島根の言葉で、「だんだん」とは「ありがとう」。
そんな、何だかほっこりする名前の、島根に拘ったお蕎麦屋さん 。
ずっと行ってみたいなあ…と、思っていたところ。
丁度今日、沿線で仕事があり、帰りに寄って見よう♪、と思っていたら…
昼に終わる予定がじわじわ押し、等々力に到着したのは既に2時すぎ。
まだやっているだろうか、と不安を感じたが、
こうなったらダメ元、お店の位置だけでも見ておこう。
と、等々力駅前の商店街から、ゆるやかな坂を上っていくと…
程なく、名前の通り、ほっこりとした和やかな風情のお店が、
さりげなく通りに面して佇んでいる。
等々力 「蕎麦 だんだん」
大丈夫、暖簾はまだかかってる
と、おずおずと扉を開くと、すぐ横には石臼の置かれた打ち場があり、
まだ、お客さんが一組、空の丼を前に、ゆったりと話込んでいる。
「まだ、大丈夫ですか…?」
と、お聞きし入ると、すぐに迎えてくれた、実直そうなお若いご主人が、
「あ、中休み、ないので、どうぞ」
と、丁寧に迎えて下さり、空いていたテーブルに腰を下ろす。
中休みなしっっ??
これだけで、もう、うれしくなってしまう~ 。
と奥のテーブルに腰を下ろし、出された品書きをゆっくり開く。
まず目に留まった、「自家製粉手打ち」に「島根県産そば粉使用」の文字。
ふむふむ、聞いていた通り、島根に縁があるんだなぁ…
島根と言えば、出雲、そして割子そば♪
…と思いつつ、品書きをめくってみると、
割子蕎麦の文字はどこにもなく、すっきりとまとめられた蕎麦の品書き。
まさか、「せいろ」が「割子」って事…は、ないよね??
などと逡巡しつつ…
お酒の品書きを見れば、島根の地酒がずら~り、これはいいなあ
…と、せっかくの仕事明け、しかも中休みナシとなったら~~
中からまだ飲んだ事のない、「池月」。
島根の酒造好適米「佐香錦使用」との、
「蛍が生息する素晴らしい土地の酒」の言葉に惹かれ、これを注文。
頼むと、きりりっとした応対で、すぐに出された徳利に猪口。
口にすれば、すっきりとしてふわ~り柔らかな口当たりの、きれいな後味。
確かに、目の前に、蛍の柔らかく繊細な灯りがちらつくような心地感じ…
充てに何か…と、ゆっくりと品書きを眺めていると、
ふむふむ、野焼きなど、お料理にも島根の空気がそこかしこ。
さらに、5個、3個で頼める、「穴子の煮こごり」なる文字も。
煮こごり大好き、しかもこのお酒に合わせてみたい、
と、早速、三個でお願いすると…
程なく出された、「煮こごり」は、琥珀にきらめく宝石のような美しさ。
しっかりと固められたタイプの煮こごりで、食感はぷるんっぷるん。
中には、身のふわっとした穴子に椎茸など盛り込まれ、
これを口にし、頂く酒がさらに美味しい。
しばしゆるゆると、この煮こごりでお酒を楽しんでいると…
この時間でも、又一人入ってくるお客さん。
いいなぁ、中休みのないお店の心地よさ、としみじみと感じつつ、
そろそろお蕎麦を頂こう
と、初めてのお店、割子かどうかは不明だが、「せいろ」をお願いすると、
まず出されたのは、もり汁に、葱に山葵、大根おろしの盛られた薬味の小皿。
待つ間に、ちょっと汁を舐めてみれると、
雑味なくまろやかで、しみじみとした美味しさの、どちらかというと薄めの汁。
そして…、割子ではなく、蒸篭に盛られた蕎麦が出される。
あ…、これは美しい
割子の事などすっかり忘れ見入ってしまう…、
その繊細な蕎麦の中に、丸抜きの蕎麦粒が、密と存在する幽玄美。
手繰り上げれば、すぅ~っと広がる、清々しい穀物の香りが鼻を抜け、
口に含むと…、しっとりとしてしなやか、腰を感じた途端にほろりとほどける。
水のヴェールを纏っているのに、水切れもよく…
繊細で儚い、ほろりと零れる粗挽き蕎麦、正に私の好みのタイプ、
お、美味しい…
するりするり、この感触、これはあの…
と、荻窪や奥久慈のお店の感触を、頭の片隅で思い出しつつ、
いくらでも食べてしまいそう、と、後はもう夢中で手繰ってしまってる。
優しい汁が又この汁に、ぴたりと寄りそい、
