立川での打ち合わせが昼過ぎでようやく終わり…、
ここまで来たら、八王子はもうすぐそこ。
行こうと思っていた矢先に、地震・停電などで
ずっと、伸び伸びになってたお店へ行ってみよう~
と、中央線に乗り込み、降り立った西八王子。
甲州街道から路地を入った、全くの住宅街の中を歩いて行くと…
忽然と現れる、そこだけ違う空気が漂っているかのような、
ぐるりを黒木の塀が囲んだ趣ある、しっとりとした佇まい。
ああ、久しぶり…
又、是非訪れたいと思っていた、八王子の大人の隠れ家…
西八王子 「蕎麦 坐忘」
塀を潜れば、禅味感じる前栽が足元に植え込まれ、
独特のにじり扉を、かがんで手に掛け開いてみれば…
ひっそり密やかな、落ち着いた和の空間が目の前に広がる。
既にそろそろ2時になろうかと言う時間。
平日の昼下がりは、とうにお昼の喧騒は過ぎ去り、
一人二人が、ゆるりと寛いだ、しっとりとした空気に満ち…
一人である事を告げると、今日は大広間の壁際のテーブルに通される。
ああ、いいなぁ、やっぱりこの空間は…
「居ながらにして、時を忘れて頂きたい・・」
本当に、座った途端に、諸々煩わしい事など今は忘れ、
ひと時、ここでゆっくりと寛いでしまいたくなってしまう。
と、美味しいお茶を頂きながら、まず手にしたお酒の品書き。
今日は暖かいのかと思っていたら、時折吹く風がまだ妙に肌寒く、
ちょっと暖まりたくて、熱燗を。
と、出されたお猪口の足がなんだかいびつなような…?
手に取り裏返してみたら…、これっ面白~い
と、一人くすくす笑っていると、花番さんが見ていらして、
「三酒類あるんですよ(^^)」
と、見せてくれた、対の猪口なのかな、どれも愉快なお猪口のお顔 。
ひっくり返してみなくちゃ分からない、遊び心溢れたお猪口で、
早速頂いた、新潟「緑川正宗」の熱燗は、口当たり柔らかい、優しいお酒。
この猪口で頂くと、ますます美味しく感じるなぁ
と、お酒を口にしつつ、添えて出された「焼き味噌」は、
西京味噌仕立てで、まろやかな味噌の風味がふわっと広がる。
中の蕎麦の実などがカリカリと香ばしく、この焼き味噌は美味しいなぁ 。
と、すっかり寛ぎ出したところで…
常々頂きたいと思っていた、季節の小鉢「前菜三品」を早速注文。
頼むと程なく、まず出された、「えんどう豆豆腐」。
口に含む途端に、とろ~っと蕩けて行く滑らかお豆腐は、
えんどう豆の豆の味に甘みが、とにかく濃厚で、もううっとり。
優しくてまろやかで、奥行き深いこの味わい。
花びらを型どった百合の根も又、ほこっと甘みがあり…
何て何て美味しいのかしら、
もう、これだけで幸せになってしまう~~
すっかり魅了されてしまったところに、続いて出された二品目。
「独活とうるいと若芽の酢味噌和え」。
こっ、これが、又美味し~いっ…
さっくり柔らかくも歯ごたえを残した独活は、その風味が新鮮で、
何よりもこの、酢味噌が、際立って美味しい。
濃厚かつ滑らかで、柔らかく、どこまでも円やかなこの酢味噌。
これだけででも、お酒が進んでしまいそうな程の、見事な味わい。
さらに三品目は、変わって温菜、「春野菜の炊き合わせ」。
ほこほこっの清々しい新じゃが芋に、ほっこり炊かれた牛蒡、
菜の花の風味が、又これとない春らしさを感じさせ…
細やか且つ、繊細で優美なお料理に、坐忘さんの料理のすっかり虜 。
さらに、コース料理に必ず出しているという、「辛味そばがき」。
ちょこんっとかわいく丸められた「揚げそばがき」は、
箸を入れると、その表面は、かりっかり。
香ばしいその表面の下には、とろ~っと、耳たぶのような優しい蕎麦がき 。
揚げられた周りの香ばしさがたまらなく、
口の中では、ほろりと溶けて行く蕎麦がきの蕎麦の豊かな味わい。
きりりっとした辛味大根が、さらに蕎麦に甘みを感じさせ、
これはもう、はふはふと、夢中で食べてしまう。
