開店早々に、新座鞍馬で修業なさったご主人が開いたお店と知り、
是非訪れたいと思いながら、ほぼ半年あまり。
できればここは誰かと訪れたくて、池袋での朝方の仕事を済ませ、
お友達二人を誘って、今日いよいよ伺う事に…
与野駅西口から、寒々とした雨の中、線路づたいに歩いていくと…
立派な看板に広々とした駐車場を携えた、お店に程なく辿り着く。
与野 「蕎麦 孤丘」
駐車場を横切り、お店の入口へと近づくと、足元に置かれた断り書き。
読んでみると、「お子様はお断り」ではなく、「別室にて」
の心遣いに、ご主人のお心が伝わってくるのを感じつつ…
塀から周り込むと、目の前に広がる、高雅な入口。
ゆったりとした間取りの扉に、すっと下げられた暖簾、
振り返れば、客席から見渡せるのだろう、手入れの行き届いた
緑鮮やかな立派な中庭が、作られていて、
想像以上のお店の景観に、入る前から、期待に胸が膨らんでくる…
おずおずと扉に手をかけ入ると、心地のいいウェイティングスペースがあり、
すぐに、花番さんが顔を出して下さり、店内へ案内される。
…こ、これはっ
なんて広々とした、立派な空間…っ。
高い高い天井に、ゆったりとしたワンフロアには、
贅沢な程、空間を取られて配された、白木のゆったりとしたテーブル席。
天然石が敷かれた床に、通り過ぎる空気は心地よく、
一面大きく取られたガラス窓からは、先程の中庭が目の前に広がる。
もう、ぐるりぐるりと、思わず隅々まで見渡してしまう、
蕎麦屋を超えたこの空間に、思わず溜息…。
あまりに立派な空間に、気後れしそうになりつつも、
まずはビールで乾杯を。
あてにたっぷりの揚げ蕎麦が出され、つまみ食べてみると…
こ、これは美味しい
珍しい、青海苔の風味が香ばしく広がる、軽やかな揚げ蕎麦で、
お聞きすると、「磯切り」を揚げたものだそう。
変わり蕎麦での揚げ蕎麦、これはいいな~。
と、ようやくほっとしたところで、この素敵な空間で楽しむ、
これも楽しみな蕎麦前を…、と品書きを開き、
蕎麦屋のつまみに、天種が書かれたお料理から…いくつか選び注文。
まず出されたのは、蕎麦屋の定番「焼きそば味噌」。
西京味噌で、ふわりと作れられた蕎麦味噌は、口当たりが柔らかい。
それに花豆が添えられた「蕎麦豆腐」。
しっとりとして香ばしい風味の濃い美味しい豆腐で…
早速お酒をと、地元埼玉のお酒「花陽浴」(はなあび)を。
織部に似た、味わいある陶器の片口に猪口が出され、
口にするお酒は、すっきりとして柔らかい美味しいお酒。
このお酒に、「山葵の醤油漬け」が添えて出されるのもうれしく、
スライスされ浸された山葵は風味よく、これだけで飲めてしまいそう。
と頂いていると出される、揚げたての「牛蒡の天麩羅」。
ざっくり切られた牛蒡は、食べてみるとふっくらと柔らかく、
噛みしめるとじわ~り牛蒡の味わいが口に広がる。
さっくりと揚げられた衣も軽やかで、天麩羅のレベルの高さも伺える。
…と、さらにいくつかのお酒をお変わりし、
いよいよ、肝心のお蕎麦を頂こうと、改めて品書きを。
いくつかの種ものの蕎麦が並ぶが、単品の蕎麦には「もり」しかないが、
「蕎麦三昧」に書かれている「粗挽き」に「玄挽き」は是非とも食べたい。
単品で頼めないのかお聞きするも、数がないので出来ないとの事なので…、
ほぼ全部食べられる、この「蕎麦三昧」を3人で頂こうと、
