1時もとうに過ぎた時分は、他にお客さんもなく、
ゆったりと作られた一枚板のテーブルを、贅沢にも独り占め。



ここに座っただけで、ほおっと寛いでしまうなぁ…



にやっと顔を出して下さったご主人に、改めてご挨拶をして、
入口すぐに掲げられた、「本日のおすすめ」料理にお酒を眺め…



寒風吹く、今日も又寒い。
ぬる燗を、とお願いして、選び暖めて下さったのは「房島屋」。
渋い陶器の徳利に猪口で頂くと、心底ほっとさせられて…



お通しに出して頂いたのは、今が旬「ほうれん草の胡麻和え」。
国産胡麻だけで和えられた一品は、胡麻の風味が一段と濃いっ



さらに、「味噌の燻製あるんだけど」とご主人。
えっ？、み、味噌の燻製…？
と、ちょっと口に含むと、こ、これは美味しいっ

柔らかい味噌の風味の後に、ふわっと広がる香ばしい薫香。
こっ、これはなんて、乙な酒の充て…！



さらに、白板メニユーの「鴨ハム」抜きのミモレットをお願いすると、
それに添えて出してくれたのが、何てうれしいっ、欧州産との「カラスミ」。

国産に比べて、密度の濃いカラスミは、本当にミモレットによく似て、
二つを食べ比べながら、猪口にくれた「七田」がよく合う。

猫談義に、育猫相談もして頂いて、そろそろお蕎麦を頂こう～。



辛味大根に、鰹節、鶉の卵の付く「おろしそば」がお気に入り。
とは言え、毎回こればかり、今日は「かけ」を食べてみよう 。



と、程なく出された、初めて頂くふじ多さんの「かけそば」。



目の前に置かれた瞬間に、ふわ～っと漂う、出汁の香りにうっとり。
濁りない淡い琥珀色に澄みわたった汁に、下に横たえる繊細な蕎麦。



まずは汁をそっと口に含むと、途端に感じるいくつもの出汁の協奏曲。
鰹に昆布、あごの上品な一つ一つの風味が、寄りそうように交わり、
鮮烈な出汁のハーモニーを奏で、体にそのまま染み入ってくる。

ああ、この汁、なんて美味しい…

優しくて柔らかく上品でありながら、旨み濃厚な汁に陶酔し、



中の蕎麦を手繰れば、しっとりと汁を纏った蕎麦が又たまらない。
はらりと解け、蕎麦の風味を感じた途端に、するりと喉元に落ちて行く。



ちょこんと盛られた「笹かま」も質の良さが伺える旨みがあり、
汁まですべて飲みほしたら、もう至福の心地でいっぱい

食べ終えた後まで魅了された心地でうっとりしつつ、
ご馳走様でした～

今日もなかった「米茄子の田楽」、今度こそ…

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