ん~、これ、大好き
BGMのない、密やかながらも穏やかでゆるりとした空間で、
こんなお料理が頂けるなんて、なんて贅沢なんだろう…。
時折、ほおっとしながら見つめる壁は、
これも趣感じる、古代の「花文書」。
なまじっか、関係ない事もないだけに、見るともなしに目が行って、
いつか、一つ一つをじっくり読んでみたいなぁ、などとぼんやりと思いながら…。
「坐忘」…、正に、その名の通り、
と、一人、ぼおっと憩いのひと時に浸りきって…
そろそろ、お蕎麦を…、
と、これも念願だった、「手挽き(粗挽き)せいろ」をお願いすると、
程なく、高台付きの笊に盛られた、繊細な細切りの蕎麦が盛られ出される。
玄蕎麦を手挽きした粉に、丸抜きを電動石臼で挽いた微粉と合わせ、
十割で打たれた、上品な粗挽き。
きらきら輝く、端正に切り揃った滑らかな表面の蕎麦の中には、
時折、素朴な姿の蕎麦の欠片が埋め込まれ…
手繰り上げた途端に、むわ~っと鼻孔に上ってくる、
お天道様を思い出すような、芳しい蕎麦の香り。
三芳の蕎麦を打っているという、この蕎麦の香りに、途端にうっとり 。
口に含めば、しなやかな心地のいい越しがあり、とても軽やかな口当たり。
噛みしめると、キシっとキシッと欠片が歯に当たり、
手繰り続けるうちに、懐かしい心地になる、蕎麦の味わいがじわじわと広がってくる 。
汁に浸してみれば、ああ、この汁、美味しいなぁ…。
まず感じる、ふわっと広がる鰹の風味。
雑味なく、清らかで澟とした汁が、静かに蕎麦の風味を持ちあげているよう。
ああ、とっても幸せ…
と、無心で手繰っていたら、あっという間。
頃合い見て出された蕎麦湯は、さらりとして白濁とした美味しい蕎麦湯。
汁の美味しさをしみじみ感じながら、これもたっぷりと頂いて…
これも頃合いぴたり見て出された、最後の甘味。
蕎麦粉と蓬の和菓子は、ふわっと広がる蓬の風味がたまらなく、
ああ、もう、感無量…。
ご馳走様でした~
ご主人とも初めてゆっくりとお話しできた事も、とてもうれしく…
ああ、やっぱり、蕎麦屋っていいなぁ…(水野 晴郎のよう?)
こうして、お蕎麦屋さんに行ける事、それを、何よりも感謝したい…。
手打ち蕎麦 坐忘
八王子市千人町3-14-11
0426-61-2945
11:30~15:00 / 17:00~21:00
水曜定休
お店のHP
2006年11月27日 「昼の天もり」
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テーブル席ではなく、まだお座敷があったころなんです。
だいぶ変わったんじゃないかな、と思います。
常々、久しぶりに伺ってきたいと思っているところです。
BGMや、壁の古文書などなど、
その時に、改めてみてきます。
違いました。BGMもかすかにかかっ
てましたし、時を忘れるという意味
では土家さんに勝るものではありあ
せん。
しかしコースをいただきましたが、
お料理が見事ですね。トウモロコシ
豆腐なんか香りが良くて。揚げ蕎麦
がきのカリッと感がたまりません。
そばつゆは濃いめですが確かにキレ
がいい。蕎麦湯は酸味に近い珍しい
味でした。
yukaさんがじっくり読みたいと
おっしゃる壁紙は…、漢文?読める
わけないわと諦めつつ料理の待ちで
眺めていると…、火災、殺人?なん
だか物騒な言葉が。検索してみると
孔子が書いた春秋というクロニクル
にさらに注釈をつけた古文書と分か
りました。蕎麦屋で孔子とは。
それは、興味しんしんです。
伺ってみます(^^)。
情報すごくうれしいです。
ありがとうございます♪
カタクリのおひたしが旬のメニューにありましたヾ(@⌒ー⌒@)ノ
なんだか、時空を超えて、一緒に楽しんだような感覚を感じます(u_u*)~。
あの、酢味噌はすごいですよね!