二種類両方をお願いする事に。
程なく、まず出されたのは、これも食べたかった「そばがき」。
掻きぱなしの蕎麦がきは、山葵がちょんっと乗り、蕎麦湯に浸し出され、
添えて出されるのは、蕎麦の実の入った粗塩。
蕎麦の欠片が点々の混ざっって見える蕎麦がきには、
さらに、透明や薄茶の粗い蕎麦の粒々がぎっしりと混ざる。
取り分け食べようとすると、途端に鼻孔に昇る温もりある蕎麦の香り。
思わずうっとりしながら口に含むと、とろ~りふわっと柔らかく、
舌先をくすぐる蕎麦粒の心地のいい感触。
じわじわと香ばしくも甘みを含んだ風味が口いっぱいに広がり、
これは美味しい…
と、残りのお酒をこの蕎麦がきで楽しんで…、
蕎麦が来る前に、改めて蕎麦についての文字に目を馳せていると、
まずは、「更科」から変えて出される「青海苔切り」。
端正に切り揃った、透けて見えるような蕎麦の中に、
ぎっしりと混ざり込んだ、繊細な青海苔。
手繰り上げると、ふわりと香ばしい磯の香りがよぎり、
ぷるんっとした何とも心地のいい弾力ある歯ごたえ。
噛みしめると、この磯の香ばしさが弾けるように口に広がる。
頃合いもよく、続いて出されるのが、定番の「もりそば」。
茨城筑西の常陸秋そば、十割で打たれた蕎麦は、端正な細切り。
角がきりっと立った、凛々しい蕎麦は、手繰り上げるまもなく、
鼻孔に昇る、濃厚な香ばしい蕎麦の香り。
口に含むと、しっとりとした腰が歯を包み、
噛みしめると、じわ~っと豊かに広がる、ふくよかな蕎麦の味わい。
するりと落ちる喉越しもよく、その後で、再びふっと帰ってくる香ばしい風味。
この味わい、これはたまらない…
余韻に浸っている間もなく、続いて出される「粗挽きそば」。
もり蕎麦に、手挽した粗挽きの粉を混ぜ、十割で打たれたとの蕎麦は、
びしっと立った凛々しい切り口。
その表面には、様々な色合いの蕎麦粒がびっしり埋め込まれ、
野趣さ長け、勢いさえも感じられるよう。
手繰り上げれば、これも豊かな香りを放ち、
もちもちっとした歯ごたえに、ざらりとかすめていく蕎麦の欠片。
この感触に、じわじわ広がる味わいに、もうすっかり虜になってしまう。
う~ん、これは美味し~い
いつまでも食べていたいような心地になりながらも、3人で食べたらあっと言う間。
そして、最後にこれも楽しみにしていた「かけそば」。
まずは、薬味の葱に揚げ玉、さらに京都の黒七味が置かれ、
続いて、すっきりとした白磁の丼が置かれる。
見る汁は、横たわる蕎麦が透けて見える、美しい琥珀色。
そっとれんげですくい口に含むと、ああ、なんて美味しい…
なんの抵抗もなく、そのまま体に同化していくのではないかと思うほど、
柔らかくすっきりとした、出汁が見事に調和した旨み。
その中の蕎麦は、熱い汁に浸り、ほろりとした腰がたまらない。
暖められた事でふっとにわか香り立ち、汁にからまり香ばしさが追いかける。
このかけそば、これは絶品…
さらに、取り分けて、揚げ玉を乗せて口に含めば、
さっくさくの揚げ玉が風味を醸し、これも絶妙。
すっかり魅了され、汁もすべて頂いて…
最後に、ほどよく白濁した滑らかな蕎麦湯を注ぎ入れ、
一連の蕎麦の余韻に、ゆったりと浸る至福のひと時
…と、そろそろ3時もすぎようとする時間、他にお客さんも帰られて、
そっと顔を出して下さった、まだお若いご主人。
蕎麦の事などお話しする中、もしよかったらご覧になりますか?
