無念な訪問をしてから、又改めて伺いたい、とずっと思っていたお店。
昨日は、のびのびになっていたお約束も叶い、近くにお住まいとの素敵な御方にお付き合いしてもらって、やっとやっと訪れることが・・・
大森駅から降りた、静まった住宅街の中。
ふっとさりげなく佇む、趣きある落ち着いた佇まい。
ああ、ここだ・・・、この風情
大森 「手打そば 布恒更科」
釜上げを聞いていながら、お蕎麦を食べられなかったあの出来事が鮮やかに脳裏に蘇りながら、暖簾の奥の扉を開く。
休日の昼下がり、しっとりとした空気の中、満席近く人々が憩っている。
我々も空いていた奥のテーブル席に腰を落ち着けると、改めてこのお店の雰囲気の良さをしみじみと感じてくるよう。
その中で今日も又、真っ白の割烹に身を包んだ女将さんの姿が見え、途端に懐かしくなってしまう。
外は冷たい空気で寒かったけど、やっぱりちょっと喉を潤わせたく、まずは蕎麦ビールで乾杯~
それに添えて出されたのは、ほっこり味の染み入ったかぼちゃの煮物。
小瓶のビールはすぐ空き、蕎麦前を頂こうと、中からすっきりと〆張鶴純米吟醸を。
それに合わせてお料理も。
選んだ「炙り小柱」が終わってしまったとのことで、お薦めされた「抜きおろし」。
蓋付の器で出され、開いてみると・・・
柔らかく炊かれた蕎麦の実と大根おろしに三つ葉、ぷりぷりの浅利の身が和えられている。
プルンプルンとした蕎麦の実の楽しい歯ごたえに香ばしさ、それに合わさった大根おろしがさっぱりとして、これは美味しい。
それに、「ここのはちょっと他にない位、美味しいよ♪」
との事で頼んだ「煮穴子」。
どっしり大きなお皿に立派に横たわった穴子が見事。
箸を入れると、崩れてしまくらの柔らかさ。ほっこりとしてふわりとした身は、口に入れると溶けてしまうもので、かけられた甘辛のタレが又旨い。
臭みもまったくない、上品な穴子の味わいに感動してしまう 。
そして、こちらに来たらやっぱり頼みたい天ぷらは、季節の天種から「百合根」を選んで。
温かい天つゆを添えて出された天ぷらは、繊細な衣を纏ったさっくさくの美しい掻き揚げ。
カラリっとしてほっこりとした百合根は甘みがあり、この衣の香ばしさがたまらない。
さすが、布恒さん!と思わせる絶品の天ぷらに大満足
これらのお料理に、お酒もお変わりをして、次は熱燗を。
「蕎麦屋の酒」府中誉をお願いする。
しばし、ゆっくりと味わいながら寛ぐ楽しいひと時・・・。
と、そろそろ「釜揚げしますので・・・」のお声が掛けられ、今日はちゃんっと頼まなくちゃ、と品書きに改めて目を落とす。
来る道中は、生粉打ちを是非頂こう~と思っていたのだが、季節のおそばに気になる文字。
「鴨ひき肉とごぼう汁」
これは珍しい・・・、季節限定となったら是非とも頂きたい、とこれをお願いすることに。
御仁は散々悩んだ挙句に、「鴨汁」を。
程なくしてまずは、目の前に「鴨ひき肉ごぼう汁」と「鴨汁」の二つの漬け汁が出される。
交換しながらちょっと頂いた「鴨汁」の、鴨の風味の濃さにびっくり。
これだけ濃い鴨の味わいのある汁は初めてかも・・・と思う程、じっくりと染み込んだ鴨汁。
一方、「鴨ひき肉ごぼう汁」は、それに牛蒡の風味が濃く交わったもの。
味の違いがしっかりと感じられる二種類の汁。
そして、暖めたもりそばと冷たいもりそばも並んで出される。
おおっ、蒸篭の上から湯気が立ってる~♪
と、揃ったところで、まずはお蕎麦から。
手繰り上げると、強くはないがふわりと香る蕎麦の香り。
二八の盛り蕎麦は、角のきりりと立った江戸前よりはやや太めの細切り。
口に含むと、ぐっと押し寄せるような弾力のある腰があり、噛み締めると柔らかな蕎麦の風味に甘みが広がってくる。
力強くぴんっと伸び、凛とした蕎麦は喉越しもよく、流石に美味しい。
もう念願のお蕎麦が頂けたことがうれしく、感無量~。
そして、この「鴨ひき肉ごぼう汁」に箸を入れると、たっぷりの挽肉に牛蒡もたっぷり。
それにこの蕎麦を漬け頂くと、しっかりとした味わいの汁が絡まり、蕎麦に甘みが増すかのよう。
旨味たっぷりの挽肉に絡まりながら頂く蕎麦は絶妙で、たっぷりの量の蕎麦(280グラム!)にも係わらず、するすると頂いてしまう。
最後に、優しく白濁した蕎麦湯を注ぎいれ頂くと、さすがにお腹いっぱ~い 。