レシピを聞いたのですが、とてもとても自分でやる気にはなりませんでした。
それはそうと…
えっ?と思って、私も偶然残っていたレシートを見たら、確かに950円になっていました(^^;
岡崎さん、素敵なお言葉ありがとうございます。
これまでの10年を振り返り、年を重ねた事を感じながらも、
これから先の10年後の自分が、よかった、と思えていたら、幸せだと思います。
常に…、後悔はせず、反省はすべし、の心で生きております。
贅沢に、どこも優越つけがたく、どこもせれぞれの違う魅力を持つ、3店の蕎麦屋。
ほんとう♪
VIVA八王子です(^^)。
今週は中央特快も時刻どおりで快調。
(運転士が小柄な若い女性だった)
目指すは 高尾 多摩森林科学園の桜
の前に 一つ手前の西八王子で下車。
yukaさんレポートのこの「前菜三品」が食べたくて
前夜地図を見ながら双方の場所確認してました。
ほんと美味しかった・・・
酢味噌が 酸っぱくも、味噌っぽくもなくて
泡立ちふんわり和製ホイップクリームな食感・・・
「ふきのとうとかたくりの天ぷら」と「せいろ」で
これまた春を堪能し、ほろ酔い気分でいざ南浅川へ。
川岸の八重桜の並木を対岸から眺め、一駅分を散歩。
森林科学園内でも人が少なく各種桜を堪能。
yukaさんのナイスタイミングなリポートで
良い一日となりました。ありがとうございます。
○泉の提灯も確認したので機会があれば
こちらも行ってみたいです。
ところで
「前菜三品」お店のHPとレシートでは950円。
yukaさんの写真にもあるメニューでは900円・・??
もしかしてメニュー直し忘れていらっしゃるのかな?
そそ、敷居の高い蕎麦屋なんてない、
にじり口を入っちゃえば皆一緒。
好きです、坐忘のあのこじんまりとした、
胎内のような長居仕様の空間は。
それにしてもyukaさんは
そのままおでかけと読書を続けて行かれれば
いい日本人性を体現出来たいい女になりそうですね。
成長は目に見えないものだけど、
振り返れば自分の辿った道は分かる。
数十年後に振り返った時に
自分の人生は間違っていなかった、と
己の来歴を全肯定してあげられるといいですね。
蕎麦通をうならせる店が近在してます。
○っこう 坐忘 ○泉・・・とね。
何処も謙虚で実力があり
個性豊かなお店ですよね。
ビバ・・・八王子♪
そうは言っても、蕎麦屋は怖いものも、格式高いものもなし、
何よりも、ゆっくり寛がせて頂けます。
行きましょう~
行きましょう~
お蕎麦屋さんに♪
心もお腹も幸せにしてくれますよん(^^)
私も久しぶりに訪れて、心底満喫、言う事なしのひと時でした。
昼の旬彩コース、食べに行きたいなー…
(コースは一人だと寂しいし・・)
私も一緒に行きたかった!
まあっ、うれしい(^^)♪
「ア・ポワン」、知らなかった!
今度は、私もそれをセットで伺いたいです。
何となく、遠い?
なんて心で考えちゃったりするんですが、なになに、中央線に乗ってしまえば、あっという間。
ぜひ!さくじさんも、計画実行して下さい♪
先に置いて行かれちゃったんですも~んっ。
いやぁ、よかったです!
今度は、連れて行って下さいね(^^)。
こんな雰囲気で酒を頂ける、
それだけで贅沢な心地にさせられます。
久しぶりに訪れたのですが、又すぐにでも伺いたくなりました(u_u*)~
お兄様がお料理を担当。
それぞれがきちんとした仕事をされて、心から満足させて頂けます。
そして、何よりも・・
こんな空間で頂ける、有難さ。
ぜひ!伺ってみて下さい(u_u*)~
八王子なんですね
入るのにスッごく緊張して心臓ドキドキ
しそうだけど、入ってみたい
食べてみたいなぁ
お蕎麦屋さんでほんとに季節の
お料理がたくさんなんですね
お猪口、かわいい
こんな感じで遊び心があると
安らぎますよね~
ああ~、お蕎麦屋さん行きた~い
私も一緒に行きたかった!
先に、「ア・ポワン」によってケーキを買い、「坐忘」でお蕎麦を食べ、
「ハヤシラボ」でオーディオを見聞きするのが当座の夢です。
東京に住んでいるのになぜそれが出来ないか?
私にもよくわからない。
それにしてもどれも美味しそうで生唾、ゴックン。
せいろも手挽きもかけも・・・・・。
お蕎麦もすごく美味しそうですね。
お猪口の遊び心も素敵です。
訪れたいとずっと思いつつ、まだ行けたことがなくて。
今年こそは。。
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