ちょっと前に、ご主人から丁寧に届いたメールを読ませて頂き…
「発芽蕎麦」を打っていると知り、東京で食べられるなんて!と、
これは是非食べに行かねば…と、思い募らせ、…今日
朝方から掛け持ち仕事を済ませ、目黒からバスに乗り込み一路麻布へと。
麻布交差点から青山墓地へと向かう大通りを、道なりに歩いていくと、
静かに、さりげなく下ろされた、ささやかな間口に純白の暖簾。
目立たぬ程にそっとかけられた看板には、蕎麦の文字がなく、
ちょっと密やかな雰囲気に、すでに心が騒ぎ立つ…
麻布 「祈年 手打茶寮」-kinen -
どきどきする気持ちで、扉を開き中に入ると…
なんて、明るい素敵な空間 。
真っ白の壁が清らかで神々しく、一枚板のカウンターがすっと伸び置かれ、
後ろにふたつ、奥に個室仕立てのテーブル席のみの、心地よい上品な空間。
漂うハイソな空気にちょっととまどうが、暖かく花番さんが迎えて下さり、
このカウンターの端にそっと腰を下ろす。
BGMもない、静かでしっとり空気が落ちて行く空気の中、
後ろの天井から吊るされた青竹から落ちる水音が心地よく響いている。
次第にこの空間に馴染み寛ぎ始め、置かれている品書きを…。
楽しみにしていた今日、しかもこんな空間の中に身を置いたら、
やっぱり、まずは蕎麦前を頂きたい。
好みの「日高見」の文字がすぐ目に留まり、まずはこれを頂いて…
とお願いしたお酒は、涼しげな素敵な酒器に注がれ、
ガラスの器で頂く「日高見」は、一層爽やかで美味しく喉を落ちて行く。
充てにも何か…と、開いた品書きはとてもさっぱりとしたお品書き。
「実は…」と花番さんが、「昨日まで休みだったので今日はないのですが…」
と、普段は、日替わりのお料理もあるそうで、見せて下さったお品書き。
いくつか食べてみたかった品書きがあって、これは残念~
定番の品書きから、シンプルに書かれた「サラダ」を選びお願いすると、
さささっと盛り付けて出された、彩も美しい清々しいサラダ。
かかった醤油仕立てのドレッシングが程良く野菜に馴染み、これもいいなぁ 。
と、サラダにお酒を頂きながら、どうしても気になりお聞きすると…
やはりっ、「発芽そば」となったら、長野の「大西」。
思った通り、ご主人は「大西」さんで修業なさってきたそう 。
…と、ますます蕎麦に対する期待が膨らんいると、
これはうれしい~、サービスで出して下さった「野沢菜」。
さすが、「大西」で修業なさったご主人、長野直送の野沢菜だそうで、
これが、しみじみ~と美味しく、しばしのひと時を楽しみ…
…が、心が蕎麦に向かっているのを抑えきれず、早速お蕎麦を。
蕎麦は、「定番のもり」(粗め)に、「豊穣」(発芽蕎麦)と「吟白」(更科)の三種類。
「粗め」の「もり」にも強く惹かれたが…、
今日は目的の「豊穣」と「吟白」の二つが盛られた「二色そば」を 。
程なく、漆器の蕎麦猪口に陶器の徳利、山葵と葱の薬味を添えて、
深めの長方形の蒸篭に盛られ出された、姿の異なる二つの山。
置かれた瞬間オーラを感じる、何とも美しい蕎麦の姿…
まずは、一度食べてみたいと思っていた、発芽蕎麦。
蕎麦の実を一度発芽させる事によって、眠っていた酵素が活性化して、
栄養やルチンが増える、息吹いている蕎麦を打った蕎麦。
角が立ち端正に切り揃った蕎麦は、どこか透明感あり瑞々しく輝く。
その中に、びっしりと埋め込まれた美しい蕎麦の粒々。
な、なんて美しい…
食べてしまうのが惜しいような心地になりながら、しばし見つめ、
そっと手繰り上げると、ふわ~と途端に立ち込める、温もり感じる穀物の香り。
口に含むと、もちもちとした腰が返り、心地のいいぬめりに、
噛みしめると、じわじわ広がる穀物の甘み。
それがするる…と落ちながら、微かに感じるざらつき感がたまらなく、
飲み込んだ後に、又ふっと鼻孔に立ち上ってくる芳ばしさ。
