初めて降り立つ押上の町並みは、懐かしい片鱗が所々に残された下町情緒。古い記憶にあるような不思議な気持ちにさせられる。
今は見かけなくなった古いトタンの看板や、石油のタンク。川沿いの家並みもどこか昭和の空気が漂っている・・・。
そんな押上の町に、珈琲とお蕎麦という不思議なお店があると聞いて、途端に行ってみたくなってしまったお店。
押上の静かな商店街通りをぷらぷらと歩いていると、年月を感じさせる長屋作りのお店に突然行き当たり、その風情が何とも不思議な魅力を放っている。
押上 「長屋茶房 NAGAYA CAFE 天真庵」
天真庵と書かれた、風情ある看板の横の扉を開けると、な、なんて素敵なレトロな空間!
一歩足を踏み入れた途端、タイムスリップしたような不思議な感覚に、一瞬息を呑んでしまいそう。
細長く作られた長屋ならではの土間仕立ての空間に、窓から日の光が柔らかく所々差込み、木々の温かみで充満している。
優しそうなご主人の立つカウンターがあり、そこで珈琲片手に寛ぐ人々。横に3つ程あるテーブル席が又、懐かしい風情たっぷりで、遠い昔に置き去ってしまった数々の風景がそこに詰まっているかのよう。
ふっと心が和らぐような、暖かい笑顔の優しい奥様に出迎えられると、すっかりこのお店に自分も馴染んでしまう、不思議な感覚。
もう、何もいらず、座っているだけで憩ってしまいそうに思いながら、置かれた品書きに目を通すと、これも不思議なメニュー構成に、戸惑いながらもワクワクしてしまってる。
まずは、京都の珈琲屋で修行したとの、ご主人自ら焙煎する珈琲が並び、玉露や、煎茶、それに並んで日本酒が書かれているのも珍しい。
そして、達磨の高橋さんから修行された「ざるそば」に、「そばくれーぷ(ガレット)」、そばっこ雑炊や、ところ天まで・・・。
既に午後も3時を回った時分、売り切れじまいとのことなので、奥様にお蕎麦があるかどうかお聞きすると、うれしい事にまだ残っているとの事。だったら是非是非っ と、「ざるそば」と、ちょっと気になる「そばっこくれーぷ」を珈琲付のセットでお願いすることに。
まずは、「そばっこクレープ」が、これもご主人自ら作られた陶器なのだろうか・・、味わい深いお皿に盛られて出される。
やや厚めに焼かれた蕎麦粉で作られた、文字通りの「くれーぷ」に、蕩けたチーズと海苔を挟んだもの。柚子胡椒と返しが沿えられ、それを漬けて食べてください、と、出される。
箸を入れると、とろ~~と伸びるチーズが楽しく、口に含むと、素朴な蕎麦の風味に、海苔とチーズの味わいがまるでお餅の磯部焼きを思い出される。しみじみしと味わい深い、日本人の大好きな味。柚子胡椒、これが利く~っ。
お蕎麦もお持ちしてよろしいですか?と、聞いてくださり、お願いすると、程なく出された蕎麦も又、味のある陶器のお皿で。
達磨で修行なさったということは、二八だろうか、見るからに素朴な佇まいの田舎風の蕎麦。お世辞でも、美しい蕎麦とは言いがたい、長さ太さのマチマチな蕎麦なのだが、なんだか不思議に温かみを感じてきてしまう。口に含むと、ややぼそっとしたものの、素朴な風味があり、これはこれでしみじみとした美味しさが、ゆっくりじわじわと感じられる。
汁が又、ちょっと不思議。そのまま口に含むと、鰹の風味というよりは、ひじきの匂いがふわ~と香る。な、なんだろう・・・これは・・・。それが、とても美味しい汁であるから又面白く、しかも、蕎麦にちょっと浸して頂くと、不思議とふわ~と柑橘類の爽やかさが感じられる。んんん~・・・不思議な汁。。
首をかしげながらも、するすると頂く蕎麦が、心に染みるような不思議な感覚で、ナチュラルな蕎麦湯を注ぎ、ほぉっと。
「珈琲もお持ちしましょうね」と、セットの珈琲がゆっくりと最後に出される。友人の、「ほぼブラジル」と書かれた珈琲は、湯のみに似た陶器の器で。私は、その響きが何だか懐かしく、「ミルク珈琲」を選ぶと、抹茶茶碗に出して出される。
やや日の短くなった西日に当たりながら、喉かな時間の流れに浸ってしまう、不思議な空間・・・。大人しいチワワや、帰って行く人あれば、又入ってくる人と、ゆっくりと入れ替わる人々の様子までが、古い映画のシーンのよう。
こんなお店が東京にあったなんて・・。
最近よく手にする京都のガイドブックの中に出てくる、喫茶店や珈琲屋(かふぇ)の風情を思い出され、知らず知らずにこの空間の虜になってしまいそうな予感を感じてる。
ああ・・、ここでのんびりと、午後のひと時にゆっくりとお酒も頂いてみたいな 。
帰りがけにちょっと声をかけて下さったご主人の瞳が、とても暖かく、すっかりこのお店を気に入ってしまってる・・・。
この不思議な空気を味わいに、是非又訪れてみたい・・・。
外に出ると、いつしか風も涼しくなり始め、すっかり秋の気配を感じてくる。
ご馳走様でした 。
東京はまだまだ広い・・。こういう素敵なお店と出会えるから、やっぱりやめられないなぁ~
3軒回ったお店、それぞれが全く違う魅力のお店に、満喫し充実した一日 。
よく歩いたけど、ほんっとに、楽しかった・・・。
お付き合い下さり、本当にありがとうございました~
*お品書き
ほぼブラジル、今日のストレート、ミルク珈琲 500円、ハートランド 600円、鳳凰美田、回春、風まかせ、死神、帰山など 800円、
ざるそば、そばっこくれーぷ、そばっこ雑炊 800円、珈琲とのセット 1,050円、
文膳(お酒、ざるそば、香の物、珈琲)、花膳(お酒、酒肴、ガレット、珈琲)各2,000円など
「長屋茶房 天真庵」
墨田区文花1-6-5
03-3611-1821
11:00~19:00
金曜11:00~22:00
木曜、第4水曜定休
お店のHP
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お休みでしたが、shop cardは頂いてきたので、ぜひこちらにも行ってみたいと思っているところです。ありがとうございます。
こちらこそ、すみませんです。
(って、FC2が悪いのよね~^^)
出てるのに無理にコメ入れようとしたもんだから
すみませんねぇ
ご存知でしたとは、さすがです!
文花、すてきな名前ですよね。
そして、このお店。
絶対、癒されちゃうと思います。
ぜひ・・、行ってみてください。
私も、今度行ったらspace cafeも覗いてみます♪
私も又・・・、楽しみにお待ちしております。
あ、そういえば、
東京タワー。。。。
変わって欲しくない街です。クスン。
珈琲、私も大好きなんです(^^)。
豆から挽いて飲んでますです♪
一変してしまうのだろうなぁ
でも、お蕎麦で珈琲かぁ
珈琲も好きなので美味しい珈琲淹れてくれる
お店は大歓迎だわ
家ではあまり淹れないので
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