この地で、思いがけずの美味しいお蕎麦にうれしくて仕方ない。
頃合い見て出された、ナチュラルな蕎麦湯を注ぎ入れ、
じっくりと味わい、じっくりと余韻に浸り…
お勘定を、と席を立ちつつ、ご主人にお聞きすると、
ご主人のご両親が島根に在住で、その縁で蕎麦粉など入れているそう。
割子なのかと思っていました、
との私の言葉に、「よくそう思われているお客さんがいらっしゃって」
とすまなそうにおっしゃりながら、
ご自身は東京に長いそうで、「江戸蕎麦に馴染んでいるもので」と、
「修業先も、荻窪で…」の言葉に、やはりっ、。
「本むら庵」で修業されたそう。
この地で、本むら庵縁のお店に出会えたなんて、とさらにうれしく、
来てよかった…と、何とも言えない心満たされた思いで駅までと。
ご馳走様でした~
中休みナシも、うれしく、この沿線での仕事がさらに楽しくなってきそう。
とろろも食べたいな、かけも食べてみたい、玉子とじもいいなあ…
などと思いながら、いつしか電車に揺られ、うとうとと…。
「蕎麦 だんだん」
世田谷区等々力8-5-7
03-3705-0262
11:30~22:00(日曜~15:00)
月曜定休
禁煙
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そうなんです、割子はなくても、かま揚げはありました♪。
この蕎麦で、かま揚げは食べてみたい感じです。
本当に、いい蕎麦でした。
それはそうと、これも笑ってしまったのですが、私もご主人に「ぬのはって何ですか?」とお聞きしたんです~。
島根の名産物で、乾燥板わかめの事だそうです。そのまま酒の充てに食べるものなんだそうですよ(^^)。
でも、世田谷、近くまで行かれたらぜひぜひ(^^)。
こちらにいらしていたとは、知りませんでした。
ザンネン。
しかとチェックして下さい。
はい、しなやかでたおやか、それでいて粒々がしっかりと見え凛とした蕎麦でした。
もし行かれたら、是非感想お聞きしたいです。
ああ、房総にも行きたい・・
ぜひ、行かれて見て下さい。
全く同じ、というのではないですが、きちんと本むら庵の蕎麦の良さを引き継いだ蕎麦でした。
とろろや、鴨せいろも、修業先と同じように作っているとの事です(^^)。
飯山…、ちょっと遠いですが、行ってみたいです!。情報ありがとうございます♪
品といい、蕎麦のたたずまいといい、いい感じですね。
確かに割子はありませんが、
こっそり?、書いてある「かま揚げそば」は、
閉店した某手打ち出雲蕎麦店でもいただいた事がありますが、
地元、出雲風メニューですね。
「めのは」ってなんだろう?
こちらも食べてみたいです。
等々力は等々力渓谷なんかもありますから、
行く機会があれば是非寄ってみたいです。
魅力的なお店ですね~(^-^)
以前、多摩川サイクリングロード(多摩サイ)走っていて、
ニコタマから駒沢通りに入り、六本木とかへ行っていましたが、
駒沢通りの起点(終点)に近いでしょうかね?
(歯医者通いのバリエーション 笑
本村庵系統の、ということですが、しなやかさ、たおやかさは
当店の持ち味でありましょうか?
今回は目黒通りを駆け抜けてしまったが(お急ぎだったので...)
本当は駒沢通りとか深沢界隈が好きであります。(裏道人生 笑
運良く遭遇できればいいのだが...はあ、豊の秋、貴とか好きな
モノも多いし...チェックいたしました、有り難うございます。
見るからに本むら庵系の、と思ったらやはり、
我家からも近いし早速行ってみたいと思います。
等々力は生まれ故郷ですし良いお蕎麦屋が出来て嬉しいです。
本むら庵系と言えば、御存じかもしれませんが、
信州の「山の実」と富倉「はしば食堂」との中間
飯山市街に「しおいり」というやはり「本むら庵」系の
お店があります。
北信濃の地で本むら庵スタイルのお蕎麦に出会えます。
あちらにドライブに行かれた際は是非。
→ yuka (04/08)
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