こ、これは美味しい~…
繊細でありながら、野趣さを携え、目の前に蕎麦畑が広がるような、
蕎麦の素朴さと優しさに温もり…、もう、うっとり。
そして、隣に楚々と佇む、水捏ね十割で打たれた「更科そば」。
きらきら煌めく、そのはかないまでの美しい蕎麦は、凛として、
口に含むとしなやかな腰があり、噛みしめると跳ね返るぷりぷり感。
そよりとした気品を感じながら、すぅ~っと広がる甘みを感じ、
ああ、なんて優雅な、毅然としたそばだろう…と、これにも夢中になりながら、
そっと浸す汁は、やや甘めで濃い目の汁で、後にすっと残る上品な鰹の風味。
これが蕎麦の風味を支え、きちんと伴奏になっている深みのある汁で、
さらに蕎麦の甘みを、ぐんっと引き立てるよう。
と、無言のうちに蕎麦に向かい、頃合いぴたりと出された蕎麦湯を注ぎ、
すぅ~っと伸びのあるこの汁が、美味しい。
と、ふたつの蕎麦の余韻に浸っていると…
ご主人が出てきて下さり、「ご覧になりますか?」と見せて下さった、
「豊穣」を打った蕎麦粉を出して下さる。
これも美しい、粗く挽かれた蕎麦の粉。
…と、もうひと皿の上の蕎麦粉はっ…
な、なんて粗さ、「これは…?」とお聞きすると、「定番のもり」だそう。
「これも、食べてみたかったんですよ~」
と思わず言ってしまった私に、
「丁度、大盛りを食べた人の半端分があるので…」
と、出して下さる
これも何て素晴らしい、丸抜きの蕎麦の欠片が詰まったこの蕎麦。
手繰り上げれば、又さらに芳ばしい濃厚な香りが立ち込め、
しっかりと力強い腰に、雄々しく感じる穀物の芳ばしさ。
んんん~っ、美味しい~っ
と、すっかり興奮気味になっている所に、さらに出して下さったのが、
同じ蕎麦を使って作られた、「冷かけ」蕎麦。
ほとんど透明な冷かけ汁に入った、蕎麦の姿に見とれ…
まず汁を口に含むと、この汁、これがすごい
薄いというぎりぎりの線の、心の芯に染み入ってくる、柔らかくて上品な極上汁。
まるで湖の底を眺めているような、清々しい旨み。
この汁にすっかり魅了され、中の蕎麦を手繰れば、
きんっと冷やされた汁の中の蕎麦は、ぴんっと張るような強さがあり、
この汁を纏い、芳ばしさと甘みが交わる素晴らしさ。
ご、ご主人、これはすごい…。
こうなったら、暖かい「かけそば」も食べてみたくなってしまうが、
さすがにもう入らない… 残念~っ
上田の「大西」さんで3年修業した後に、開店してまだ2カ月。
この完成度の高さに驚くと共に、さらにこれからが楽しみになってくる。
自然の恵みに感謝する気持ち大切にしたくて…
と名付けたと話すご主人は、まだお若く甘いマスクの素敵な方 。
気さくにお話して下さるのもうれしく、今度は黒板のお料理も頂いてみたい…。
本当に、ご馳走様でした~
青山霊園横をお散歩がてらに…
お店を出た途端に思ってる。又、あの蕎麦に会いに行こう。
「祈年 手打茶寮」
港区西麻布1-15-9
03-6447-2308
12:00~16:00 / 18:00~22:00
月曜定休(休日営業、翌日休)
禁煙
お店のHP
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十分に書ききれなかったのがもどかしいくらいです。
本当~に、ご馳走様でした(^^)。
>こういううれしい時間をいただけたこと
私も、このエピソードを読ませて頂いて、とてもうれしいです。
それもこれも、鈴木さんのお蕎麦が素晴らしかったからです、し(^^)。
写真が、本物のように美しく映らなかったのが、とても申し訳なくいたのですが、ちょっと安心しました。
又、ぜひ・・・
伺わせて頂きます。
コメント、とてもうれしかったです。ありがとうございました。
どこの店の記事なのかを忘れ、思わずウットリしながら読んでしまいました!