と、「離れ」の個室の部屋を見せて下さると、店内を出て廊下に出ると…
この回廊さえ、歩くのが嬉しくなるような、神秘的な気品漂う空間。
その先に、孤立された白い土壁の小さな建物が二棟あり、
見せて頂いた二つの部屋は、それぞれ雰囲気が違う、これも素敵な空間。
ほっこりと親しい方々だけで楽しんだり、
あるいは、お子様がいらっしゃるお客さんに、お互い気を使わずに、
楽しんで頂きたいと、造られたそう。
ゆくゆくは、結婚式なども、ここでやれるような、そんなお店へと…
と壮大な計画や意力あるお話しをお聞きし、心底感心してしまう。
蕎麦屋の可能性は、無限だ…、と思っていると、さらに、
完成したばかりとの、茶室にも案内して下さり、
これも、完璧に作られた茶室(非公開)に、もう心底圧倒されっぱなし。
駅からも近く、車での便もよく駐車場も完備。
独りでも、二人でも、記念日にも、すべてのシチュエーションで…
そのお心に、すっかり聞き惚れてしまってる。
あの蕎麦の味わいだけでも、感動していただけに、
なんてすごいお店なんだろう…と、くらくらしている私に、
「今度は是非、蕎麦懐石も頂きに来てみて下さい」
と、笑うと少年の面差しを残す、ご主人の言葉がうれしい。
なんて、充実したひと時だったろう、3人すっかり感心しつつお店を後に。
ご馳走様でした~
お店の雰囲気に、丁寧な応対、そして極上の蕎麦の味わい。
すごいお店が出来たなあ、ぼおっとした心地の中、
是非、夜の景観をも見てみたいし、玄挽きも食べてみたい…
と、すっかり心は次に来る日に馳せながら…
「蕎麦 孤丘」
埼玉県さいたま市浦和区上木崎1-11-10
048-762-3167
11:30~15:00 / 18:00~21:00
11:30~18:00(日曜祝日)
月曜定休
禁煙、Pありお店のHP
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ごめんなさいっm(__)m 消去お願いします。
因みに…au 以前一度伺って…
また行きますっ(^-^)
ここは、是非いってみて下さい。
ちなみに、こちらに行かれ、世界観が変わったという感想、ものすご~く分かります…。
(私も、「蕎麦屋」の概念が変わりそうになってしまいました)
謎のお休みっ(>_<)
なので与野の「蕎麦 孤丘」に…
世界観 変わりました。
駐車場も完備しているのもよし、
駅から近いのもうれしく…
是非、今度は、あの空間で頂く、蕎麦前も楽しんでみて下さい(^^)。
天井の高い窓の大きい明るい空間で蕎麦三昧をいただきました。出張じゃなきゃお酒もいただきたかったです。日を改めてです。
紹介、ありがとうございました。
素敵な、いや素敵過ぎる程のお店ですね…。
独りで、ぼんやり蕎麦屋酒というムードではちょっとないけれど、この蕎麦はよかったです。
又、機会見て訪れたいと思っています。
ここ本当に素敵で蕎麦もいいですね。
私もなかなか訪れる機会がないのですが、是非再訪したい蕎麦屋さんです。
私は、HPが立派だったので、誰かと行きたいなあ、などと思っていて…。
改装というのは、茶室を作られていたようです。
丁度完成したばかりに訪れたので、拝見させてもらって、もう溜息もの…。
母がお茶をやっているので(あ、私も少々^^;)、とても興味深かったです。
それは別にして・・・
もりそば(小)200g 380円 手打ち・本わさび付きのお店
これも魅力的ですね~~♪
建物に内装に…
が、蕎麦、素晴らしい。私の好みの蕎麦で、又食べたい…。
ご一緒したいな…(^^)?
「そばもん」なかなかいいですよ♪
江戸文化の蕎麦というものも、勉強できるように思います(^^)。
さすが…。(聞いてませんでしたよーん)。
そう、立派すぎて気後れしちゃいそうでしたが、蕎麦もお料理も素晴らしい。
コースも食べてみたいです。
車でランチだったので お酒なしだったのですが 穴子のてんぷらと蕎麦三昧(*^_^*
「改装」するってなっていて まだ新しいのにすごいな~って へんな感心しながら
その後、本に載ってましたので 混んでいるかな~と
伺っていませんが、
次の日に
もりそば(小)200g 380円 手打ち・本わさび付きのお店を友だちに誘われて
あの贅沢な空間を思い浮かべていました(笑)
意気込みが伝わってきます。
与野はゴルフで通るので、寄って
みます。
わかりました♪もし良いお蕎麦屋さんがあったら紹介しますね。自分は倉敷に住んでいるんですが、観光地だったらやっぱり倉敷美観地区が有名なようです。自転車で走っていると観光してる方、よく見かけます。
やっぱり!「そばもん」面白いんですね。前、聞こうかどうか迷ってました(笑)。お寿司もそうですが、お蕎麦も、本・漫画も多いですね♪
つまみも蕎麦も確かにうまい!!
私にはちょっと敷居が高いが・・・今度はのんびりコースを食べてみたい。
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