扉を開けば、陽の光を遮ったほの暗い空間に、
赤々と炭が熾り、温かな柔らかい空気が体を包む 。



「大テーブルでもよろしければ…」
丁重に通され上がった、高い高い天井の床の間。



丁寧に淹れられたのが伺える、出された緑茶がとても美味しく、
早速、「季節の品書き」を手にすると…



あれっ？、「淡き水そば」が、ないっ 。
お聞きすると、やはり先月いっぱいで終わったのだそう。

残念…、今年も食べ損ねてしまったか…

ないものは、仕方なし、
気持ちを切り替え、品書きをめくり、



「冷たいそば」」に、



「あたたかいそば」…
彼は、たまにはシンプル、と「二八もり」に決めたようで、
ならば、まだ食べていない、「かけそば」を頂こう 。

座っているだけで心和む空間で、ぼおっと想いふけっていると…



待つ事程なく、二つのお盆が到着～。
わぁ、なんと「蕎麦寿司」付き 。



湯気立てる丼には、菜の花が粋にあしらわれ、



早速蓮華で汁を掬うと…、

はぁ～、こっ、これは美味し～い 。
さすが「車家」、なんて奥深く柔らかく、心に染みる汁だろう…。

それぞれの出汁が見事に和んだ、
すっきりと上品でいて、味わい深く、
口に運ぶ毎に、その旨さの余韻が残る。



中に横たわる蕎麦は、やや太めに断たれ、
もちもちっとした腰が実に心地良く、
汁の旨みを吸った蕎麦が、又素晴らしく美味しい 。

手繰る毎に手繰る毎に、この「かけそば」の虜になっていく…



一方、彼の「二八もり」も、美しい配膳。



ピシっと角立ち、ほのかに甘皮の陰影が透ける、
凛々しい細切りが、塗りの蒸篭にふわっと盛られ、

「これは旨いっ、しかも汁がいい」
と、それぞれの蕎麦にすっかり夢中。



途中で、添えられた揚げ玉を放てば、



サクサク揚げ玉がふわふわと汁に染み、
途端にコクが加わる汁の、味の変化に、
揚げ玉が絡んだ蕎麦が、又美味しい



しかも、添えられた「蕎麦寿司」の美味しい事っ 。

キリっとした極細の蕎麦は、絶妙な酢加減。
卵にかんぴょう、おぼろに胡瓜が口の中で混ざり合う、
見事な蕎麦と具の調和… 。

思わず、お替りしたくなっちゃう程。



汁まですっかり飲み干し、心からの大満足。
又来たら…、「かけそば」を頼んでしまいそう。

ご馳走様でした～

優雅で心落ち着く、古民家で頂ける贅沢なるひと時に…、
今日も、平和なお昼ご飯 。

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