冷静になると気恥ずかしいような。
昨日、若い男性の方が、母親においしい蕎麦を食べさせたいと、ゆかさんのブログを見て、お母さんを連れてお見えになりました。お母さんも喜んでくれて、お母さんの喜んだ様子を見て息子さんも大変喜んでくれました。
こういううれしい時間をいただけたこと、ゆかさんの記事に感謝です。
Whiteさんのところにも届いたんですね(^^)。
今から、ブログアップ、楽しみにしています。
(青山霊園の桜は見事ですよ~)
行ってみようとお昼に出発。
さすがというか西麻布。
住んでみたい気がしますが、ここに住めるならNYに行くかなどど有りもしない夢を。
帰り道は青山霊園がおすすめです。
外人墓地があるとは知りませんでした。
お店のコメントは、その内、我がブロクにあがるでしょう。
そうですね、値段は、かなり強気な値段でうが、手間暇を考えると、発芽蕎麦は妥当かな、とも思いました。
コースは…
品書きにはなかったように思うのですが、確認してみないと(^^;
夜、いいですね♪、ご一緒したいです。
もう大分前に行こうとしていて
失念してました。
ちょっと、高いかな?と思っていて
躊躇したようなきがした。
コース料理あったような気がしたんだけど。
はい、きっとshinさんの好みのものに近いと思います(^^)。
冷かけも、是非。
このかけ汁は、なかなかないかもしれないです。
麻布の交差点、アマンドの先にあるので、すぐにみつかると思います。
ご主人、本当は千葉の田舎でやりたかったそうなんですよ。(物件がキャンセルになってしまったそうで…)
更科も、この粗挽きの発芽蕎麦も、どれもが秀逸でした。もし機会があったら、是非・・。
確かに…、そういう雰囲気、流れていました(^^)
一滴とも残さずに頂きたくなってしまう程…。
にこらさん♪
懐かしいです。蕎麦はもちろん、お料理の素晴らしさが心に残っています。
同じものを♪?、きっと好みも似ているのかも…。
ああ、又京都に行きたくなってしまいます。
こちらも、水捏ねで十割の更科を打たれていて、素晴らしかったですよ。
しかも、この粗挽きをきれいにつなげているのも見事。是非、行かれて見て下さい♪
東京発の「発芽蕎麦」です。
駅からは少々歩きますが、又行きたいと思っていいます。
この色、荒さ、そしてコシ(想像ですが)最も好きなタイプの蕎麦でしょう
麻布ねえ、近いし行ってみよう
やっぱり23区内は違いますね。
それにしてもきれいな更科!うっとりです。
冷やかけのお出汁、味わってみたいですー!
これからの季節、とても美味しくいただけそうですね。
先日、にこらでお蕎麦をいただいていきました!yukaさんの記事を帰って読んだら、いただいたお酒もお料理もほぼ同じでびっくり!
うれしい驚きでした。
今の時期、鮎の山椒煮もメニューにあり、少し濃い目の味付にお酒がすすみました。
お蕎麦はほんのり甘くて、美味しかったです!デザートの杏仁豆腐までしっかり頂き、幸せなひとときでした^^
独自の更科蕎麦で有名ですね
そこで修行なさったのですか
いつか訪ねてみたいです
更科ももちろんですが
あの粗い粉で見事につながってますね、素晴らしい!!!
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