すでに2時を回った店内は、先客一人のみの、ゆるやかな空気。
柔らかい笑顔で迎えて下さる花番さんがうれしく、座った途端に汗が噴き出る。



あな、うれしや…。
見るとどのテーブルにも置かれている、風流な江戸内輪。
すぐ手にし仰げば、柔らかくそよいでくる風が心地よく、
ようやく心底ほっと寛ぎ、置かれていた品書きを手にし開く。



すっきりとした蕎麦の品書きに、蕎麦前がいくつか。
シンプルかつ、あればうれしいアテが、最低限のところで揃う見事な品書き。
余計な物などいらん、これぞ江戸の蕎麦前の充て。



さらに、「季節の酒」とあり、これも考慮しての東北のお酒がいくつか並ぶ。
となったら、私も同乗しなくちゃ、福島のお酒「大七」をまずは注文。
（乙女の気分なんて、もはやもう、今いずこ～）



頼むとすぐ、出されたお酒は硝子の徳利に注がれて。



充てには、これで十分一合飲めてしまいそうな程の、
しっとりと炊かれた「椎茸と昆布煮」



それに…、この暑さ、「辛味大根」の文字に体が欲し、
お願いした、辛味大根使用の「しらすおろし」。

ふっくらとして、形の揃った小ぶりのしらすは至極美味しい。
キーンっとくる辛味は、暑い体にたまらない清涼感。



いつしかお客さんのなくなった店内は、これもシンプルな江戸の良さが行き渡る、
簡潔で小気味のいい、すっきりとした「粋」の美。

私も、粋にだらだらとせずにきりっと切り上げようではないか…。
と、お声掛けしてお願いした「ざるもり」一枚。



「もう、お作りしてよろしいですか」の言葉が、何ともうれしく、
すぐ出された、たっぷりの葱が添えられた薬味にもり汁。



続いて、流れるように…
笊に盛られた蕎麦が置かれる。



きりっと凛々しく角が立ち、切りムラのない端正な細切り。



手繰り上げれば、ふっくらとした蕎麦の香りがふわりと横切り…



口に含めば、しっとりとした心地のいい、腰が返ってくる。
派手さはないが、江戸の蕎麦の良さをしっかりと引き継いだこの旨さ。
飽きのこない旨さがあり、噛みしめて行けば、ゆっくりと蕎麦の旨みが広がってくる。

まろやかで、じんわりと出汁の旨みが染みた汁も、しみじみ美味しく、
浸し頂けば、蕎麦の旨さが、きりっと引き立つ。

ああ…、久しぶりに頂いた「しながわ翁」のざるそば。
旨い　。
潔く、滋味、江戸蕎麦の良さが凝縮した心地を感じ…



頃合い見て出された、しっかりと白濁した蕎麦湯を、
汁の旨さを感じ、たっぷりゆっくりと頂いて…

ご馳走様でした～

久しぶりに訪れたけど、ここは、いいなぁ。。
秋風吹いて来た頃に、又訪れ、
熱燗に、湯どうふでほっこり、鶏せいろで〆る、なんて、いいなぁ

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