扉を開けば、休日昼下がりの長閑な空気。
仲良さそうな、お子様連れのご家族の姿が羨ましく…

無言で二人腰を下ろし、
むすっとした彼は、品書きを独り占め、…やれやれ 。
待ってる間にふと見れば、「本日の蕎麦」は「けし切り」。



又粗挽き蕎麦を頂こうと思っていたけれど…、
見たら、何だかとっても「けし切り」が食べたくて、

お願いしたのは「芥子切り」、
彼は「鶏汁せいろ」を十割そばで、と告げ注文。



会話もないので、壁に貼られた一品料理を眺めていると、
幾つも並んだ、食べてみたくなる魅力的なお料理。

明太子とチーズを挟んだ、「はんぺんのカリカリ揚げ」や、
「白魚の海苔巻き揚げ」に「蕎麦寿司」などなど…



又ここで蕎麦前、してみたいなあ、
と静かに思い、待っていると…



「お待たせしました～」と、程なくお蕎麦が到着。



蒸篭にこんもりと盛られた、
艶やかな白肌蕎麦には、ポツポツと埋まる芥子の実。



顔を寄せた途端に、ふわ～っと芳ばし～い芥子の香り。
ん～、いーい匂～い 。



手繰り口にすれば、ややざらっとした表面の程良い歯ごたえ、
噛みしめれば、その瞬間に広がる芥子の香ばしさがたまらない。

汁などいらない、芥子の味わい豊か。
ん～、やっぱり、芥子切りっていいなあ…

と、一人静かに食べていたら…

「こっち…、食べてみる？」
とおもむろに、ぽつりと彼。
ん？、こりは…、和解交渉？



では…、お言葉を有難くお受けしましょう～。



十割蕎麦、粗挽き蕎麦は、
きちんと生産者の名前も記された、茨城常陸秋そば。

かなり細めに断たれた蕎麦は、表面ざらりとした穀物感、
きりっとした腰に喉越し良く、すっと落ちながら、
ふわっと広がる、爽やか清々しい蕎麦の味わい 。



熱々鶏汁は、やや甘めのすっきり仕立て、
蕎麦の風味を邪魔せず、これはいいなあ…

交換して食べながら、だんだんに、
鉄のカーテンも崩れ始め…

ご馳走様でした～

お店を出る頃には、何だか表情も和らぎ始め…
これもやっぱりお蕎麦パワー。

今度は最初から、仲良しムードで又来ます… 。

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