心から満足な心地に浸るひと時・・・
いつしかお客さんも帰られ、我々だけになったしんと落ち着き払った中、女将さんとお話していると・・・、
なんと、あの、あの時の事を覚えていて下さったそう
「あれからとても気になっていたんですよ・・・。あそこの席に座っていたんですよね。よかったです。やっとうちの蕎麦を頂いてもらえて・・・」
とあったか~い笑顔でおっしゃって下さる。
な、なんて、うれしいんだろう・・・。
ずっと女将さんまで忘れずにいて下さった、そのお気持ちにもう心がいっぱい
やはり、ここは素晴らしい。
お店の風情、流れる空気、そしてそれらはすべてこの女将さんが発しているのだろう、としみじみと感じ入る。
ご馳走さまでした~
又、是非寄らせて頂きます、としかと頭を下げお店を後に。
なんて、素敵なひと時。
心温まる気持ちのまま駅まで。
来て、来れて、本当によかった。
これで心置きなく、年を越せるなぁ、などと思いながら・・・
L様、お付き合い下さり、本当に・・・ありがとうございました~
*お品書き
もり 880円、生粉打ち、荒挽き 1,100円、おろし 1,180円、とろろ 1,560円、納豆 1,250円、ごぼう天 1,380円、かき揚げ天もり 1,780円など、かけ 880円、花まき、月見、玉子とじ 1,100円、かしわ南蛮、カレー南蛮 1,260円、どんこそば、深川そば 1,550円、あられ 2,030円、鴨挽肉とごぼう汁 1,380円、鴨汁 2,150円など
各種天だね(多し) 850円~、そばがき 1,620円、蕎麦味噌 160ん、お新香 420円、豆腐の味噌漬け 530円、抜きおろし、焼きとろろ、焼きのり、湯豆腐、冷奴 750円、揚げあんかけ 850円、空板わさ、玉子焼き 950円、親子煮 1,260円、煮穴子 1,480円など多し
地酒各種 650円~
「布恒更科」
品川区南大井3-18-8
03-3761-7373
11:30~15:00 / 17:00~20:00祝日(昼のみ)
日曜休 禁煙
年始は1月6日から
前回の訪問
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本当にありがとうございました。
そ、そうでした!そこも又リベンジしなくちゃ、です!
ああ、蕎麦屋だな~としっとりと思えるあの雰囲気。
残して置きたい江戸の風情を感じます。
又その中に溶け込んだ女将さんの割烹姿がたまらないです。
穴子よかったですよ~(^^)。
布恒さん独特のこってりとして深みがあるタレも又♪。
どれもこれも、大満足でした。
お燗番の前に立つ女将さんが、また何とも素敵で・・・
穴子は凄いですね、まさに江戸前の姿、タレがあああ。
ゆり根の掻き揚げがあったとは、いい時間を過せましたね♪
そういう出来事があったんです(^^;
でも、凄いですよね。
覚えていてくれたなんて・・・と、本当に感激しちゃいました。
年越し蕎麦、
私はどうしようかしらん~・・・
ちゃんと見直しましたが、大丈夫(^^)。今回はこの通りでした。
煮穴子、これはいいですね!絶品でした。ほんとにうっとりするほど美味しい穴子で。
百合根は大好きで、自分でも買ったりするのですが、こちらの天ぷらはやはり違う。
もうどれもが美味しい一品で、心から満足したひとときでした。
心の中で、ハリーさんに
「行きました~」と、報告してました(^^)。
しかし、二年前のことを覚えてるなんて
凄いですね
鴨蒸篭でいいから食べたくなってしまった
今年は実家で年越しに
蕎麦打ちまではしませんが
鴨南蛮でも年越し蕎麦にしようかと
思ってます
百合根のてんぷらは未経験。美味そうですね。ちゃんと調理した百合根は、上等のお芋のような口当たりがすることを、関西人のわたくしめは、子供の頃からよく知っています。いい酒盛りになったようで、結構でした。
一面前のまつや吉祥寺に書き込みをしていて、その次が他ならぬ布恒の、それも南大井の本店。別に用事も話題もありませんが、ここは無視して素通りもできず、ちょいと落書きさせていただきました。お邪魔さまです。
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