事に大事に頂いて…
すっかりほろ酔い心地のいい気分~。
そろそろ、お目当ての「田舎」を頂こうと、「二色」で注文。
きりっとしてまろやか、奥行き深いもり汁に、
きりりとした辛味が辛辣な辛味大根の薬味が出され、
続いて出された、色合いくっきり異なる「二色そば」。
二年越しに楽しみにしていた、「傘亭」の「田舎そば」は、
北海道牡丹を殻ごと挽きこんだ、雄渾とした細切り。
ぴんっと張りつめた蕎麦手繰れば、深い蕎麦の香ばしさが鼻孔にのぼる。
口に含むと、ネチっとした粘着感のあるしっかりとした歯ごたえに、
噛みしめれば、どこかぼそっとした素朴さに、
えぐみに似た蕎麦の味わいが、じんわじんわと広がってくる。
重量感があり、食べ応えのある蕎麦は、酒の充てにもなりそうで…
一方の「せいろ」は、丸抜きで打たれた清楚な白肌。
ざくっとした断ち後が穀物感を感じさせ、喉越しほろっと心地よく、
噛みしめれば、蕎麦の甘みが広がってくる 。
感触も味わいも全く異なる二色の蕎麦を、これもしかと堪能し…
ようやく「田舎そば」を頂けた満足感。
熱々蕎麦湯を頂きながら、最後に出されるフルーツ、
糖度の高い、美味し~い苺に、オレンジを頂いて…
濃厚な「傘亭」での時間に、心から満喫した午後のひと時 。
「体が元気なうちに、いろいろな事がやりたくってね…」
と、近々お店を閉めようと思ってるとの言葉に、
言い知れぬ寂しさが、すぅ~と胸をよぎりながら…
ご馳走様でした~
お店を閉められる前に、是非とも又訪れたい。
お土産まで頂いて、にわか雨すぎた通りを、ほろ酔い気分でぷらぷらと…
「手打 傘亭」
新宿区高田馬場3-33-5
03-3364-5758
金曜(祝日の場合は営業)
12:00-売り切れまで。(17:00頃)
店内禁煙
2011年 4月19日 「崩れ豆腐」に「玉子とじそば」
2007年12月12日 「玉子焼き」に「柚子切りとせいろ」の二色そば
2007年10月11日 「崩れ豆腐」「鰊煮」「水晶餃子」、「せいろとうどん」
2005年 8月29日 「せいろと紫蘇切り」二色そば
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気難しいという人も多いですが、話してみるととてもお茶目で、お話し好きのご主人で、何故か私は、大好きでした。
そう、傘亭は、蕎麦だけでなく、ご主人との時間が、かけがいのないものだったように思います。
確かに、厳つい風貌(笑)ですが、何故か私はご主人がお茶目にみえ、話が楽しく、ついつい長居してしまっています。
振舞って下さったい、猪口一杯の、菊理姫が、心に染みました…
梅錦を遣ります、古い銘柄ですが此処での味は格別なのです。
閉めるおつもりなのですねご主人は。
残念であり寂しくも有りです。類稀なる名店の灯が消えるのは。
気難しいかただと云いますが、全く逆で優しい人柄の御主人。
この方は蕎麦とお酒を通してお客さんと触れ合っていましたのにね。
あの値段の「菊理媛」は常に気になっていましたが到底手の出るものではなく、これをオーダーする客が果たしているのか心配なほどでした。
しかしこの酒を置いておくことに、商売に対するご主人の心意気があったのだと思います。
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